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「写真撮影は禁止されています」と言わない演奏会 [音楽業界]

竹澤恭子さんを頭に、エッシャーQがそれぞれ2番、4番のヴァイオリン、2番ヴィオラ、チェロに入り、第3ヴァイオリンをチョー・リャン、第1ヴィオラをフォルモサQ君、第1チェロを元東京Qのクライブという面白いメンバーでエネスコの超難曲にして超名曲のオクテットが見事に香港シティホールに鳴り響き、無事に10日くらいに渡る第6回香港国際室内楽音楽祭が賑々しく幕を閉じました。これでまた1年、これだけ纏まってこのレベルのメンバーによる室内楽はこの島では聴けなくなります…なのかな。

こちらに関しては今、公式写真待ちで、到着次第「アッコルド」に掲載しますので、ちょっとお待ちあれ。で、その前パブ(?)の話を。

ええ、この類いの大規模な都市型音楽祭では、街の彼方此方で無料コンサートをやるのが今や常識でありますね。「東京・春・音楽祭」も上野駅のコンコースやら上野の杜の中やらでやるし、「ラ・フォル・ジュルネ」も東京駅の丸ノ内線の改札奥とかミツビシ村のあちこちとかで盛んにやってます。

それらの演奏会、街ゆく人達に無料で聴かせて、少しでも広報宣伝にしようというのが目的なんでしょう。本気で聴くのは会場に来てね、ってこと。

とはいえ、例えば「ラ・フォル・ジュルネ」なんかでは、演奏会場になった場所の周辺に警備員さんがいっぱい配されて、人のコントロールをしようとする。その大きな目的は、「演奏中の録音、写真撮影などは関係者以外固くお断りします」を実戦するため、ぶっちゃけ、演奏中に今時ほぼ8割の街ゆく人が持ってる携帯端末の録音や写真撮影機能を使わないよう見張ってる、ってのが実際の所であるのは皆様良くご存知の通り。なんかあると直ぐにタブレットで写真に撮っちゃってFacebookにアップしちゃうのは、今やある世代以下の常識になりつつありますもんねぇ。

「肖像権」とか、もっと具体的には演奏してる最中に視界の中でフラッシュが焚かれると困るとか、いろいろな理由はあるんでしょうが、ともかく「無料イベントの演奏会でも写真撮影は出来ません」というのを常識にしようとしてるんでありましょう。

…って話をまず前振りにして、香港島のイベントについてであります。

このフェスティバルでも無料演奏会がありました。場所は香港島のセントラル、ランタオ空港からの特急が到着するビルから地下鉄のセントラルなんかの方に向かう途中の最初のビルの3階吹き抜けロビーです。場所としては、メイン会場の香港シティホールの壁にデカく貼られた香港シンフォニエッタの垂れ幕の庄司沙也香様が見えたり、シティホールや人民解放軍ビル前からフェリー乗り場までの、中国復帰以来ずーっと工事をしていたところにやっと仮設遊園地が造られて、巨大観覧車がまわっているのが見えたり、無論ヴィクトリア湾を越えた対岸の九龍も見えたり、いかにもな場所であります。ロケーションはばっちり、ってこってすな。

音響的にはお世辞にも…でありまして、エッシャーQが《蛙》終楽章でケロケロ弾くところも音量が下がっちゃうと聴こえないし、なんか全体に第1ヴァイオリンしかないような音楽になっちゃう、ま、こういう場所では良くある。とはいえ、それにしても余りにもきこえないなぁ。

それはそれとして、この無料イベントで興味深いのは、演奏の最中にどうしろ、ってアナウンスなんぞなーんにもないこと。写真を撮るなも、録音するなも、飯食うな、なんか飲むな、なんてことも言わない。それどころか、仮設された客席の周囲にはワインとか珈琲とか、スナック菓子とかが置いてあって、みんな飲んだり喰ったりしててもスタッフは何も言わない。それどころか、聴衆が立ち上がって写真撮ろうが、特に何も言わない。ほれ、ドヴォルザークの弦楽五重奏の解説をするエッシャーQのMC担当セカンドのアーロン君(パシフィカQのマスミのお友達、「おいおい、マスミ、結婚したの知ってるか」ってのが顔を合わせた最初の発言!)が喋ってる間
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真ん中で立ち上がって写真撮ろうとしてるおねーさんは、関係者さんじゃありません。聴衆さんですうう!

これを「いかにも中国だ」と見下す気にはなれんなぁ。だってさ、こうやって行きずりの人が写真を撮って、それを面白がってFacebookやらブログに「なんかこんなのやってたぜ」ってアップしてくれることの宣伝効果は、特にスポンサーさんとすれば、大層なものがあるでしょう。勝手に情報拡散してくれて、ことによると演奏会場に来てくれるかもしれない、それがなくても「この時期にはこういうイベントやってるんだぁ」と街の人がひとりでも知るようになる効果は計り知れない。

個人的には、演奏家は野外無料ライブはこういうもんだと割り切ってしまった方が良いと思わないでもないのだが、さても、多くの人の賛同を得ることが出来るかどうか。きっと、頭の良い広告代理店の方に頼めば、写真を撮ってもOKにしちゃった場合の広告効果なんて直ぐに数字で出してくるんだろうけどねぇ。

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コメント 4

ばす

>「演奏中の録音、写真撮影などは関係者以外固くお断りします」を実戦するため

音楽業界では当たり前なのでしょうか、非業界人の私は全く知りませんでした。
フラッシュが演奏の邪魔になるのはすぐに想像できますが、駅構内みたいな騒がしい人通りの多い場所で録られた、一般人の写真や録音が画質も音質も商売の邪魔になるとは考えがたく、よろしければそのような慣習がある理由を教えて頂きたいです。ネットにアップロードされても、マーケットの対象になる層は殆ど見ないか知っていて営業効果が薄い、とか…?
by ばす (2015-01-22 18:33) 

Yakupen

ぱす様

わあ、ビックリです。クラシック音楽業界では「演奏中の写真撮影はお断り」は常識中の常識です。それから、いちばんコワいのは「肖像権」です。スター演奏家の中には、勝手に写真を出されるのを凄く嫌がる人がいます。スターじゃなくても、プロフィル写真にすごく気を遣う人が多い業界です。

クラシック音楽業界でのマーケティングとは、「切符を買ってくれる人」ではないのです。そもそも切符では成り立たない業界で、スポンサー前提です。ですから、「うちの会社はこんなところにお金を出している」という風にスポンサーが思われることが大事。ですから、切符を買わない人にでも少しでも広く知らしめたいのですよ。答えになってますかね。

by Yakupen (2015-01-23 01:03) 

ばす

お返事ありがとうございます。
すみません、完全に当方の理解不足でした。

ホールの大小に問わず、クラシックの演奏会なら写真撮影が許されないのは勿論存じていますが、それはホールというフォーマルな場の雰囲気であるとか、非日常感を壊さないためだと思っておりました。

その上で、駅であるとかビルの1階のような場所で行われる演奏会は、祝祭的雰囲気を醸し出して集客に繋げるためのものであれば、写真撮影が場を壊すとはあまり思えず、マーケティングという意味でも写真撮影OKでよさそうに思えて、ラ・フォル・ジュルネなどでも撮影禁止の努力が行われていることに驚きました。

演奏中の写真撮影禁止は揺るがぬ鉄の掟なのですね。
by ばす (2015-01-23 19:08) 

Yakupen

ばす様

まあ、掟はいつかはかわるものかもしれませんが、基本はダメ、それに最近はみんなが携帯やらスマホで写真撮影をしますから、ますますダメかもしれません。ポピュラーなどでは、「録音も写真撮影もご自由に」というのを謳ったイベントがあるようですから、頭の良い人もいるもんです。
by Yakupen (2015-01-24 14:56) 

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