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みーんなメンデルスゾーン [弦楽四重奏]

クァルテット業界は、なぜかメンデスルゾーンが大流行なのである。

オールド室内楽ファンの皆様、ちょっと前まで、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲なんて、聴いたことありましたか。
おそらくは、ブダペストQが作品12のカンツォネッタを録音していたから、これがアンコールピースとして知られていたくらいだろう。なにせ、日本ではなぜか猛烈に支持されるヴィーンフィル系の団体も、スメタナQ以下の中欧系団体も、ましてや東独系団体も、印象的なレコードを遺していないのだ。つまり、一頃の日本国のクラシック愛好家が大好きだった「名盤、決定盤」が、なかったのである。
実は、これは日本だけの現象ではない。その理由は説明できるのだけど、ここではやりません(いずれ近々商売でやるだろうから、もったいないのでとっておく)。なんにせよ、メンデルスゾーンのクァルテットという楽曲は、演奏史の穴だったのだ。

何を隠そう、メンデルスゾーン演奏史に革命を起こしたのが我らがデンオンから発売されたカルミナQの作品13のディスクだったことは、おそらく後年の歴史家が事実として記すであろー。
1991年に録音されたこのCD、シネノミネQの全集やら、デッカの大プッシュで出てきたイザイQの全集やらを瞬く間に押しのけ、メンデルスゾーンの弦楽四重奏の素晴らしさを世に示す「最期の決定盤」のひとつとなった(1990年代以降、録音メディア市場はひたすら拡散し、かつてのような「決定盤」は存在し得なくなる…これもまた別の話ですけど)。
今、1000円盤で再発売されているこのディスクの売り文句は以下。それにしても、誰が書いたんだでしょうか、この文章。Bさんですか?

「カルミナ・クァルテット メンデルスゾーン弦楽四重奏曲第2番、第6番:メンデルスゾーンの天才が顕わな名曲を不遇から解放した秀演。
弦楽器4台のみとはとても信じられない表現の振幅、隅々まで神経を通わせた精緻きわまりないアンサンブルの完璧さ、曲の深部を抉る解釈の鋭さ。ボルチアーニ・コンクールでのセンセーションを知る一部室内楽ファンの注目が、衝撃のデビュー・ディスク、シマノフスキによって、全世界へと広がった。本作は、メンデルスゾーンの天才が顕わな名曲でありながら、演奏に恵まれず不遇をかこっていた作品の真価に気付かせてくれた第2作。」

1990年代も半ばになると、若い世代が堰を切ったようにメンデルスゾーンを録音するばかりか、かつて手も付けなかったジュリアードQ(ロバート・マンが引退した後、スミルノフ時代最初のディスクがメンデルスゾーンの作品12と13だった)、なんとなんとアルバン・ベルクQまでもが録音(アルバン・ベルクQには演奏家としては全く興味がないので知らないのだけど、このディスク、話題になったのかしら)。若い団体がデビューに作品13なんぞを入れるのは流行としか思えないほど。

そんな中、21世紀最初の10年も半ばになろうとするこの数ヶ月、個人的に付き合いのある連中が次々とメンデルスゾーンを録音し、困ったことにどれもこれも立派な演奏なのである。
ひとつは、エマーソンQの全集に堂々とぶつけたパシフィカQの全集(パシフィカQの今の勢いを、「ジュリアードQが出てきたときを連想させるね」と呟いていたアメリカの古株マネージャーがいたっけ)。
もうひとつは、南ドイツの家庭音楽伝統とアマデウスQの中欧ヨーロッパに立脚した国際性を絶妙にブレンドさせたヘンシェルQの全集である。
前者は、フルプライスに近い新人の録音というハンディなしのガチンコ勝負なのに、輸入したセットがほぼなくなるほどの売上げがあった、という某大手レコード屋さんからの情報も(やはり昨年のカーター全曲演奏のインパクトはデカイ)。後者も、新録音をいきなり廉価盤で出した全集だったからか、あある瞬間には某大手レコード小売店室内楽部門の売上げトップに立ったとか。数日前のヘンシェルQ本人達からの連絡によれば、後者はMedia Awardを受賞したとのことです。

もうひとつ「クァルテット博士」幸松肇氏が今月の「レコード芸術」で大絶賛している、寿司時計でお馴染みのクスQの作品80というのもあるんだけど、キリがないのでお終い。
なにはともあれ、2005~06シーズンのインはメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲!間違いない!

                           ※※※
ちなみに、ヘンシェルQが11月に西日本だけのツアーをします。大手音楽事務所と敢えて契約せず、付き合いのある場所をまわるだけなので、メディアではまるで取り上げられていない。まるで日本がヨーロッパの近隣国みたいなツアー。大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門で優勝したヘンシェルQですらこうなんだから、室内楽の市場って…。なんにせよ、お近くの方は、是非とも聴いてあげてくださいな。実は彼らも、どんなところに行くのか良く知らないみたいなんですけどねぇ。
ヘンシェルQって、「DGでコジェナーが入れた室内楽伴奏歌曲集で、レスピーギの「夕暮れ」で付き合っている団体」というと全国的に判りやすいかな。あの録音を巡っては…おっと、もう止めましょ。

ヘンシェル弦楽四重奏団2005年11月日本ツアー日程
17日可児市文化創造センター(名古屋郊外)
18日各務原(学校コンサート)
20日 福岡 あいれふホール
23日和歌山 美里町文化センター


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コメント 3

伊達

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲の全集録音、急に増えましたね。ハルモニアムンディからのエロイカSQ盤も、先月リリースの第3集で完結しました。
by 伊達 (2005-09-26 14:00) 

Yakupen

エロイカQもそうですが、おそらく次ぎにディスクの世界で話題になるのは、モザイクQじゃあないですかね。彼らはピリオド楽器じゃないけど、あの辺までは「ピリオド風アプローチ」でやれますから。
ま、まだまだこれからいろんなことが起こるジャンルでしょう。
by Yakupen (2005-09-26 19:15) 

安村洋一

僕はメンデルスゾーンの曲は聴いたり演奏したりはしてたのですが、ただし、彼の曲は難しい!スコットランド、イタリア交響曲 ピアノトリオop49など     弦楽の曲だったら八重奏はよく演奏されるし、聴かれるますよね。       やはり四重奏にもいいものは彼は書いてますね!ハイドン、モーツアルト  ベートーヴェン、シューベルトに負けないものを!CDは1970年代の録音でけど、メロスSQの演奏もいいです。
by 安村洋一 (2005-11-18 11:03) 

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