SSブログ

戦後が終わろうとしている街~ハノイのクリスマス2題 [たびの空]

クリスマスイブは日曜日。ハノイ音楽院は電気も通っておらず、水も出ない。学校のカフェテリアもないから、ランチはどっかに行かにゃならぬ。ハノイのクァルテット嬢らはみんな自分らのスクーターに相乗り、MIDORI楽団は13000ドンなりタクシーを奮発し、賑わう午後の学校裏繁華街へ。

学校の前では広い道を造っている。100メートルも北に向えば、建設中の通りはどん詰まり。もう河とは呼べない断ち切られた水の流れがあり、お馴染みの4階建て縦長屋が小さな湖を囲んでいる。そう、ハノイは、大河が出会う沼地が干拓された湿っぽい街。

水も見えぬほど緑でいっぱいの湖面にボートを浮かべ、ふたりのヴェトナム傘を被ったオバチャンが水中に植わる何かを刈り取っている。蓮根畑、かしら。
手前には道を崩した瓦礫が無造作に積み上げられ、池の向こうに広がるハノイ新開地風景の上に、ガラス様式21世紀建築のRaddisonHotelがキラキラ光ってる。『地球の歩き方』の地図には出てない水たまり。

この風景、数年後にはないだろう。2006年クリスマスイブの午後、若いパパとママの間に挟まってスクーターで疾走してる子供は、「ガキの頃に見た昔のハノイ風景」として、こんな絵を脳裏に焼き付けていく。そして、自分のガキにこういうのだ、「とうさんがお前くらいの頃、音楽学校の手前の辺りにはまだ池があってな、冬でも一面の緑だったもんだ…」

おんなじよーな風景の消え方を散々に眺めてきたTOKYOのオッサンには、それだけは分かるのさ。

水面みな みどりに揺れる クリスマス

                             ※

日も暮れて、練習に疲れ、Midori楽団もちょっと休みにしましょうか。さっきのランチの帰り道、沼の畔の露天で買ったろくに味のない巨大柑橘類を必死に剥いて喰らっていると、開けた窓の外から聞こえてくるのは、「もどびとこぞりて」の陽気な響き。
校庭を見おろせば、音楽院入口横に数名の学生がたむろし、ギター、ヴァイオリンをかき鳴らし、声楽学生がクリスマスソングを歌っている。
"I wish you a Merry Christmas.…"、"Joy to the world…"、次から次へとみんなが知ってるメドレー。寄宿舎学生たちなんだろうか、ヴァイオリンがオブリガート、ギターが合いの手を入れ、アルトがリードして和声を作りながら、踊って、歌って。
練習が終わった友達でも待って、みんなで食事にでもいくのかな。音楽院の校庭で、音楽学生たちが、自分たちの楽しみだけのために、いつまでも終わらないクリスマス・メドレー。

隣の部屋でミドリさんがさらってるバッハ、そのまた隣の部屋で小野・アンドリュー・辻本トリオが必死に合わせているシューベルト、校庭の隅でいつまでも続くクリスマスソングにオブリガートするヴァイオリン。どれもがみんなホントの音楽で、どれもがみんな違ってて…

Merry Christmas from Hanoi!


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1