ギュンター・ビアラス作曲俳句集Ⅱ第4番「春の雨」

日曜の日も落ちて、静かなグラーツ音楽大学旧館入口ホール勝手にプレスルームです。南オーストリアの街は、日曜の夕方6時過ぎは、ホントに何にもない静けさ。もうすぐ追い出されそうだなぁ。

本日は作文デーの筈でしたが、どういうわけか、歌手とピアノのデュオ部門をタップリ聴いてしまいました。いやぁ、滅茶苦茶面白かった。勉強になったなぁ。スイマセン、S編集者様。ちゃんと書きますから、信用してちょ。

なにせ、シューベルトを2曲くらいやって、あとはみんな現代歌曲です。ピアノの中に手を突っ込むは、なんか挟むは、はてはマイク持ち出して中の音をアンプで拡大するは…このコンクールが「歌手」部門じゃなくて「歌手とピアノ」部門になってるのはよーくわかります。これ、単なる伴奏じゃなくて、いわゆる現代音楽の特殊奏法がひとわたりやれんとダメだもん。

一番笑えた曲は、ギュンター・ビアラスGunter Bialas（ウムラウト落ちてます）作曲になる、俳句集Ⅱから第4曲「春の雨（Fruhlingsregen）」でございまいたね。バリトン歌手がピアノに向かってなんかゴソゴソやったかと思ったら、その前のフォルトナーの曲でまともな音がしていたピアノが、ちゃらちゃらまるで調弦されてないチェンバロみたいな音になった。で、ちゃんちゃらちゃんちゃら響く上を、バリトンさんが「はるのあめぇえ、はるのあめぇ…」と早口で繰り返し（あ、もちろん、ふりゅーりんくすれーげん、ふりゅーりんくすれーげん…ですけど）、瞬く間にお終い。なんか聴衆はあっけにとられておしまい。
でも、俳句のある種の馬鹿さ加減はなんとも素っ頓狂に表現してくれていて、矢立抱えたへっぽこ狂歌師やくぺん先生としては、おおいに刺激されたのであった。この曲集、全部聴いてみたいなぁ。

♪ああはるのあめぇ、はるのあめぇ、ちゃらちゃらじゃんじゃん…

ちょっとは真面目な話をすれば、よーするにドイツ語圏には「現代新作オペラ」の広大にして大きな市場が広がってるんですね。ヴォツェックやらルルやら、はたまたリア王やら、こういう声楽曲を勉強することによってレパートリーにしていけるようなオペラの大きな役がいっぱいある。だから学生も勉強するわけですね。
日本では殆ど紹介されない世界で、それこそ関心があるのは、今、サバティカル・イヤーでベルリンにいらっしゃるちょーき先生とか、ネット上の音楽言論界でも特定の一部の方くらいなもんで、CDも国内盤は出るはずないし（出しても数十枚も売れないだろうなぁ）、ドイツで勉強した歌手が帰国して、ドイツ文化会館ホールかなんかで開くリサイタルでちょこっとやるくらいでしょう。ですから、この類のレパートリーにゴッソリ生で触れられた本日は、とおっっても勉強になった。人生、オッサンになってもまだまだ勉強することは多い。

せっかくですから、本日小生が聴いたシューベルト以外の作品を、聴いた順番にざーーーっと列挙しましょう。ダラピッコラは間に合いませんでした。

ライマン：「我汝を謳わん」（ヘルダーリンに拠る）
ウルマン：ルイス・ラーヴェの６つのソネット作品３４より
プーランク：フランス語でわからんなにやら第1番から第3番
シェーンベルク：４つの歌作品２より第1番、第2番
バーバー：ハーミット・ソングズ作品２９より第3番、第4番
フォルトナー：ヘルダーリンによる4つの歌より第1番
リーム：ヘルダーリン断章
ヒンデミット：ヘルダーリンの詩による６つの歌曲より第1番
フォルトナー：シェークスピアの歌第2番
ビアラス：「春の雨」
ウルマン：３つの歌より
クリストフ・ブレイデラー：眠りの歌
プーランク：フランス語なので判らん歌
ロベルト・ヘップナー：エズラ・パウンドによる４つの歌より
ジョージ・クラム：アパレーション第１番、第2番、第3番
ヒンデミット：コックスによる2つの歌より
バーンスタイン：美味しいお食事（フランス語なんで判らんわい）
リーム：口紅（赤？）第2番
アイスラー：ヘルダーリン断章より
シェーンベルク：作品６の４

というわけでした。これに、シューベルトの有名曲がチョコチョコ入ります。それにしても、こうしてみると、ヘルダーリンが大人気ですねぇ。なんせ明日の弦楽四重奏本選も、メインは「ヘルダーリン断章～ディオティマへ」ですもの。

もう学校の警備員さんに追い出される。では、今日はこれでオシマイ。

追記：帰国後の2月23日、クスQのインタビューのついでに、Bialasをなんて読むのか、発音してもらいました。最初はこのブログ記事では「バイアラス」と記していたんだけど、「ビアラシュ」か「ビアラス」であろう、とのこと。ハンガリー系ドイツ人だろうとのことです。名前は知ってるみたいでした。というわけで、タイトル以下、修正しておきます。