SSブログ

能オペラ [音楽業界]

「音楽業界」か「現代音楽」か、カテゴリー分けに悩むネタだけど、ま、今の流れから「音楽業界」にしておきましょ。

さても、昨日来、我が家では「トーキョーワンダーサイト」で盛り上がってます。なんせ、うちの奥さんの数年前の不可思議な出会い以来、あそこはなんだんだろーねー、とそれなり折に触れては話題になっていた場所だし(本郷の山が小石川や三崎町に向けて落ちる能楽堂の上辺りというのは、佃に到るまでは3年に一度は引っ越していた我が家では蟄居先としていつも可能性が探られた場所で、正にそこにこの「ワンダーサイト」っちゅー奇っ怪なものがいきなり出来たわけです)、指定管理であちこちのホールや財団を追われた裏方のプロ連中を捕まえては「あのわけのわからんワンダーサイトっちゅところに就職して、内部事情を教えてちょ」と冗談とも本気ともつかぬことを繰り返していた。ちょっと前にもの凄く虫の良い条件で人を求めてましたからね。みんな「あそこだけはイヤだ」と怯んでいたのは、今となっては、やはり意味があったのだなー。

それが、一気にこんな世間の注目を浴びる場所になったんだから、もー愛する万年最下位球団がいきなり優勝して急に世間が騒いでくれているような感じで、嬉しいなぁ。イシハラ知事、ホントにありがとーございます。

さても、こうなると気になるのは、イシハラ知事が11月24日の定例記者会見で盛んに繰り返していた「能オペラ」であーる。なんじゃこりゃ。数年前に、そんな話を聞いたような気もするが、その後どうなってるか知らんなぁ。記者会見の内容はこちら。都民の公僕たる都知事発言は全都民の公共財産ですから、貼り付けてもなんの問題もありません。ある方のブログにあった、日本テレビ記者のメモというものから引用させていただきます。http://d.hatena.ne.jp/nsw2072/20061127

「彼(延啓)はね、慶応を卒業した後、ニューヨークのパーシモンっていうのかなぁ、それだけに飽きたらずスクール・オブ・ファイン・アートというカレッジを出ましてね。ヨーロッパのことは彼にも責任があるのかなぁ、細川君という知り合いがいて能オペラをやりたいと言い出してね、私がシナリオを書いたのだけれども、とても普通でない契約をしたいといいだしたものだから、それを始末するために企画者であるワンダーサイトの嘱託として行ったんですよ。他に細川君とインティメイトな関係を持っている人がいるのかいないのか知らないけれど、それをプロデューサーのひとりである息子が調整するしかないだろう。分からない?私の四男だという前に芸術家としての人格だってあるわけだし、今村君の奥さんだって、顔は広いし、語学は達者だし、だからご亭主が主催者でいるんだからいいじゃないの。問題があるならば事務局が異論を出せばいいわけでしょ。ちゃんとした手続きをしているから問題はないし、事務局に聞いてくれ。息子だといったって立派な芸術家ですよ。随分ただで働いて貰いましたよ。僕はメディアの姿勢は問題あると思うよ。共産党は陳謝したんでしょ?こういう仕組みに乗ったか乗せられたか知らないが、各社はほとんど好意的に受け止めたかどうか知らないけれど、こういう仕組みには乗らない方がいいんじゃないの。肝心の共産党都議会議員が情報操作したと陳謝しているのに、各マスコミはこんな姿勢でいいのか。都の職員だってあなた方マスコミを信頼しなくなるよ。(石原都知事定例記者会見2006年11月24日より)」

不安神経症を他者への攻撃でカバーする典型例として、臨床内科の方が大喜びしそうな発言ですね。ルドルフ大帝のゴールデンバウム朝統治下じゃあないんだから、こういう些か問題ある方が知事に立候補してはいけないという法律はないけど、我々都民もスゴイ選択してますなぁ、いやはや。

もとい。で、ここに繰り返されている「細川君」というのは誰じゃらほい。ま、ゲンダイオンガク関係に少しでも知識がおありの方なら、あああああ、とお思いになる名前があるので、そちらをぐぐってみると、やっぱりありました。御本人が「作曲家細川俊夫NEWS」というホームページ上の日記で、しっかりお書きになってます。武生音楽祭取材でお世話になった細川さんも一種の公人ですし、御本人がこうやって堂々とお書きになってるものですから、引用しても問題ないでしょ。http://www.necsoft.com/takefu/hosokawa/news.htm
「来年2004年は2つのオペラの初演があります。ひとつは現在作曲中の石原慎太郎さんが書いてくださった能オペラ「古く剣」(原文ママ、正確には「古き剣」)。これは東京と、パリの秋、ベルリン芸術週間、ケルンフィルハーモニー、クラングシュプーレン音楽祭の共同プロジェクトになります。武生国際音楽祭でも、2004年にコンサートヴァージョンで上演する計画があります。そしてもうひとつがこのエクス・アン・プロヴァンスの三島の「班女」です。2003年はオペラの作曲の年になります。
ブリュッセルからパリへ。パリでは来年秋に予定されている「パリの秋」音楽祭での能オペラ「古く剣」の打ち合わせです。
アンサンブル・ルシェルシュが演奏会のためにパリに来ていて、日本からはこのオペラの制作をしている東京ワンダーサイトの館長さんたち、4人が来ました。そして重要な打ち合わせをしました。この能オペラについては、再び詳しく書きます。(細川俊夫2003年5月10日分)」

なるほど、この頃に動いていた話なのね。正にうちの奥さんがパシフィカQのカーター全曲演奏会の企画をトーキョーワンダーサイトに持ち込んで、「こんなの持ってくるな」と突き返された頃の話なんね。この細川さんのページを下にスクロールすると、イシハラ都知事の連載をやってるシンパメディア、サンケイ系の「モストリー・クラシック」に、都知事が2002年12月6日定例記者会見でこの話をしてる記事も出てます。

「12月15日分 == 石原慎太郎東京都知事とオペラを製作!! ==
 石原慎太郎東京都知事は6日の定例記者会見で、来年春に作曲家の細川俊夫氏と協力して、能を題材としたオペラを製作すると発表した。具体的構想については、「企業秘密だもの」とかわしたが、きっかけは細川氏側から「能をオペラにしたい」と話があったことだという。
細川氏と12月25日に東京で会食して「ゆっくり2人の構想をぶつけ合う予定」にしており、来年春ごろにヨーロッパで上演した後で、日本で上演される可能性があるという。
 会見で石原都知事は、「ジョン・ケージなんか分かりやすくなってきて、海のとどろきとか林を動かす梢声(しょうせい)など、そういうものをとても上手く象徴的に表すんだなあ・・・。細川さんの音楽は特に面白い」と現代音楽観を語ったほか、「三島由紀夫さんの有名な「近代能楽集」という現代劇としての能がありますけれども、やっぱり能のようなオペラっていうのはまだない」と”能のオペラ”の新味を強調した。
 来春に行われる「知事選」との関係を質問され、「そんなものは関係ない。出るかでないか分からないものあてにして、オペラが狂ってきたら困るもの。キャンペーンに使うつもりはございません」とバッサリ斬り捨てたものの、「まあ都知事になって久しぶりに胸のときめく仕事でね。こういう話でもないと知事なんてやっていられないなあ」とご満悦。」
      --- モーストリー・クラシック2003年1月号より抜粋 --- (作曲家細川俊夫NEWSより)

ちなみに、その後の経緯としましては、メセナ協議会のホームページに2003年認定事業として以下の情報が上げられています。その後も細川さんの続報がないので、中止になったわけですな。
新作オペラの制作が中止になるなんてのは、それこそ日常茶飯事で、それ自体はどうってことない。ただ、使っちゃったお金に関し、プロデューサーが財団なり運営委員会で責任を追及されるだけ。ちゃんと責任が取られたのか、どのくらい都の金が使われたのか、メディアが追求する必要があるのはそこでしょう。イシハラ知事は台本作家に過ぎないから、まるで責任問題には関係ない。脚本料は持ち出しになってそうだから、中止騒動の被害者かもしれないぞ。
「●……能オペラ「古き剣」-中止-
能オペラ実行委員会〔音楽〕
時期 2004年2月12日~13日
場所 東京芸術劇場・大ホール(東京都)
本オペラ作品は、日本固有の美学と精神性の結晶である古典芸能「能」と、西欧の美術・音楽・文学・演劇・身体芸術の総集体である総合芸術「オペラ」を合体するもので、新しいオペラの世界を創出し、東京から世界に向けて発信する。作曲:細川俊夫、演奏:アンサンブル・ルシェルシュ、歌手:幕内智子他3名、コーラス:本島阿佐子他5名。 」

オペラの経緯がどうあれ、「余人をもって代え難い」と都知事がご自分の四男さんに付けられた形容詞は、エリオット・カーターやら細川俊夫クラスじゃあないと説得力はない。言葉を扱うプロとしてのイシハラシンタローさんは、そんな基本を忘れちゃったのでしょーかねぇ。ま、これが親バカという人類に普遍的な現象なのか。いやはや。

というわけで、能オペラについて、誰でも調べられる情報でした。どなかた、石原慎太郎作能オペラ「古き剣」のリブレットをご存じの方、情報下さい。どこかに連載された、とか。存在すれば、いかにも
「文春」系の文芸雑誌などに鳴り物入りで掲載しそうですよねぇ。リブレットとしてどの程度のレベルのものか、是非とも知りたいですな。能オペラに限りなく近い「リアの物語」と比べてどうなんだろう。能でオペラをやるなら、申し訳ないけど世界文学史的には一介のローカル大衆文学者に過ぎない石原慎太郎氏の新作よりも、イェーツの「鷹の井戸」でも真っ正面からオペラ化した方が、細川氏のためになると思うんだけど、ま、それはそれ。


nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 1

NO NAME

脚本料は「ただ働き」とか言いながらしっかり予算化されてたようですね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061228-00000101-yom-soci

しかし…一方的な言説によって細川さん側だけが悪者であるかのように決めつけられてしまう様子を見るにつけ、つくづく自己弁護に終始し幼児性の抜けない知事閣下の精神年齢に思いを馳せてしまいますな。
by NO NAME (2006-12-28 17:06) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0