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だれかロクシンを知らないか:迷走編 [売文稼業]

締め切りが明日に迫るロクシン原稿の話、続き。

一昨日の当ブログ原稿「だれかロクシンを知らないか」であげた悲鳴を聞きつけ、哀れに思ってくださったHayes様が、「ロシアのニュースページにこの作品のモスクワでの上演についての記事があるから眺めろ」という情報をお寄せ下さった。やりとりは、一昨日のブログの下のコメントをご覧あれ。

で、そこの記述で、騒動は一件落着に向かうと思っていたのである。

が、話は終わらなかった。それどころか、事態は迷走の観を呈しつつある。

今朝になって、まだ読んでいなかった資料などをひっくり返し、いろいろ調べていくと、どうやらアルミンクNJP監督がこのロクシン作品を取り上げる直接のきっかけとなったのは、2004年にフランスで制作されたドキュメンタリー"The Evil Genius"らしく思えてきた。で、この作品を調べると、権利を持ち配給している会社に行き着く。おお、このドキュメンタリーフィルムかぁ、ダウンロードして直ぐに視られないのかしら、などとあらぬ希望を抱いているわけですよ、この頃は。

問題はこれから。この映像配給会社のホームページには、当然ながら作品の紹介がある。以下。http://www.ideale-audience.com/site/fiche_programme.243.0.html?prID=445&no_cache=1
ふむふむ、あのロシアのニュースの内容を裏付けるものですね、などと気楽に読んでいくと…

ええええええええええええええ、「1949年に作曲されて演奏されていないレクイエム」ですってぇ。

ってことは、この作品、1957年の交響曲第1番「レクイエム」じゃあないの????

Prima Newsの情報は、明らかにここで演奏された作品が交響曲第1番「レクイエム」であることを示している。作曲年、作品の内容、過去の初演のデータ、などなど。
だけど、確かに、Prima Newsの記事では、この作品を「ロクシンのラテン語歌詞によるレクイエム」と表記していて、交響曲第1番という言葉を一度も用いていない。

整理しよう

①ここにロクシンの「レクイエム」なる作品の2002年5月29日のモスクワでの演奏についての情報がふたつある。
②ふたつの情報には、データの食い違いがある。ひとつは、「1957年に作曲」(情報A)とし、もうひとつは「1949年に作曲」(情報B)としている。
③情報A,B共に、この作品を「レクイエム」と呼んでいる。
④情報Aの内容からは、この作品が交響曲第1番「レクイエム」であると考える状況根拠はありすぎるほどある。
⑤一方、情報Bを信じる限り、この作品が交響曲第1番であることは不可能である。根拠は作曲年。

さて、どーしましょう。

ここで考えられることは、以下の4つ。当たり前だ。

1:情報Aが正しく、情報Bが間違っている。
2:情報Aが間違いで、情報Bが正しい。
3:両方正しい。
4:両方間違っている。

ううううん。4は避けたいし、こうなったらもうお手上げである。小生としては、1であってほしいし、まあ、情報の扱いを基本的な仕事とするジャーナリストとしては、恐らくは1だろうなぁ、と思う。プレスリリースの情報の間違いは、珍しくないですからね。
つまり、情報Bを提供している人は、ロクシンの専門家でもなければ、ヘタすればこのドキュメンタリーフィルムすら視ていない、「日々のお仕事」でプレスリリースを書いている配給会社の広報担当者である可能性が極めて高い。その人は、自分の目の前に資料として出てきたものに単純ミスがあっても、チェックできない可能性は極めて高い。ことによると、リリースを書いた奴がなんか誤解してる可能性すらある。(その辺のさじ加減をみて、情報の質に自分なりの判断を下すのは、ジャーナリストの仕事のひとつです。)

ただ、3の可能性もある。つまり、
「レクイエムという作品は1949年に完成され、演奏されず、それが再び取り上げられ、1957年に交響曲第1番の第2部となったが、やっぱりこの曲もずっと初演されなかった。で、今回取り上げられたのは、交響曲第1番の声楽が入る第2部のみで、そこを指揮者のバルシャイ以下、レクイエムという題で呼んだのである。」
などということ。いかにもありそうだ。無論、勝手な推理ですけど。

さて、どうするどーする。迷走か、最悪の場合の非難覚悟での決断か。

ロシアからの連絡はまだない…カウントダウン、あと1日。


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通りすがり

通りすがりです。

Alexander Lokschinと、ドイツ語転写の綴りで検索すると
ドイツ語の情報がそれなりに出てくるようです。(私は
ドイツ語が読めないので、内容はわかりません。)

sikorskiのサイトには、
Composer :Lokschin, Alexander
Title: SINFONIE Nr. 1 'Requiem' für Chor und Orchester
Writer: Messtext
Duration: 30:00
Opus/Year (1958)
Orchestration (long)
3,3,3,SSax,2ASax,TSax,3 - 3,4,3,1 - Pk, Schl (u.a. Gl), 2 Harfen, Klav/Cel, Streicher
http://www.sikorski.de/catalogue/composers_works_single.php?lang=en&id=193&anr=1007943

スコアをお持ちだからおわかりと思いますが、
レクイエムの典礼文を使っているんですね。

「ロクシン」とカタカナで検索すると、アカデミアニュースの
2003年3月号がひっかかり、以下の本が紹介されて
いました。

Lobanova,M./E.Kuhn(ed.); Ein Unbekanntes Genie:
Der Symphoniker Alexander Lokschin:
Monographien - Zeugnisse
- Dokumente - Wurdigungen. 2002
(Studia Slavica Musicologica 26) (Ernst Kuhn) [318257]
¥8,990
未知の天才:アレクサンダー・ロクシンの交響曲

Lokchineとフランス語転写で検索すると、また別のがあります。
その中のこの曲の権利を持っているらしいchant du mondeの
サイトには楽譜の紹介として
Symphonie n° 1, "Requiem", -1957 et 1974-
pour chœur S.A.T.B. et orchestre
3.3.3.3. - 1 sax. soprano, 2 sax. alto, 1 sax. ténor - 4.3.3.1. - timb., perc., 2 hp., pn. (cél.), cordes

なんていう記述もありました。1957 and 1974だそう。
http://www.chantdumonde.com/chantdumonde/vocal.htm
かえって混乱させてしまいましたか。

ご参考になれば

では
by 通りすがり (2005-09-28 20:45) 

roi ubu

ロクシンのオフィシャルサイトなんて当然ご存じですよね...。
http://www.lokshin.org/en.htm
このサイトに交響曲第1番の初演者バルシャイがロクシンへの追悼文を寄せていますが、
http://www.lokshin.org/en.htm?lokshin-life-barshai-en.htm
この文の後半に交響曲第1番に関する記述がありますが、参考にはならないでしょうか?
by roi ubu (2005-09-28 22:32) 

roi ubu

自己resですが、あらためて記事を読み直してみたら、上記の記事などは当然目を通した上で、なお不明点が…というお話のようでした。失礼しました。
by roi ubu (2005-09-28 23:16) 

Yakupen

みなさま、ありがとうございます。これだけロクシンに対する関心があるなんて、アルミンク監督も事務局も、泣いて喜ぶでしょう。

ちなみに、いま、小生はNJPの事務局に行っては、「このロクシンの演奏は、ライブレコーディングして世界中に売って、もーけましょー!」と騒いでいます。でも、みんな、うれないだろーしぃ、という顔をしています。

どうでしょうかね。なんせ正規のCDはないのですから、百枚単位では売れるんじゃないかなぁ、と思うんですけど。あ、これじゃあ、オケはダメなのかしら。

がんばろう。
by Yakupen (2005-09-29 00:00) 

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