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きて・みさ・やっとるど [たびの空]

これから某音楽ミュージアムの広報さんに会いに行ってきます。Music in Museumの取材。今回のヴィーン滞在で直接商売になる唯一の仕事。まるで元が取れんぞ、いやはや。

でも、良いのだ。このヴィーン滞在は意味があった。だって、昨晩、コンツェルトハウス大ホールのOrgelbalkon Links Reihe1 Platz1というトンでもない場所で、バーンスタイン畢竟の問題作「ミサ曲」を経験出来たんだものね。あんな状況で聴けるのなら、それだけのために自腹切ってヴィーンくんだりまで来てもかまわんです。はい。

そこまで経緯をお話しましょー。

一昨日、コンツェルトハウスのボックスオフィスとトーンキュンストラー管事務所に真っ直ぐ行って、あっさり売り切れゴメンで敗北したのはお伝えした通り。そんな愚痴を綴っていたら、ひとりの助っ人が颯爽と登場したのでありました。

元新日本フィルハーモニー交響楽団コントラバス奏者、今はこちらの音楽院で勉強なさってるNさんであります。日本にいた頃は曲目解説でお世話になりました、と恐縮しちゃうようなメールでの連絡があり、なんのことはない、この宿から徒歩10分ほどのところにお住まいとのこと。
さて、そこからは、このとっくに売り切れになっちゃってる「ミサ曲」の練習進行を巡って、ちょー狭い空間の情報が飛び交います。

たぶん練習は火曜の午前中だろうから調べてみましょう……どうやら今回はいつもと違って本日月曜の夜7時半から最後のダメ出しらしい、潜り込もうと思えば潜り込めるけど、どうします……どうやら楽団員にも招待券が一枚も出ていないみたい……うううん、結局、ダメみたいですね……

ってわけで、Nさん、本当に有り難うございました。小生なんぞが世界のあちこちにノコノコ出かけて、現地でのいろんな状況がそれなりに把握できるのは、Nさんのような方がいらっしゃるからです。特にヴィーンは、オペラも、ムジークフェラインも、コンツェルトハウスも、シェーンベルク・センターも、ハウス・デア・ムジークも、ドブリンガー楽譜店も、それから音楽院も、半径500メートルの輪っかに収まってしまうような空間だもの。狭いのは場所だけじゃなく、人も、情報も同様。

てなわけで、「こりゃどーしよーもない」ということが確認されたわけですね。そんなことが判っても何にもならんじゃないか、とお思いになるかもしれませんけど、ところがどっこい、「この演奏会はどうも普通じゃないぞ」という情報があるだけで、その後の動き方がまるで違ってくるわけです。

つまり、正面突破作戦しかない、という結論。

具体的には、並ぶ!

世の音楽ファンの皆様、ひとつ絶対に忘れてはならない格言があります。曰く、「明けない夜がないように、出てこない切符はない!」 うぉおおおおおお!

ホントは午後からずっとボックスオフィスの前に貼り付こうかとも思ったんだけど、さすがにせにゃならぬ作文仕事もあり、5時過ぎくらいに夕暮れの光に映えるムジークフェラインの横のUバーン線路をノコノコ歩き、コンツェルトハウスに向かったのでありました。写真の左手が楽友協会ホール、右手隅の白いドームみたいな建物がコンツェルトハウス。辛うじて1枚のショットに収まる距離。

さて、この公演、コンツェルトハウス主催ではありません。ですから、ボックスオフィスは、正面左手の通常のコンピューター端末が並ぶところではありません。正面ファサードのど真ん中に、警備室みたいなちっちゃなボックスがあります。それが、主催者用の当日売りボックス。
オケの警備員さんに「何時から当日券は出ますか」と尋ねると、「1時間前から出るけど、今日は少ないよ」と仰る。
でも、もう5時半なのに、まだ誰もおらんぞ。これがヴィーンなのか、それとも演目が演目だからなのか。スカラ座の当日並びなんて、朝から異常な熱気なのに。なんにせよ、その瞬間に、本日の勝利を確信したたびのみそらのやくぺん先生でありました。わおおお。

ボックスオフィス横に陣取り、某教育雑誌用の原稿下書きをノートにあれこれと下書きしながら、待つこと1時間。6時頃に太った怪しいおっちゃんがウロウロし始める。6時10分くらいに、オバチャンが「ここがミサの当日券か」と隣に並ぶ。遅れてきたじーちゃんに、「ヴァレンタインデーのプレゼントよぉ」なんて嬌声を揚げて真っ赤はハートのちいちゃなステッカーを差し上げてます。チョコじゃないんだなぁ。
目の前を次々とスタッフが入る。怪しい奴らが多いなぁ、今日は。テルツ少年合唱団の子供らがバスで到着し、ぞろぞろと入っていく。明らかに評論からしき偉そうなオッサンが、楽団員に付き添われて出てくる。
ジャーナリストの商売は、9割までが待つことと視ること。その意味で、猛烈に勉強になる時間。

6時20分くらいに、ヴァイオリンケースを持ったおねーさんが登場。あれぇ、と思って眺めていたら、おもむろにケースを開けて、中からポスターと必要なチケット販売用機材、それにプリントアウトされた実券、封筒に入った予約券などを取り出す。おお、確かにこういうものを持ち運ぶのにヴァイオリンケースは最高だなぁ。いやはや。この場所です。今後、お並びの皆様の参考までに。

で、まずはチケットを買うのではなく受け取るだけらしいオバチャンとオッサンの微笑ましき熟年ラバーズをお先に処理させてあげて(うううん、わしゃ紳士だ)、おもむろに「チケットありますか」。勿論、ということで、ともかく値段も訊かずに一番上のを貰いましたね。数が少ない当日券はグチャグチャ言うよりも、ともかく切符を手にすることが先。お値段は23ユーロ60セント。なんか凄く中途半端だけど、税金の関係かしら。
で、問題の席は…おおお、オルガンの左隣一列目。よーするに、サントリーホールで言えば、Pブロック1列目のど真ん中!バランスもへったくれもあったもんじゃない。
上手客席奥までずーっと進み、裏口のような階段をグルグル登り、オルガンの真横の仮設席に座ると…目の前にティンパニーとドラム。電子キーボードが2台置いてあります。なにやら上空は様々な色のライトが乱舞しています。合唱団が入ってくると、おねえさんの頭を蹴りそう。四声のピアノ譜に自分の歌うパートに記が付けてあるのを肩越しに覗き込むよう。

かくて、優男クリスチャン・ヤルヴィ指揮するヴィーン・トーンキュンストラー管、シネ・ノミネ合唱団、テルツ少年合唱団、カンパニー・オヴ・ミュージック、そして主役の牧師役を見事に務めた(後ろからなので声はわからんぞ)ランダル・スカラータらによる、レナード・バーンスタイン作曲「ミサ曲」演奏が壮絶に始まったのであった。

曲に付いての感想は、「現代音楽」カテゴリーにします。もう出かけなきゃ。

実演でないと絶対に判らないこの曲、感想を一言だけ。
「バーンスタインさん、あなたのお気持ちはよおーぉく判った。だけど、この曲、あなたが亡くなってから15年もたってから、あなたを愛したヴィーンの人たちが演奏すると思って書いてなかったでしょ!」

以下、次回を待てっ。←ないかもしれないけど。


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kawa

多摩県在住のサポータです。(でわかります?)
実は、こそこそ読んでます。
いいな。バーンスタインのミサのライブ…とはいえ、私は、CDを聞いてみて、なんじゃこりゃということで、最後まで聞いたためしなく…。もう一度、CDで聴いてみます。
by kawa (2006-02-17 21:40) 

Yakupen

今、グラーツ音楽大学の有線ランに入り込んでます。これから2日目午後のセッション。ご無沙汰です。
あの曲、ホント、CDやレコードでは、あほらしくて全部聴いてるのが辛いですわなぁ。でも、日本でやるのはちょっとしんどいでしょう。映像があればまだいいんですけどね。
ちゅーわけで、来週のクスQには戻ります。ではでは。
by Yakupen (2006-02-17 22:50) 

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