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誰もやらならないのはわけがある [売文稼業]

パリの朝です。これから英都に向かいます。

超せわしいので、ネタひとつのみ。昨日、シャトレ座のプロダクション、「妖精」を見物してきました。しっかり4時間、レコード3枚分あります。長さだけは「ラインの黄金」より長いぞ。で、ああああ、世の中、やられないものにはわけがあるのだなぁ、とつくづく思ったです。おお、パリの日曜の午後、目の前にはセーヌが流れ、客席には地下鉄の音響が無慈悲に響く。嗚呼!
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パリとかロンドンは、ネットに日本語で感想を挙げているぺらきち(死語!)がいくらでもいらっしゃいますから、ミンコフスキ、妖精、でググってみて下さいな。ともかく、悪口を言い出せばキリがない。ドラマツルギーが地上と妖精の国に分裂していて真っ直ぐ動かない、あまりにいろいろな要素が突っ込まれすぎてポイントが絞れていない(「魔笛」から「タンホイザー」まで、どっかで聴いたような、聴くことになる、音楽ばかりです)、学者先生が一生懸命分析するほどライトモチーフ書法の萌芽など判らぬ、ソプラノばかりうじゃうじゃ出て来て低い女声がまるで働かない(逆「パレストリーナ」状態)、等々。唯一良い点は、台本のドイツ語が後のヴァーグナーほど不必要に凝っていないこと。だからといって、聞き取りやすいわけじゃないけどさ。

プロダクションは、今時珍しい、所謂「読み替え」一切なし。無論、今時のプロダクションは背景などつくれないから、でっかい装置と照明やらで処理してます。演出家さんの手腕を含め、まるで新国立劇場か二期会を眺めているみたいでした。つまるところ、「ミンコフスキというこのくらいの時代の作品のスターが曲をやってみたいけど、演奏会形式では眠くなっちゃうこと必至なんで、それなりに一生懸命ステージを付けました」ってもんですな。終演後、万雷の拍手に応えたミンコフスキ氏、たかだかとスコアを掲げておりました。正直、あたしゃあのアクションの瞬間、ブーとまでは言わぬものの、拍手を止めましたけどね。おおおおお。何も判らぬお上りさん写真。妖精たちは宝塚みたいに背中に羽をひらひらしちゃってさ…
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ま、もうこれでこの作品は良い、としっかり思うための時間でありました。皆々様、ご苦労様です。これだけの才能と、時間と、予算があれば、立派な「オランダ人」だって「タンホイザー」だって出来るだろうし、マルシュナーの「吸血鬼」だとか、ヴェーバー=マーラーの「三人のピント」だとか、E.T.A.ホフマンの「ウンディーネ」とか、やれるもんがあるだろーに…なんて思いませんよ。はい。

音楽は、今をときめくスター、ミンコフスキがオリジナル楽器(チェロ・セクションはエンドピンがあったりなかったり)で丁寧に、でもざっくりとパワー炸裂、って造り。2幕のオッフェンバックもどきのコミックリリーフ分部が、棒振りさんとオケの面目躍如で、一番面白かったです。乱暴に言えば、古楽アプローチとはいえ先頃のブリュッヘン御大NJPにはなかった要素ばかりを集めた、って代物。あのハイドンに燃えるパワーが欲しいと物足りなかった方々は、秋の来日が期待できますよ。うん。

って、オペラシティのKさんのために宣伝しといて、さて出かけねば。ここでアリアのひとつも口ずさめれば、と思うのだが、4時間聴いて音楽は序曲に出て来た素材意外なーんににも覚えていないアホでありましたとさ。ちゃんちゃん。

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