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韓国「国立」オペラ団 [音楽業界]

ほぼ徹夜でやっと都響の原稿を入れ、これからミュージック・イン・ミュージアムに着手。なんとか明日中に入れ、直ぐにNJP原稿に突入せねばならぬ。
なんせ、月曜日に急に横浜イギリス館まで行き、知る人ぞ知るコントラバス名手文屋充徳さんのマスタークラスを眺めることになり、さらに月末にほとんど日帰りで富山に行くことになったので、締め切りがぎゅーぎゅー。本来ならば今日は、日本EU友好年で来日している中欧ヤングサウンドフォーラムオーケストラなるユースオケの演奏会があり、文屋さんの弟子で今度ベルリンフィルの首席ソロ奏者になったナビル・シェハタが独奏するので(ほとんど広報してないイベントです、コントラバス愛好家諸氏、日本各地の公演がありますので、お調べ下さい)、越谷まで見物に行かねばならなかったんだけど。もうグチャグチャ。眠くて、頭がクラクラで…こんな文章を書いているうちにも突っ伏して寝てしまいそう。爬虫類の死体が反射神経だけで刺激に反応し動いているようなもんです、ホントに。

というわけで、今日はまともなことが書けないので、アホでも書けるような事実関係の確認のみ。ある意味では、「音楽の友」誌6月号特集「日本オーケストラ白書2005」に小生が書かせていただいた「海外演奏旅行の現状」という記事の補遺ですな。

各方面にやっと報道され始めましたように、東京フィルハーモニーが、来る10月始めに韓国国立オペラ団が本拠地「芸術の殿堂」オペラハウスで行う「ナブッコ」のピットに入ります。東フィルの公式ホームページのニュースは以下。http://www.tpo.or.jp/japanese/info/opera.html

原稿を執筆した4月の時点では書き漏らしてしまった。関係者の皆様、スイマセン。
この公演、有り体に言って「グローバルなお仕事公演」ですね。どうしてこうなったのか、経緯はあろうけど(去る8月下旬のソウル取材では、他のことがありすぎてとてもここまでは突っ込む時間がなかった)、国境を越えてこういう「お仕事」が出来るようになってきたのは、オーケストラのマーケティングから考えれば、とてもとても良いことだ。
「普通の公演のピットにはいるために外国のオーケストラがまるまる来る」っていう例は案外あるみたい。小生が経験しただけでも、例えば1990年代半ば、パリでオペラ座に対抗する勢いで主催オペラなどをプロデュースしているシャトレ座(日本では数年前から梶本音楽事務所が提携してますね)が、シェーンベルクの「モーセとアロン」の新演出を出したとき、ドホナーニが指揮するピットに入っていたのは、どういうわけかパリ管でもフランス国立管でもなく、フィルハーモニア管でした。へえ、と思ったけど、まあこういうものなのかなぁパリってところは、と納得するしかなかったですね。なんせ練習が大変な曲ですから、これをパリのオケでやろうとしたら…。

で、今回の報道で、ちょっと誤解を呼びそうな(というか、誤解するなという方がムリなんだけど)点があるので、ひとつだけ。

韓国国立オペラ団とは、「韓国政府まるがかえで運営されているオペラ団」ではありません。

ちょっとビックリでしょ。2000年9月に雑誌「地域創造」(http://www.jafra.nippon-net.ne.jp/publication/mag/magbn/mbn_11.html)のためソウル・アーツセンターを隅から隅まで数日かけて巡る取材をした際、オペラハウス事務棟の上にある韓国国立オペラ団の事務所で「国立」とはどういう意味かの話を伺って、「????」となったものだった。なんにせよ、この団体、どうも、ヴィーン国立歌劇場とか、パリオペラ座とかのような意味での、公立のオペラ団体ではないようだぞ。

去る8月末に韓国の音楽事情について午前中みっちり話をした韓国の「音楽の友」に値する音楽雑誌「聴衆」編集長氏によれば
「韓国にはオペラ団が約33あり、国立オペラ団が唯一安定的に活動している」
とのこと。とはいえ、繰り返すが、国立とは「国からの補助金を沢山貰っている老舗団体」という意味で、国家直営ではなく、日本の業界感覚で言えば、あくまでも「民間団体の最大手」のようなのだ。

どうも、韓国では「国立」という言葉の意味が日本のそれとは微妙に違うみたいなのである。数年前の取材のとき、なんとなくそう感じていたのだが、今回の取材で、「国立」と訳さざるを得ない言葉の持つ日韓でのニュアンスの違いが、ある程度は見えた。でも、正直、やっぱりよく判りません。

というわけで、まあブログに記された情報、程度の精度としてお読みいただきたい。なにはともあれ、ひとつの一般的な教訓。

「国立という言葉のあり方は、どうも文化社会によって、いろいろと意味の広がりが違うようである。」

似たような話に、韓国の通訳さんが「社長」と訳してくれた言葉がある。これまたびみょーーーに違う意味で用いられていて、なかなか面白い誤解というか、新鮮な言語世界の発見があった。ま、機会があれば、いずれそのうち。

ちょっと真剣なことを言うと、日本と韓国の間のいろんな摩擦や誤解は、そのほとんどは、この「国立」やら「社長」やらの例にみるような、「ほとんど同じなんだけど、実はちょっと違っている」という相互認識の微妙なズレに起因するんじゃないかしら。
例えば地球人とバルカン人だったら、それぞれの文化がまるで違っていることを前提にみんなが対応するから問題もない。でも、日本と韓国の場合は、ちょっと気を許すと、「相手の土俵とまるで違うことを、相手と同じ言葉で喋っている」という状態になる可能性がある。
これって、猛烈に危険だ。通訳の方が有能で、話してる奴が冷静で、そんな違いをどっちかが察知し、それと意識して少しづつ修正できればいいんだけど…ヘタすると、それぞれが違っているという事態に気付かずに話が進み、ある瞬間に、「えええええ」となり、一気に誤解が表面化する、という可能性はある。

あ、この話、一昨日来のコメント覧で展開された「過疎」の議論とは関係ないですからね。いや、やっぱりあの議論の反省から思い出したことかなぁ。

通訳の辛さんも、ソウルでこのブログを読んでらっしゃるかもしれませんねぇ。女性の方の辛さん、お元気ですかぁ。皆様の有能さで、ホントにいろいろ救われました。ソウルは一気に秋になるから、もう朝晩は寒いでしょうか。お体を気を付けて。そろそろ世宗文化会館のヴァーグナーも始まりますし。


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コメント 5

inouetakuya

バルカン人→バルタン人?
by inouetakuya (2005-09-24 09:19) 

Yakupen

おお、「バルカン人」が通じない世代!
汝らにも、長寿と繁栄を。
by Yakupen (2005-09-24 10:01) 

koyopen

上記コメントに注記しますと、スタートレック(その昔は宇宙大作戦と言った)に出てくる宇宙種族のひとつです。ほら、あのスポック君。彼はバルカン人であります。
by koyopen (2005-09-24 16:59) 

inouetakuya

とっても間抜けなコメントですいません。ウルトラマン世代なもので(笑)。
ふむふむ、Balkanだと思ったらVulcanだったんですね。
by inouetakuya (2005-09-26 16:28) 

Yakupen

たしかに、なぜか、ヴァルカン人、とは書きませんね。最近は書くのかな。
ウルトラマン世代とスタートレック世代は、そんなに違っていないどころか、実は重なっているんじゃないかしら。東京地区では日曜午前9時半だかくらいに「宇宙大作戦」をやっていた頃、「ウルトラマン」なんかもやっていたような。
ま、なんにせよ、お互い、「長寿と繁栄を」←バルカンのご挨拶です。
by Yakupen (2005-09-26 19:11) 

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