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祝パヴェル・ハースQBBCMusic新人賞! [弦楽四重奏]

ご町内選挙状態も一息、7月の参院選までちょっとだけ静かな田舎町佃から、そっちとは別の受賞のお祝い。

20世紀の終わり頃に突如出現し、あれよあれよという間に世界で一番読まれている音楽雑誌になってしまった「BBCMusic」という紙媒体があります。文字通り、BBCがそのノウハウとデータと自分で持ってる音源をジャブジャブと投げ込んで造り上げた、まあ、英語圏の「音楽の友」みたいなもんです。
音楽雑誌って、演奏や楽器に特化した「ストラッド」やら「アマデウス」やら、オペラに特化した「オペラニュース」やら、録音に特化した「グラモフォン」やらはあっても、「クラシック音楽全般を扱う」というスタンスの媒体は意外にも海外媒体には存在していませんでした。無論、BBCが権利を持ってる音源をどんどん附録に付ける、というやり方が功を奏した部分が大きいとはいえ(なんせ武満徹の「海流」たる「A Way of My Life」なんぞ、長い間この雑誌の附録録音しか音が存在せず、マニアさんが必死に追い求めてたもんね)、今やオーストラリア版やらアメリカ版、カナダ版、ドイツ語版まであるわけですから、スゴイもんです。新潮社の泡沫雑誌に終わった「グラモフォン・ジャパン」の企画を耳にしたとき、恐らく1年でポシャルだろうなぁ、やるならBBCミュージック日本版の方が良かろうに、誰が神楽坂上を騙したのやら、と思ったものでしたっけ。
正直、まあ、あの独特のイギリス趣味というものがばっちり利いてる雑誌であることは確かで、これがワールドスタンダードなんかなぁ、こんなもんイギリス人の他は評価せんぞ、としか思えない部分もないわけではないが、メディアを握っているというのはそういうことなんだから、それはそれとして扱うしかないですな。書き手も、「ストラッド」などとは相当に違うし。

もとい。で、そのBBCMusicの最新号で、2007年度ディスク大賞が発表されています。そしてそして、見事新人賞に選ばれたのは、我らがパヴェル・ハース・クァルテットの「ハース2番&ヤナーチェク」のスプラフォン盤でありましたっつ。ぱちぱちぱちいぃ!詳細はこちらをどうぞ。http://www.bbcmusicmagazine.com/awards/newcomerwinner07.asp
当電子壁新聞の関連記事はこちら。
http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/archive/20060711
http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/archive/20060615

とにもかくにも、昨年の夏の初めに晴海でマニアもマニアじゃない方も、みんなビックリ仰天させたあのハース、それに「とうとうチェコでもスメタナ時代が終わった」とつくづく感じさせたヤナーチェク(パヴェル・ハースQの恩師はシュカンパ御大ですけど)、皆様もお聴きあれ。なお、パヴェル・ハースQは、パシフィカQ同様に見事に日本に於ける若手クァルテットの最初の受け入れ窓口たる晴海入国管理所、じゃなくて、そこから直ぐの晴海トリトンスクエアに拠点を置くNPOのSQWシリーズを卒業、2009年には某音楽事務所の差配で来日公演が予定されております。乞うご期待。ハース全曲をやれ、なんて無茶な声を上げて下さい。

当電子壁新聞の別のところで話題になってるウィハンQといい、このPHQといい、はたまた前回の大阪国際をシューマンの2番なんてとてつもない曲で制したベネヴィッツQといい、プラハからはタイプの違う団体がどんどん出てきてる。どうしてこれが東京では出来ないんだ…ってのはまた別の話なんで、今日はこれまで。


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コメント 4

rodrigo

初めてコメントします。そしてものすごく正直に書きます。
私は一昨年からクァルテットウェンズデイを楽しみに聴かせていただいています。古典SQのすごさを実感したのも、エルデーディの素晴らしいメンデルスゾーンに酔ったのも、クスのモーツァルト1番の出だしにしびれたのも、パシフィカの見事な演奏を聴いたのもSQWでした。しかし……。
しかしハースは何故ボルチアーニで優勝できたのかわかりませんでした。フォルムの崩れた(と私には聞こえる)モーツァルト。誰かの曲に似ている部分だけ目立つハース(彼らの演奏のせいではない)。そして熱演だけのヤナーチェック。鳴らない楽器(これは楽器のせい?だが)。楽しめませんでした。
ボルチアーニの審査員とやくぺん先生は絶賛。私の耳のどこがおかしいのか是非教えてください。切実なお願いです。
by rodrigo (2007-04-24 10:05) 

Yakupen

rodrigo様、コメント有り難う御座います。
さて、まず、小生は「演奏を自分でどう感じるか」は、出来る限りこの電子壁新聞には書かないようにしているのはお判りの通り。なんせ、評論家ではありませんので、自分の演奏への感想は文章で人様に伝える必要なんぞない、と思ってるからです。聞きたかったら酒持って佃まで来い、というのが基本姿勢。

さても、とはいえ、お訊ねになられた事に関し、最低限のことを述べます。
まず、ボルチアーニでの経緯に関しましては、一昨年秋のボルチアーニ・コンクールに関する「ストリング」レポートをお読み下さい、というのが商売的に一番正しい言い方なんだけどなぁ。http://www.lesson.c o.jp/で、バックナンバーでボルチアーニ・コンクールのレポートが掲載された号が欲しい、とかお願いできれば小生としては嬉しい。うん。

んで、経緯とすれば、あのコンクールは圧倒的にパイゾQが優勝候補だったんですね。それがいろんな事情でファイナルに行けず、ファイナルは決してレベルは高くなかった(小生だけではなく、一緒のブースだった某北米マネージャーさんも同意見)。そんな中で、非常に安定した戦いを繰り広げたパヴェル・ハースQが自然と浮き上がり、優勝した、ということ。
正直、ここだけの話、小生もTANディレクターも北米演奏旅行を差配するマネージャーも、「今回はまた1位なしだろうなぁ」という気分でした。で、TANディレクターは「じゃ、結果とは関係なくパイゾQをやろう」とその段階から考えていたそうです。
ま、どういうことがあったかは知らないが、パヴェル・ハースQが優勝した。この結論は、敢えて推測や噂を交えて書けば、この回からコンクールの総裁になったエミリア・ロマーニャ地方の大音楽一家アバド家の有力者(クラウディオの従弟だったかな)が、優勝者を出したい、という意向が強く、1位なし2位ではなく、優勝になった、というところ。
以上がボルチアーニの裏話。これ、「ストリング」にもハッキリ書いていません。あくまでもここだけの話です。

何を言いたいかといえば、「ボルチアーニでのハースQの演奏は、カルミナの大スキャンダル以降、ケラー、アルテミス、クス(及び壮絶な決勝となったパシフィカ)など過去のここの優勝団体のような圧倒的なものではなかった」ということなんですね。
これ、説明になっていませんけど、これが経緯。TANディレクターは相当に悩んだけど、ハースは素材として悪くないし、実は本選のモーツァルトの出来がとても良かった。というか、基礎が凄くかっちりしていて、全く崩れがなく、素性の良い爽やかなモーツァルト。それで審査員も聴衆も、「ああ気持ちよかった、これならこの子たちが優勝で良いんじゃない」と思ったわけですわ。

こういうコンクール全体の流れは、1次予選から全部聞いていないと判りません。本選だけ来てどうこう言う偉い評論家先生やジャーナリストには見えない。だから小生もディレクターも、必要なコンクールは全部予選からいないとならんのですわ。えれーめーわくな話だけど、若者たちの本気さに免じて許すか、ということですな。いやはや。rodrigoさんも、時間があってお近くにお住まいならば、来年の大阪のコンクール、1次予選から全部聞くとイヤでも知りたくもないドラマに接することができますよ。

もとい。で、東京での演奏は、そういう「端正できちんとした、素材としては悪くない奴らが、1年間でたくましく、メイジャーとしてやっていけるだけの押し出しの良い演奏するようになったじゃないの」というビックリがあったわけですね。1年間の研鑽がはっきりあった、ということ。それはそれでとっても嬉しかったですよ。

結論からすれば、rodrigoさんのご意見は、「初めて何の先入観も持たずに彼らを聞いた、きちんとした意見を持った方」のご感想ですから、ご意見として大事になさってください。楽しめなかった、という意見は、どんな演奏でも半分はあるはずだし、ある意味、それこそが個性なわけですから。耳がおかしいなんてことはあり得ません。俺には判らん、なんて演奏、小生にも山のようにありますから。例えば、小生はライブでも聴いているバーンスタインのマーラーなんぞ、未だになんであんなに誉められるか全然わからないです。いやはや。

というわけで、長々と書きましたが、これはあくまでも裏話や経緯。ここだけの話ですし、全然「どこが良かったか」の説明にはなっていないでしょうが、一部の関係者がうれしがっている理由にはなってるかしら。

皆の衆、ここに書いてあることは、何の根拠もないたたがブログの書き込みですので、絶対に人に言って歩いたりしないように。いいですかぁ。
by Yakupen (2007-04-24 11:25) 

rodrigo

ブログという、誰でも見られる媒体において、突然投げかけられた、ぶしつけな質問に対し、貴重なお時間を使って詳細にお答えいただき、本当にありがとうございました。非常に嬉しいです。
おっしゃっていることは、自分なりにかなり受け取れたと思っております。あまりご迷惑をおかけしない範囲で、その内またコメントさせていただきます。
by rodrigo (2007-04-24 21:14) 

Yakupen

rodrigo様、お返事ありがとうございます。また、小生が書こうとしたことの意を汲んで下さりまして、感謝いたします。

みんなが素晴らしいと口を極めている演奏の中で、えええどーしてぇ、と己の耳と感性に疑いを抱かざるを得ないのではないかという心配をしつつ座っている、という経験は、演奏会がよいをなさっている方ならいくらでもあると思います。今は、ネット上でワイのワイのご自分の感想をお書きになる方も多いですから、さらに「なんでぇ」指数はあがっちゃうかもしれませんねぇ。

でも、後になってみれば、いろいろとその理由は分かるものですよ。「ああ、人々は音楽のこういうところを聴いているけど、俺はどうもこういうところを聴いてるんだなぁ」ってね。で、自分の趣味というか、相手の趣味というか、そういうものが少しづつ確認されていく。そんなことを四半世紀もやってると、逆に他人との違いが面白くなってくる、なんてこともあります。

なんか爺の発言みたいですし、rodrigo様が半世紀も音楽を聴いている方だったら凄く失礼な物言いですけど、まあ、そういうもんでしょ。

ここまでどーでも良いことを言ったついでに申しますと、小生がつくづくそんなことを感じたのは、あの昭和女子大人見記念講堂でバイエルン国立管をカルロス・クライバーが振ったベートーヴェンの4番の演奏会のときでした。今や完全に神話となっている、世紀の超名演とみなが口を極めて絶賛するあの演奏会の周囲の熱狂の中で、小生は「どうしてみんなこんなに熱狂しているのか、こんな押しつけがましい演奏にヒトラーに熱狂するみたいに騒ぐなんて、もうすぐある衆議院選挙では自民党が圧勝だなぁ」とぼーっっと思っていたものです。で、やっぱりそうだった。小生が「ああ、もうオーケストラとかオペラとかは自分とは関係ない音楽になったなぁ」と思った瞬間だったかもしれない。

ま、そんなもんですわ。

それから、楽器のことですが…これはねぇ、ホント、コンクールのときなど、周囲の連中と、「あの凄く良い楽器持ってたけど落ちた連中のを取り上げて、チェコの連中に貸してやれ」なんて冗談とも本気ともわからぬことを客席はみんなで言い合ってましたよ。日本はみんな良い楽器持ってるから、耳がおかしくなってますよね。いやはや。
by Yakupen (2007-04-25 12:20) 

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