訃報:パイオニアSeiji Ozawa [演奏家]
先週、シンガポールのヨン・シュ・トウ音楽院ホール客席で、たまたま小澤征爾氏が話題になった。話し相手は、マレー連邦から切り捨てられるように独立させれる前、黎明期からのシンガポール音楽界をほぼひとりで支えたヴァイオリニスト兼プロデューサーの娘さん。無論、わしらと同じくらいのいいお歳のおばーちゃんなわけで、当然ながら爺婆夫妻との昔話になる。お嫁ちゃまが「この人、SeijiがNHKとシンガポールに来たときの資料を探しに、国立図書館に通ったことがあるんです。ええ、ストレーツ・タイムズしかないですけど(笑)…」って話を振ると、あの演奏会をこちら側で仕切っていたのが父でしてね、って。あの頃は日本側の記事ではどれもこれも「クアラルンプールは英国風の都会だが、シンガポールは暑いばかりで酷いところだ」という愚痴ばかりでしたよ、40度くらいの体育館みたいなところでの演奏会で…どうこうどうこう。
でもね、あの演奏会が、シンガポールでアジア人がやる最初のオーケストラだった。それからずーっと、あの時の若い日本人指揮者がドンドン偉くなって、シンガポールには全然来なくて…
ゆふいん音楽祭元実行委員長の加藤氏から聞いた話。
まだこの盆地に辿り着く前、若い画家の加藤氏がパリでフラフラしていたとき、小澤征爾という若い日本の指揮者が初めてパリのオーケストラを指揮することになった。出かけた加藤氏は、オーケストラ団員の何人かが演奏を拒否して下りた、という話を聞かされたという。指揮者氏がどういう反応をしたのかは、若いニッポン人のヒッピーなんぞの知るところではない。
あまり知られていない事実かもしれないけど、この春節明けで51回目を迎える香港芸術節の第1回、開幕いちばん最初のオーケストラコンサートは、小澤征爾が指揮する結成されたばかりの新日本フィルだった。小澤氏が日本フィル組合メンバーの裁判路線に乗らず、無理をしても「日本の自分のオーケストラ」を作る必要があったのは、新たに誕生したフェスティバルの開幕を「世界的に最も著名な中国出身のアジア人指揮者」が勤める必要があったからなんじゃないかと思っている。何の証言もない勝手な憶測なんだけど。
無論、まだご健在な当時の老ディレクター女史を含め、誰もホントのことなんて言わないだろうけどさ。
夕方過ぎに訃報に接したときから、萩さんが作った「北京にブラームスが流れた日」の最後で鳴っていたブラームス第2交響曲終楽章、あれをずーっともう一度、ちゃんと聴いてみたいとばかり思っている。
海賊盤だか正規盤だか判らないけどレコードがあるとは昔から聞いていて、北京や上海にレコード屋があった頃は、まさかと思っていつも探していたのだけど、とうとう一度も出会ったことはない。どういうわけか、ブラームスの2番というと、小さなテレビの画面から流れたあのアヤシげな録音のあの演奏しか頭に浮かんでこない。映像を収録していたのは、実相寺さんだったんだろうなぁ。
恐らく、あのオーケストラでは、イーウェン・ジャンのお母さんなんかも弾いているんじゃないかしら。あの北京のブラームスと、アイザック・スターンの上海でのマスタークラスで、中国の蓋が開いた。そして、上海Qやらが世界に出てくることになる。そこから先は…
「歴史的にスゴイことをしたパイオニア」とは、普通に歩いているだけであちこちでその人の影が見えてしまう人。この人がいなかったら、今の東アジアの音楽の世界は全く違うものになっていただろう。そういう人が、本来の職たる音楽家としていちばん力がある頃に、お嫁ちゃまと一緒にそれなりの時間を共にできたんだから…ホントに幸運としか言いようがない。
ありがとう御座いました。
日が変われば、東アジア世界での新しい年の始まり。そして、オザワと袂を分かった団員達を放送労連らが支援することで始まった九州ツアーも、明日開幕。マエストロ下野のツアーに同行するのは、カーネギーでサイトウキネン管のポディウムを小澤氏と分けるのを眺めて以来、かな。
2月11日付けで、日本フィルからこのようなリリースが出ました。PDFで貼り付けます。
【訃報 小澤征爾氏】 _ 日本フィルハーモニー交響楽団.pdf
実質半世紀、ニッポンのオーケストラ界という狭い狭い場所とはいえ、ひとつの時代が終わった感がありますね。無論、今やオーケストラ事務局にも団員にも、現場での「わだかまり」を抱えている人なんてひとりもいなかったとはいえ。
『炎の第5楽章』って、品切れなんだ…
https://japanphil.or.jp/node/23780
でもね、あの演奏会が、シンガポールでアジア人がやる最初のオーケストラだった。それからずーっと、あの時の若い日本人指揮者がドンドン偉くなって、シンガポールには全然来なくて…
※※
ゆふいん音楽祭元実行委員長の加藤氏から聞いた話。
まだこの盆地に辿り着く前、若い画家の加藤氏がパリでフラフラしていたとき、小澤征爾という若い日本の指揮者が初めてパリのオーケストラを指揮することになった。出かけた加藤氏は、オーケストラ団員の何人かが演奏を拒否して下りた、という話を聞かされたという。指揮者氏がどういう反応をしたのかは、若いニッポン人のヒッピーなんぞの知るところではない。
※※
あまり知られていない事実かもしれないけど、この春節明けで51回目を迎える香港芸術節の第1回、開幕いちばん最初のオーケストラコンサートは、小澤征爾が指揮する結成されたばかりの新日本フィルだった。小澤氏が日本フィル組合メンバーの裁判路線に乗らず、無理をしても「日本の自分のオーケストラ」を作る必要があったのは、新たに誕生したフェスティバルの開幕を「世界的に最も著名な中国出身のアジア人指揮者」が勤める必要があったからなんじゃないかと思っている。何の証言もない勝手な憶測なんだけど。
無論、まだご健在な当時の老ディレクター女史を含め、誰もホントのことなんて言わないだろうけどさ。
※※
夕方過ぎに訃報に接したときから、萩さんが作った「北京にブラームスが流れた日」の最後で鳴っていたブラームス第2交響曲終楽章、あれをずーっともう一度、ちゃんと聴いてみたいとばかり思っている。
海賊盤だか正規盤だか判らないけどレコードがあるとは昔から聞いていて、北京や上海にレコード屋があった頃は、まさかと思っていつも探していたのだけど、とうとう一度も出会ったことはない。どういうわけか、ブラームスの2番というと、小さなテレビの画面から流れたあのアヤシげな録音のあの演奏しか頭に浮かんでこない。映像を収録していたのは、実相寺さんだったんだろうなぁ。
恐らく、あのオーケストラでは、イーウェン・ジャンのお母さんなんかも弾いているんじゃないかしら。あの北京のブラームスと、アイザック・スターンの上海でのマスタークラスで、中国の蓋が開いた。そして、上海Qやらが世界に出てくることになる。そこから先は…
※※
「歴史的にスゴイことをしたパイオニア」とは、普通に歩いているだけであちこちでその人の影が見えてしまう人。この人がいなかったら、今の東アジアの音楽の世界は全く違うものになっていただろう。そういう人が、本来の職たる音楽家としていちばん力がある頃に、お嫁ちゃまと一緒にそれなりの時間を共にできたんだから…ホントに幸運としか言いようがない。
ありがとう御座いました。
日が変われば、東アジア世界での新しい年の始まり。そして、オザワと袂を分かった団員達を放送労連らが支援することで始まった九州ツアーも、明日開幕。マエストロ下野のツアーに同行するのは、カーネギーでサイトウキネン管のポディウムを小澤氏と分けるのを眺めて以来、かな。
[追記]
2月11日付けで、日本フィルからこのようなリリースが出ました。PDFで貼り付けます。
【訃報 小澤征爾氏】 _ 日本フィルハーモニー交響楽団.pdf
実質半世紀、ニッポンのオーケストラ界という狭い狭い場所とはいえ、ひとつの時代が終わった感がありますね。無論、今やオーケストラ事務局にも団員にも、現場での「わだかまり」を抱えている人なんてひとりもいなかったとはいえ。
『炎の第5楽章』って、品切れなんだ…
https://japanphil.or.jp/node/23780
。°(´•ω•̥`)°。.....
http://www.npr.org/sections/deceptivecadence/2024/02/09/329884586/seiji-ozawa-conductor-boston-symphony-orchestra-dies-age-88
Obituaries
Seiji Ozawa, longtime conductor of the Boston Symphony Orchestra, has died at 88
February 9, 2024 7:46 AM ET
By Andrea Shea, Tom Huizenga
by サンフランシスコ人 (2024-02-13 04:11)
オザワと袂を分かった団員達
ちがうよ、小沢が出ていったんだ。裏切って
by させさん (2024-02-25 17:32)
小澤征爾....サンフランシスコ交響楽団....
http://www.sfsymphony.org/Discover-the-Music/Articles-Interviews/Articles/2024-03-SEIJI-OZAWA
REMEMBERING SEIJI OZAWA
1935–2024
今日まで気づきませんでした....
by サンフランシスコ人 (2024-03-15 03:52)
今日、サンフランシスコのクラシックの雑誌に、小澤征爾の録音についての記事が出ました.....
http://www.sfcv.org/articles/feature/essential-seiji-ozawa
The Essential Seiji Ozawa
Jeff Rosenfeld on March 25, 2024.
by サンフランシスコ人 (2024-03-26 06:27)