五星紅旗と旭日旗

なんとかデュティユー関連の初稿を入れて、ちょっくら気分転換にでもいくべーかと、アドヴェントにもならぬのにすっかりクリスマス気分になっちゃってるトリトンスクエアの横抜けて、寒い運河沿いにチャリチャリと、晴海埠頭まで行って参りました。

今年は三の酉はなかった熊手フェスティバルも終わり、秋はもう土俵際ギリギリで踏みとどまってるだけの曇り空の午後、晴海通りがトリトン横で豊洲方面に曲がる交差点には、いつもと違う空気が漂ってるぞ。右折して埠頭に向かう両側には、警察車両が陣取り、遙か晴海大橋の上にも制服警官が点々と並んでら。

特になにをされるわけでもないけど、普段は際立ってノンビリした場所なだけに、何事かと思わされます。晴海大橋開通式典以来の警官の多さじゃないかしら。埠頭に向け、派手派手に塗りまくったホッピーの宣伝トラックが半ダースも行列してる空気読めなさが、あんまりにもシュール。

マリナーズコート東京車寄せ前のマンホールから、ジャンジャン水が湧き出し、道路が水浸しになってる。慌てて消防車が走って来るぞ。なんなんだ。

足下を気を付けながら、真っ正面の「東京オリンピックメインスタジアム予定地」巨大看板の向こうを眺めれば、いつもなら築地に納入までの時間つぶしをしてる長距離トラックやら、勤労時間をサボって寝込んでる外回り営業の車なんぞが並んでる豊洲に面したHLバースに沿った金網脇は全て赤いポールで接近不能とされ、最終コーナーを曲がった直線の入りっぱたには機動隊車両が突入する右翼共をいつでもブロックできるようにスタンバイしてる。その向こうに、おお、おるおるおる、そんなに強くはないけど充分冷たい北風に旭日旗を垂らすは、我らが日本海軍が誇る巡洋艦「いかづち」。そしてその奥には、「いかづち」よりもちょっと青白い制服に身を包み、ちょっと小柄な見慣れぬ形のクルーザー。あれぞ人民解放軍の誇る実験艦「シンセン」じゃよ、皆の衆。

後部ヘリ甲板にはいかにもソ連っぽいカモフが並んでるかと思ったら、あれあれ、消防庁の真っ赤っか塗装で中央区上空を年がら年中飛び回ってるお馴染みのドーファン中華版が座ってるじゃないの。←なにいってるかわかんなくても、気にしないように！

船体は妙に今風にカクカクしくていかにも「コンピューターでステルス設計やってます」って感じだし、中華風フランス製ヘリコプターの後ろにだらりと垂れてる五星紅旗がなければ、これが建軍以来初めて旧敵国首都の公式ポートを親善訪問している人民解放軍の船とは思えん。
せっかくだから、今や中華人民共和国国歌となり、来年の８月にはいやんなるほど聞けるであろー「義勇軍行進曲」でも聴いて景気づけましょ。短くてインパクトがある、世界の国家中でも名曲のひとつですね。ほれ。http://www.worldfolksong.com/anthem/lyrics/china.htm
「耳」という字を総計４つも積み上げる名前の作曲家さん、H先生の室内楽愛好会でお馴染みの鵠沼海岸で溺れ死んでるんですよねぇ。http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/shougai/page100072.shtml

警官と、ながああいレンズを一眼レフにくっつけた軍艦マニアの皆様と、何があろうが我関せずの鴎の大群と、寒そうに膨れた雀たちしかいない埠頭の向こうで、中日の水兵たちがなにやら動き回ってる。綱引き大会、という感じじゃあないけど、それにしても随分ウロウロしていること。ちなみに、韓国海軍の駆逐艦だろうが、インド海軍のフリゲート艦だろうが、はたまた我らが日本海軍の練習艦と給油艦がセットになった練習遠洋航海艦隊だろうが、いつでも軍艦の鼻っ先まで近寄れる東側デッキは、現在は完全に封鎖されております。「シンセン」の前にはジャパン・コストガードが停泊してるし、豊洲運河には小型警備艇が浮いてるし。

なんだか不思議な、なんとも落ち着かない妙なノンビリムードが漂う晴海埠頭。いつも通りなのは、早い夕暮れの光に騒々しい雀の群れと、そろそろ鴎やら鵜どもと張り合うくらいの数で編隊飛行をし始めてる鴨たちくらい。寒いからかえろぉー、ってオリンピック誘致看板が虚しい三叉路をノンビリとチャリチャリ転がしてると、あっち側に暇そうに立ってる警官くん、やくぺん先生に笛を吹いて言うよう、「赤ですから、停車してください。」てねぇ、車一台走ってないんですけど。その順法精神、防衛庁トップに見習わせないものじゃのぉ。

トリトン前の交差点のところで、銀座方面に向けて歩いてく私服の若いにーちゃん３人組を追い越したら、早口のピッチアクセントが耳に飛び込み、一瞬、工事中の香港スターフェリー桟橋裏の空気が漂う。
おおい、四丁目交差点向こうのマツモトキヨシで彼女に資生堂の化粧品でも買ってってやれよぉ、そっちじゃ高いんだからね。ほれ、勝ち鬨橋に向け、前进！ 前进！ 进！