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「ゴールドベルク=バロン・ヴィッタ」米国立国会図書館へ [シモン・ゴールドベルク・メモリアル]

2007年5月18日、「ゴールドベルク=バロン・ヴィッタ・グァルネリ・デル・ジェス」が、新所有者のアメリカ国会図書館から、シモン・ゴールドベルク晩年の愛弟子にしてボロメーオQの第1ヴァイオリン奏者ニコラス・キッチン氏に貸与されました。

写真は、演奏会前のセレモニーで国会図書館の偉い方から恭しく「ゴールドベルク=バロン・ヴィッタ」を受け取るニコラス・キッチン氏。場所は言うまでもなく、かのクーリッジ・オーディトリアムです。山根先生関係者の居並ぶ客席のすぐ後ろには、音楽好きで知られるアメリカ合衆国国務長官ライス女史も姿を見せ、セレモニーの証人となっておりました。おお、ここはワシントンDCだっ!ちなみに、セレモニー前には、KNB放送作成のドキュメンタリー『一粒の麦芽ぐむ』が隣室で北米初上映されております。映ってるのはゴールドベルク翁が最期にレッスンした古部賢一氏でありますな。

「こしのくに音楽祭」のため、ゴールドベルク未亡人山根美代子女史がシモン・ゴールドベルク氏没後にスミソニアン博物館に寄贈されていた「バロン・ヴィッタ・グァルネリ・デル・ジェス」を現役に復活させ、富山で復活演奏会が行われるまでの過程は、昨年さんざんにお伝えした通り。この辺りからご覧あれ。http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/archive/20060505
「こしのくに音楽祭」でカテゴリー検索すれば、新書本1冊くらいの分量の物語になってますので、お暇な方はどうぞ。
里帰りコンサートから1ヶ月もしないうち、まだ音楽祭が続いている最中に、己のこの世での生が長くないことを周囲の多くの人に隠しつつ猛烈な勢いで音楽祭を推進した山根音楽監督が世を去り、「こしのくに音楽祭」が再編成を余儀なくされたことも、当電子壁新聞で何度かお伝えいたしましたっけ。

一方で、「ヴィッタ男爵」にも様々な面倒なことが起きておりました。殆どが法律的なことです。そっち方面に関心がある方ならもう面白くてしょうがなかろう、興味深く、複雑極まりなく、めんどくさいことこの上ないことが、太平洋を挟んで起きたわけです。誰が悪い、というんじゃないんですけど。ま、所有権の移転に不可欠な法律作業ですわ。

なんにせよ、この日のワシントンDC国立国会図書館主催の室内楽演奏会シリーズ、2006-7シーズン最後の演奏会が「故ゴールドベルク山根美代子追悼演奏会」とされ、同時にこのグァルネリ銘器を巡る様々な問題に公式に決着が着いたと世に知らしめるセレモニーが行われたのであります。

結論から申しますと、故ゴールドベルク未亡人の親族及び故ゴールドベルク氏の遺産(はっきり言えば楽器)を未亡人のために管理することを目的にアメリカに設立されていた財団が協議を重ね、下した決断が、一番上に記したものでした。
要するに、「ゴールドベルク=バロン・ヴィッタ」は未亡人急逝後の法律的な所有者からアメリカ国会図書館に寄贈される。新たな所有者のアメリカ国会図書館は、寄贈者からの意向を受け、この楽器を展示品にはせずに、現使用者のニコラス・キッチン氏に貸与する。今後、キッチン氏は国会図書館の様々な音楽イベントや音楽研究に積極的に関与協力する」ということ。

「ゴールドベルク=バロン・ヴィッタ」は、今後も世界のどこでも音を奏で続けられるようになりました。それどころか、ニックはこの楽器を使ってアメリカ国会図書館のための仕事をいっぱいしなければならなくなった。国会図書館音楽部門ディレクター女史によれば、かつてはブダペストQやジュリアードQがレジデンシィとなっていた国会図書館は、現在は方針が変わってレジデンシィをやっていないそうなので、結果として実質的なレジデンシィに近い役割を果たすのがボロメーオQになりそうな雰囲気です。
予定されている最初のプロジェクトは、ここクーリッジ夫人の委嘱で作曲され、クーリッジ・オーディトリアムで初演され、国会図書館に猛烈に綺麗な手書きのオリジナル譜が収められているバルトークの弦楽四重奏第5番に関する「図書館が所有する歴史的リソース有効活用プロジェクト」だそうな。近い将来、アメリカ国会図書館の公式ウェブサイトでバルトークのオリジナル譜を眺めたり、ボロメーオQの演奏で音資料が出てきたりする、ということになりそう(早速週明けからこの会場で録音とのこと)。セレモニー後の演奏会でもこの曲は演奏され、ロビーにオリジナル譜と初演時の演奏者サイン入り当日プログラムが展示されておりました。

「こしのくに音楽祭」が発展的に解消し、新たにこの9月から富山で始まる「シモン・ゴールドベルク記念音楽祭」にも、当然、セミナーをするニックやボロメーオQと共に再び里帰りしますので、富山の皆様、ご安心を。詳しい情報は、追ってお伝えいたします。まずは遙かワシントンDCから、事実関係のみをお伝えいたしました。


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