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Seiji Ozawa 24歳 [演奏家]

なんのかんので、来週の月曜日までに総計4本の原稿を入れねばならなくなり、やっと1本目をほぼ終えたところで夕方過ぎ。今日は朝からストームになるとウェザーチャンネルは脅してるんだが、幸いにもたいしたことにならず、雪の日はかえって晴れてるよりも暖かいんでグチャグチャになってる歩道の雪の山に足を取られないようモッサリモッサリと歩いてシンフォニーまで行き、マゼール御大がスクリャービンの第4シンフォニーを壮麗に鳴り響かせ、両手おっぴろげるバンザイ仁王立ち状態で最後の長大なクレッシェンドを頂点まで引っ張り上げ(今のアバドや小澤氏にはやりたくても出来ない身振りだぞっ!)、ボストンの老(ちょっとだけ)若男女の大喝采を浴びるのを見物して参りました。
マゼール御大、数週間前の大晦日にはエクや古典Qがクァルテットやってる横でシンフォニー全部という壮挙をやってたわけだが、呆れるくらいお元気でありましたわ。最初に置かれたチャイコフスキーの組曲第3番なんてみょーな曲の冒頭から、エグさ丸出しのマゼール節全開。マニアさんなら演奏が終わった途端にあれこれ口から泡を吹いて言いたてたくなること必至、って類の音楽です。いやぁ、高いギャラを取る指揮者さんはこうじゃなきゃぁね。

さても、久しぶりのシンフォニーホール、微妙にあちこち弄ったような気もする。でも、両側の回廊にいろいろな展示がされているのはいつもながら。で、今、桂冠指揮者の前監督生誕75年を記念して、Seijiに関するパネル展示やってます。量はたいしたことない、2階のマサチューセッツ通り側のコーナーひとつ分です。
監督になって最初の定期のプログラムとか、10数年前にミュージカル・アメリカの今年の音楽家になったときの表紙とか、北京にボストン響連れてったときの写真とか、いかにもなものが並んでる。と、その中の1枚の書類に目が釘付けになってしまった。これ。
023.JPG
お判りでありましょうか。1960年の夏前に、フランスはパリ在住の24歳のSeiji Ozawaなる日本人若者が、バークシャー音楽祭の指揮者コースにアプライしたときの申請書です。

考えてみれば、ボストン響の事務所にはあって当たり前の古資料。こういうものが、恐らく、このシンフォニーのどっかの倉庫に何百枚と山積みになってるんでしょう。捨ててないんですねぇ。そんな中でも、歴史的に意味がある文献になるのはホンの数枚。無論、同じ書類倉庫の1980年代半ばくらいのところには、OueとかOnoとかSadoとかもあるんだろうし。

じっくり眺めると、25歳のOzawa青年、申請書書くときにちょっとしたポカをやってます。まさか接写するわけにいかぬので、必要なところを超アップにしてみましょう。
023のコピー.jpg
お判りでしょうか、日本の家族の住所を書いてるところ。おかしいでしょ。いくら日本を離れてパリで生活しているといえ、日本国民なら川崎を東京とはしないわなぁ。

オリジナルを眺めると一目瞭然。このTokyoって文字、筆跡が違ってるんですわ。

恐らくは、申請書を一生懸命書いたOzawaという青年は、
1-38 Totemachi Kawasaki-shi
JAPON
と書いちゃったみたい。で、どうやら提出された書類を見た誰か心優しい方が、この日本人はTokyoから来てた筈だよなぁ、って、Japon の前に書き添えてくださったようだ。

いやぁ、オリジナル文書を眺める醍醐味だなぁ。こういうの、無性に興奮しますね。玉川大学でカサド資料掘ってたときのことを思い出すぞ。

てなわけで、今を去ること半世紀以上の昔、音楽の街を標榜する川崎の市長さんには絶対に見せられん書類がこの世に存在することとなり、幸いにも「おいおい、KawasakiはTokyoじゃないだろー」なんて文句付ける人も半世紀前のボストンにはいなかったらしく(進駐軍で座間とか横浜とかに住んでた奴はいっぱいいただろーにねぇ)、書類は無事に受理され、審査を通過し、青年はパリからタングルウッドに招聘され、ミュンシュに才能を発見され、翌年にはニューヨークフィルの副指揮者の職を得て…

さて、ここでご教訓。

皆さん、今、あなたが書いている書類だって、なんの因果か半世紀後に展示され、多くの人様の目に晒されることがあるやもしれませぬ。公式書類は、きちんと、間違いなく、必要なことをバッチリ記入しましょうね。←なんの教訓にもなっとらんわぃっ!

まさか、「東京交響楽団が世界的に有名になることで、川崎市の名前も世界に有名にし…」というミューザ川崎オープン記者会見での川崎市長の歴史に残る素っ頓狂発言は、既にこのときに24歳の指揮者によって予言されていたのであった…なんて言いません。はい。

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