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CD全部売り切れました [こしのくに音楽祭]

昨晩、富山県民プラザアンサンブルホールで、「こしのくに音楽祭」初日の「里帰りコンサート」が行われました。体調不良でギリギリまで心配だったゴールドベルク山根美代子夫人も無事に舞台に登場、ニックとのデュオを披露しました。和声面を強調したドビュッシーや、アンコールのクライスラーは、もうこの方ならではの世界。ニックも男爵の力に万全の信頼を寄せ、一歩も二歩も踏み込んだ無茶とも思える表現をするんだけど、それにしっかり楽器が応えてくれる。
皮肉でも冗談でもなく嬉しかったのは、未亡人やスタッフの気持ちがどうあれ、このコンサートの中身が、決して「15年前のこの場所での演奏会の再現」ではなかったこと。なにせ小生、この会場に足を踏み入れるのは正にあの最期のゴールドベルクのリサイタル以来。でも、懐かしいとかなんとかじゃなく、ここにあったのはニコラス・キッチンとゴールドベルク山根美代子のデュオだった。トリビュートではあっても、単なるメモリアルではなかった。

過去は過去、今は今。それでいい。舞台下手に据えられ、弟子と未亡人をずっと眺めていた巨大な翁のポートレートも、そう言っていたんじゃないかな。舞台の様子は、いつもお世話になりますの北日本放送のページでちょっとだけ見物できます。ほれ。http://www2.knb.ne.jp/news/20060909_8447.htm

                              ※

中身は中身として、やくぺん先生的には世界に薄く広く偏在するシモン・ゴールドベルク愛好家の皆様が指をくわえて悔しがるような話をするだけにしましょ。

昨日、会場ロビーで、ゴールドベルクのCDが販売されていました。そんなもの、ルプーとのデュオくらいしかなかんべぇ、あとはクラウスとの復刻盤でしょ…なんて思うでしょ、そこのあなた。

ところがどっこい、この状況を視よ、そして、震え上がれっ、世界中のマニアどもおおおおお!

ご覧の通り、あの幻の「シモン・ゴールドベルク・メモリアルファンドCD作成実行委員会」の手になるMemorial CD series、それも今やまず手に入らない(そもそもちゃんと売られてはいないんだけど)、オークションの世界ではとてつもない値段で取引されている、あのオランダ室内管との様々なライブや、バロン・ヴィッタが真価を発揮しているクーベリック指揮コンセルトヘボウ管1960年ライブのベルクの協奏曲、あのフィリップスが復刻した隠れた名盤のバッハ選集、それどころか、当ブログでお馴染みクァルテット博士幸松氏をプロデューサーに1991年リサイタル後にこの場所で録音された翁最期の録音までさりげなく4枚もあるではないかあああああああ!

今から財布ひっつかんで富山に飛んでこようとしている方もいらっしゃるでありましょーが、残念ながら、これらのCD、もう、ありません。昨晩の演奏会で、ほぼ全部売れちゃいました。残ってるのは、今でも普通に手に入る1953年のストラディヴァリウス「リーグニッツ」で弾いているブラームスのソナタ全集だけです。1991年の夫妻デュオは、これで地上に存在する最期の在庫が捌けたそうな。

というわけで、パブロフの犬たちに涎を出させるだけの、なんとも人の悪いご報告でありましたとさ。

これから今日は問題の3大楽器揃い踏み博物館コンサート。大混乱が予想され、スタッフはもう朝から行っています。どうなることやら。フェーン現象に吹きさらされ、今日も富山は燃えている!


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よしじゅん

パブロフの犬の一匹です(笑)。
メモリアルファンドのVol.1のベートーヴェンの協奏曲&挙げていらっしゃるクーベリックとのベルクの協奏曲が収録されているCDが手元にあります。数年前に某ネット・オークションで買い求めたものです。たまたまだったのか3000円くらいであまり高額ではなかったと記憶しています。もともとはミトロプーロスの指揮ということで求めたものですが。
改めて取り出すと、それぞれの使用楽器名まで書かれていてかなりマニアックで(笑)、翁の写真が多数掲載されているかなり貴重なものですね(大切にしよーっと)。今ベートーヴェンを聴いてますが、背筋を延ばしたくなるような端正な演奏ですね。
しっかしベルクはコンセルトヘボウの清掃係が天井裏で録音って…。他にもないのでしょか、この清掃係の手になる録音は???
by よしじゅん (2006-09-10 23:40) 

Yakupen

お久しぶりです。近衛本の書評、「音友」に書きましたので、立ち読みでもしてください。原稿用紙2枚という情けない量ですから、超辛口の紹介に過ぎませんけど。
さても、ゴールドベルクの録音についてはいろいろしゃべり出せばネタは限りないものの、この先意味がある情報。「こしのくに音楽祭」でこんなイベントがあります。

■セミナー特別レクチャー
シモン・ゴールドベルク新発見音源を聞く/音楽解釈と同時代史(仮題)
◆開催日: 2006年9月26日(火)19:00
◆会 場: 新川学びの森・天神山交流館 さくらホール(魚津市)
◆講 師: ゴールドベルク山根美代子
◆参加費: 無料
◆定 員: 先着80名

もう定員に達してるらしいけど、泣きつけばなんとかなるかも。とはいえ、明日のボロメーオQアウトリーチが終わるまで、オフィスに人はいませんが。
んで、このイベント、メモリアルファンドの復刻を行った方が、最近BBCのアルヒーフから発見されて未亡人のところに送られてきたエジンバラ音楽祭でのゴールドベルクによるメンデルスゾーンのホ短調協奏曲ライブをリマスターして下さって、それを未亡人がいろいろ話を交えながらかける、というものです。よーするに、ライブの「メモリアルCD」ですな。

あの幻のシリーズ、未亡人がお弟子さんやらと手持ちのものを私家盤として出してしまった、という極めて特殊なもので、どうして市場にちょっととはいえ流通したのか、そっちの方が不思議です。これ以上は語れない部分もありますが、ともかく世間に流通するブート盤のように「実は演奏者は別人」なんてことはありませんので、それだけはご安心を。
by Yakupen (2006-09-11 07:46) 

うずらさん

初めまして。貼ったURLの通り、私は二つをたまたまブックオフで500円で手に入れたのですが、恐ろしい音楽家ですね。
海外の非公式録音ボックスにかなり入っているようですが、彼の指揮の浄夜などが一般の人には聴けないのはもったいない。
私も今は彼は史上最高レベルのヴァイオリニストの一人だったと信じています

by うずらさん (2014-12-02 09:56) 

Yakupen

うずら様

ゴールドベルク氏の《浄夜》は、実質上、ゴールドベルク編曲版です。今は藝大のアルヒーフに収められ、誰にでも楽譜は見られるようになった筈です。スゴイ世の中になりました。
by Yakupen (2014-12-02 10:06) 

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