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みーんなメンデルスゾーン・Part2  [弦楽四重奏]

昨日午前の桐山氏とのインタビューのテープ起こし、まだやってます。急な急ぎの仕事で、下請けに出そうかとおもったけど人の調達も出来ず、延々と自力作業。予定の仕事が押せ押せになって、明日、町内会某氏のボートで勝ちどきハーバーから繰り出す予定だった佃月島晴海沿岸航海には参加できなくなりそうだ。うううん、残念。

で、せっかくだから、テープ起こしから記事になりそうもない話題を拾ってしまいましょう。

このところクァルテット業界では大流行のメンデルスゾーン弦楽四重奏曲について。まともな音楽ネタです。http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/2005-09-25の録音話に続いて、今度は「曲の番号や呼び方に統一見解はあるのか」です。

ええと、来る3月末と5月末、桐山さんがヴィオラを弾くエルデーディQが、晴海のSQWシリーズで恐らくは本邦初、世界的にも猛烈に珍しい「メンデルスゾーン弦楽四重奏全曲演奏会」を行います。
ところで、クァルテット博士幸松さん曰く、「最近ちょっと出し過ぎ」のメンデルスゾーンのCD、特にヘンシェル、エマーソン、パシフィカ、それからエロイカも出たかな、ともかく「全曲録音」と呼ばれてる類のセットには、果たして何曲のクァルテットが収録されているのであろうか。

結論から言えば、「世界初の全クァルテット作品収録」とグラモフォンが騒いだエマーソンの全集(この宣伝は事実に反してます。ドイツ方面から漏れ伝わる現場の内実はどうあれ、マイナーレーベルなど眼中になしと宣言するような広報展開だけは相変わらず堂々たるもんだなぁ、DGさん)と、それよりちょっと前に完成したヘンシェル、出たのはほぼエマーソンと同じだったパシフィカの全集では、どれも4楽章の完成したクァルテットは7曲。それに、メンデルスゾーン没後に作品81として4曲纏めて出版されたアンダンテ、スケルツォ、カプリチョ、フーガの小品集(作曲年はバラバラで、纏めて1曲には残念ながら出来ません)が入ってます。

全部でまともなクァルテットは7曲あるんですね。ところが、今回のエルデーディQの「全曲演奏会」は、6曲です。

1曲はどこに行ってしまったのか。

ここまで書いてきたら、この話、インタビューの記事に使うべきだと思えてきたなぁ。まあいいや。話が煩雑なんで、ここに書いてしまいましょう。
ひとことで言えば、作品番号を持たない初期作品があるんです。大金持ちのユダヤ人銀行家の息子フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ少年が、まだベルリンの自宅(最初は博物館島の西岸あたりで、のちに今のフィルハーモニーやソニーセンターある再開発地区の南側、地下鉄メンデルスゾーン公園駅近辺です)で家庭演奏会を次々に行っていた頃の若書き。とはいえ、ニ短調ヴァイオリン協奏曲(有名なホ短調じゃなく)くらいには立派なもんです。さすがに10代の作曲家が書いた世界最高の傑作、弦楽八重奏曲には及びませんけど。

現在、どの楽譜屋さんに行っても売ってるヘンレ版のメンデルスゾーン弦楽四重奏ミニチュアスコア及びパート譜(下の写真で桐山さんが手に持ってる楽譜がヘンレ版ミニチュア総譜です)は、基本的にはある時点までに出版されていた譜面を整理したものです。ですから、20世紀も半ば過ぎに印刷譜じゃないような形で出た初期の作品は、数に入っていないんですよ。

よーするに、ブルックナーなんぞになぞらえて言えば、「1番から6番までのオーセンティックなクァルテット作品の前に、第0番が存在している」というようなもんです。

で、最近は、CDの長さの都合などから、全曲録音ではこの0番を入れた方が綺麗に3枚に納まるし、完成度は落ちるけどまあ酷い作品ではないし(「なぜか僕は昔から楽譜持ってたんですよ。難しさという点ではそんなでもない曲です。作品44も作品80も、結構、難しいですけど。(桐山)」)ですが、正式な出版楽譜には入っていないので、「全曲演奏」では外される、ということ。つまり、今回のエルデーディQの連続演奏会は、正確に言えば「ヘンレ版による全曲演奏会」となるわけです。

なお、メンデスルゾーン楽譜校訂の専門家でもある桐山さんによれば、現在進行中で完成にはあと何年かかるか判らない新メンデルスゾーン全集には、当然、この初期作品も含まれるであろうとのこと。そうなると、全体の番号がひとつずれる可能性があります。実際、そんな例はヒンデミットにもありましたからねぇ。1曲初期作品が増えて、いつのまにか番号がずれていた、ってのが。

以上、メンデルスゾーン弦楽四重奏曲番号の謎でした。さすがにどのCD全集でも、勝手に初期作品を1番として、全体の番号を7つまでずらしているのはありません(エロイカQのハルモニアムンディ盤は、ヘンレ版順に番号を振ってるみたい)。まあ、数十年後の将来を考えれば、「メンデルスゾーン弦楽四重奏曲第1番作品12」なんて風には書かないようにするのが安全だろうなぁ。今時のCDって、そんなライフスパンで考えてないのかしら。

ま、結局、みーんなメンデルスゾーンの番号では困ってるんだなぁ。
普通はこういう場合は「メンデルスゾーンのホ短調」とか呼べば良いんだけど…なんと、変ホ長調の曲がふたつ、第0番を含めると7つのうち3つもある。おいおいおいフェリックスさん、あんたはハイドンかいな。


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