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グラーツの動物たち [たびの空]

日曜日の朝、10時前。今日は弦楽四重奏部門はお休みだが、ピアノ・トリオ部門はまだ1次予選をやってるし、歌はやっと2次予選が始まるところ。で、もうすぐ各セッションのスタートです。
ピアノ・トリオ部門の1次では、みんな弾かなきゃいけないシューベルトの断片楽章がひとつ。それともう1曲、自分らで選べる20世紀のピアノ・トリオ作品。でも、なんのことはない、今日弾く連中はどいつらも、ショスタコーヴィチの最近発見されたアヴァンギャルド系初期のトリオを選んでますね。

このコンクール、シューベルト&現代音楽がテーマ。とはいえ、歌はともかく、クァルテットとトリオに関しては、ショスタコーヴィチやラヴェルなどという逃げ道が用意されている。そのあたりをどう考えるか、弾く方も審査する方も、なかなか難しいところ。
なんにせよ、今日明日のどっかでコンクールの総合監督さんに短いインタビューが出来そう。そこで尋ねてみるしかあるまいなぁ。明日のクァルテットの本選だって、ひとつの団体はショスタコだもんねぇ。ショスタコとノーノでは、演目だけで審査員がどっちを上にしたいか決まっちゃうわなぁ。

                            ※

というよーな商売の話は今日はもうお終い。教会には行かないけどあちこちから鐘の音が響く旧市街、飛び交うちょまこい神の使者達のお話でもしましょーか。ホントは原稿やらにゃならんのだが、大学旧校舎の入口ホールをプレス室に陣取って、ネットに繋げてアホなことしてます。

この音楽大学、ヨーロッパ世界をトルコから守る最東端の出城だった城山を中心に造られた旧市街の城壁のすぐ外。西側をムーア川が守り、その反対の西側の台地の方にある。当然ながら、旧市街と昔の城外(今はまるっきり町中ですけど)の間には、ハプスブルグの軍隊が集まったり、城を取り囲むトルコ軍がキャンプを張ったりした空き地が広がっている。ヴィーンならリンクになってる部分で、それこそヴィーンならアン・デア・ヴィーン劇場のような位置に音楽大学があるわけだ。

で、旧市街のドーム足下の宿からここまで来るわずか数百メートル、徒歩5分ほどの間には、かつての物騒な空き地が転じた公園を横切らねばならぬ。

その公園が、動物に満ちているんですね。

まずは、犬。
グラーツという都市は、ペンション・シュタットだそうな。よーするに、ご隠居が老後を過ごす古都だそうです。南の方だし、静かだし。ちょうどドイツならミュンヘンと同じですね。
その結果(なんだろうが)、公園には犬を連れたじいちゃんばーちゃんがすごく沢山いる。この犬というのが、東京の飼い犬なんぞとは訳が違う。もう殆ど熊みたいな奴を、昔はあんたは軍隊か、というような感じの爺ちゃんが連れて歩いている。どういうわけか、ひもを付けていない人が多いぞ。で、犬同士も結構好きに吼え合ったりしている。

さて、その上空を飛び交うのが鳥たち。グラーツ旧市街の鳥たちは、大きく分けて3種類です。

まず、公園の主役は四十雀くんです。東京の四十雀よりもちょっと大きいかしら。なによりも、お腹が白じゃなくて黄色っぽい。ハプスブルグの旧都は黄色い壁面の建築物で溢れてるけど(グラーツ音楽大学もそう)、四十雀の腹まで黄色いのかぁ。下左。
  
大学の構内に山のようにいるのは、ちいちゃな雀たち。上右。もうこれは東京の雀まんまです。NYの雀のようにでかくて下品ではありません。流石、古都のおとりさまですな。弦楽四重奏のセッションが続く大学旧館の前には連中のための食い物がつるしてあり、もうゴミのように群れてます。旧館入り口の獅子の彫り物に入り込んでピーチク五月蠅い輩がひとつ。よーくご覧あれ。

鳴くに飽き 獅子の威を借る のらすずめ

四十雀や雀らの喧嘩相手は、これまたどこも同じ、ムクドリ系。それから、体が半分に折れたみたいに派手に尻尾を動かすツグミ系。これ、なんちゅー奴じゃろか。下左。
  
さらにもうひとつ。この街には、カラスというか、カケス系がいます。上右。銀座のカラスみたいにバカでかいヤクザじゃなく、いわゆる昔ながらの品の良い大きさの山烏。
あ、鳩を忘れてた。でも、鳩の本拠地は石に覆われた旧市街のプラッツみたい。公園上空を盛んに飛翔するけど、地べたにはあんまりいない。

ついでながら、どうやらグラーツ上空はアルプス南端を越えてバルカン半島やトルコに向かう定期航空路の真下にあたっているらしく、2月というのに妙にイースターの頃みたいに暖かいこの数日、飛行機雲を弾きながら機械鳥たちが遙か上空を跋扈しております。

ボスニア紛争の頃は、オックスフォード郊外のアメリカ戦略空軍の部隊がいる基地から飛び立ったステルス爆撃機が、フランクフルト空港にゴロゴロしている米軍の空中給油機からアルプスを越えた辺りで給油を受け、爆弾を落としに通っていたという。グラーツを州都とするシュタイアーマルク地方なんて、戦争の通り道だったんだろうなぁ。

ここはいまでも、ハプスブルグの南端の街。1次でサヨナラだったけど、コンクール参加団体にはセルビア&モンテネグロの弦楽四重奏団もいたっけ。

おっと、話を平和な地べたに戻しましょ。
上の方に写真を載せた旧城壁外の公園、北米だったらもう栗鼠が走り回って団栗拾いまくるような場所なんだけど、カラス軍団が制空権を握っているためか、はたまた巨大にして豊かな生活をお送りになられているお犬様がいらっしゃるからか、栗鼠どもは全然見あたりませんでした。
ところが、なんと昨日昼、常連となった中華料屋で厚揚げのあんかけご飯を喰って、午後のセッション前に四十雀でも眺めるか、と公園に向かったら…目の前を、真っ黒い栗鼠がのこのこ横切った。
大きさは、北米の「くれくれ、えさくれ、わしにくれぇ」というような栗鼠より小さく、ロッキー山脈にいる人気者のシマリスよりは大きい。だけど、全然可愛くない。なんかすごく生活に疲れた感じだったなぁ。その後、地面を眺めていても、姿を顕しません。夜行性なのかしら。
追記:下の写真は最終日月曜日の朝、コンクール事務所に向かう道すがら、最後の挨拶に出てきてくれたグラーツ栗鼠君。完璧な保護色!

グラーツでは、栗鼠は自然界のヒェーラルキーの底辺にいるようだ。

さて、歌のセッションに行こうか。ダラピッコラとシューベルトとベルクだし。


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