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公共交通機関で役場に行けない町 [たびの空]

コロナ前の2019年春以来、5年ぶりのフル開催となった「ながらの春 室内楽の和 音楽祭2024」先程無事に最終公演が終わり、恙なく幕を閉じましたです。

音楽祭というものは、ホントに規模は様々で、この千葉県長生郡長柄町で開催されている室内楽の音楽祭は期間にして10日間、イベントの数としてはゴルフ場クラブハウスでのサロンコンサート2公演と、町立キャンプ場施設での3日間のセミナー、それに町の教育委員会の協力を得た町民無料招待ファイナルコンサートの総計4つ、動員人数は…多分、総計で250人くらいかしら。桁数間違えてるんじゃなくて、ホントにこの数字です。事業規模にして恐らくは100万円ちょっとくらい、まあ、町のお寺のお祭りよりも小規模かもしれないですな。同時期に東京は上野の杜で開催されていた「東京春音楽祭」やら、玄界灘を越えた福岡麻生帝国の対岸は統営で開催されていた「統営国際音楽祭」なんぞに比べるべくもない、ホントに小規模な田舎の祭りでありまする。

とはいえ、祭りは祭り。小さいなりに盛りあがりを見せ、参加した人々にはそれなりに意味のあるものになったならOKでありましょうぞ。

そんな小さな祭りのフィナーレが開催されたのが、長柄町町役場に隣接し昨年竣工したばかりの「ながランホール」でありました。
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知る人ぞ知る悪名高い袖ケ浦ナンバーやらサッカーチームジェフ市原、はたまた菜の花や桜咲き乱れる頃には日本中の撮り鉄が押しかける小湊鐵道などで有名な東京湾に面した市原市と、千葉の山の中では最も人も多く外房線の要所でもある茂原の間に挟まれた内陸部、人口7000人弱の長柄町は、東京駅から直線距離にすれば50㎞ほど、西に向けば八王子くらいの場所なんだけど、まるで首都圏のエアポケットみたいなごっつい田舎であります。昨今の市町村合併の流れからすれば、当然、茂原市に吸収合併されてしまって当たり前なんでしょうけど、どーゆーわけかそれは拒否して「町」として生き残ってしまっている。

で、クァルテット・エクセルシオのチェロを務める大友氏が、今を去ること20年前、クァルテットで喰っていくために妻&子ども3人とどうやって生きていくかを考え、一念発起し東京は多摩川の遙か西の奥、多摩センター近辺を離れて遙か千葉の山の奥は長柄町に転居。距離としては東京駅からならほぼ同じく50キロくらいだけど、環境はまるで異なるとてつもない田舎に引っ越したわけですね。この地で田圃の中に奥さんが音楽院を始め、子どもらは近くの小学校中学校に通うようになる。時移り、一番下のお嬢さんも当地で誕生し御家族6人となり、音楽院もなんのかんのでそれなりに地域で知られるようになった。で、いつのまにやらクァルテット・エクセルシオもNPOとして許認可を受けている拠点は東京都だけど、首都圏でレジデント・アーティストとしてアウトリーチやら地域活動の拠点としているのも晴海辺りから浦安に移り、なんだか「千葉の団体」という感じすらし始めている。

ま、これがクァルテットで生きる、ということなんだろーなー。

ってなわけで、せっかく長柄町に出来た公共ホールであります。ここを使わん手はない。とはいえ、この会場、なんと有料入場者を集めるイベントには貸してくれないそうなんですわ。だから、というわけでもないけど、本日は町民に招待状を配り、無料招待する、という形を採ったわけでありまする。
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ま、ご覧のように、図書館部分の手前から集会室のようなホールに入る、って小さな町あるあるの造りですね。そこに、100名近くの聴衆が集まった。これって、全町民の1%以上、ということではありませんかっ!これって、多摩市だったらパルテノン多摩の大ホールにガッツリほぼいっぱい客が入った、ってくらいでありますぞっ!

実質上の「お招きアウトリーチ」みたいなプログラムの演奏会ながら、後半は《アメリカ》全曲弾いて、最後の楽章では後ろの方の席に座った女の子、汽車シュッポシュッポのノリノリで体を揺すっておりましたわい。終演後、副町長さんからお花を贈呈されたりして。
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ステージの上にあがってくれればいいのに、なんだか千葉っぽく奥床しいなぁ。

というわけで目出度し目出度し、なんだけど…このながランホールの最大の問題は、公共交通機関が一切存在しない、という点にありまする。

去る3月のダイヤ改正で小湊バスさんの茂原駅から町役場前を通る路線バスが廃止され
https://www.town.nagara.chiba.jp/soshiki/2/13132.html
陸の孤島になりましたです。驚くなかれ、ながランホールがオープンする直前に、町役場などに来るコミュニティバスも廃止されてしまってます。
https://www.town.chonan.chiba.jp/osirase/34388/
ま、そもそも町内バスがあったとしても、最寄りのJR駅は外房線茂原にしても内房線五井にしても、はたまた小湊鐵道さんにしても、町内に駅がありませんから、町営バスが鉄道駅まで繋がることはあり得ないわけですし…。

いやぁ、温泉県盆地に拠点を移してから、九重高原とか豊後竹田市の奥とか、公共交通機関が全く無い会場でコンサートが行われる事実を前に、ちょっとショックを受けていたんだけど、なんとまあ首都圏は東京駅から車で1時間半かからないくらいの場所で、このようなことが起きるとはなぁ。

ちなみに今回、やくぺん先生が新帝都大川端縦長屋からながランホールまで赴いた道程は、「JR京葉線越中島駅→蘇我乗換え外房線茂原駅→小湊バスロングウッドステーション行き鼠坂バス停下車→コンビニ駐車場に町外からの関係者が集合し音楽祭スタッフが車でピックアップ→ながランホール→音楽祭スタッフにより茂原駅まで送っていただく→茂原駅から外房線京葉線で新帝都へ」でありました。鼠坂バス停からホールまでは、Googleマップさんに拠れば延々と水が入り始めた田圃の中をダラダラと50分ちょっと歩け、だそーな。

長柄をゼーリゲンシュタットにしたい、という野望、果たしてどうなるやら。距離的には成田羽田からながランホールまでの距離って、フランクフルト空港からゼーリゲンシュタットの修道院までと殆ど違わないんだわなぁ。頭の上を空港アプローチのひこーきたちが降りていくのも同じ出しさ。

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