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セメリンク越え [たびの空]

セメリンク峠越え、という言葉に心が震えたなら、あなたは立派な鉄道オタクです。

碓氷峠越えの信越本線、上越線の土合やら土樽駅、山形新幹線に隠れた峠駅。そして、かのセメリンク峠。

まだ真夜中の朝6時前に小雨のヴィーン南駅を出発したオーストリア国鉄EC157ザグレブ号は、ヴィーン郊外を抜け、1時間ほどでセメリンク越えにかかる。
右に左に、小さなカーブを重ねて、短いトンネルを抜けて、で、えいっとばかりに長いトンネルへ。世界のどこでも同じ、山越えの道だ。標準規なんで、JRみたいに頑張っている感じがしないのは、なんとも頼もしい。

谷間にかけられたたかーい石積アーチの鉄橋群が、鉄道遺産として世界で始めて世界遺産に登録された事実は、てつお君なら誰でも知ってることなのであーる。
だけど、30センチ以上も積もる雪の中を抜けていく車窓からは、残念ながら、我がザグレブ号が雪のアルプス南端を背景に石積アーチの上を駆け抜ける勇姿は、まるで見えません。当たり前ですけど。碓氷峠の鉄道遺産が、信越線のこの区間が廃止になった今こそ、秋の紅葉に埋もれた自然と文化のせめぎ合いの美を顕わにしているのと同じ。

イタリアを席捲した若きナポレオンが、帝都ヴィーンに進軍せんと試みてならなかったこの峠を、ガラガラのザグレブ号が、日々のお仕事で走り抜けていく。

半年ほど前、ヴィーンからボローニャへとこの路を抜けたときは、夏の光の中。一緒のコンパートメントになったロサンジェルスの物理学者の卵、「東京ディズニーランドで王子様のアルバイトのオーディションに受かったんだけど、大学が決まったんでいかなかった」と、行ったこともない東京をさかんに懐かしがっていた妙な奴だった。今はちゃんと大学に通ってるのかな。

車窓にて 笹子なつかし セメリンク

分水嶺を越え、加速しながら、グラーツへの分岐駅、ブルック・アン・デ・ムーアに向かってます。あと1時間ほどでグラーツ中央駅。ザグレブまでは、その先まだ4時間。


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