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最先端でレトロな手売り [音楽業界]

昨日から東京湾岸のオフオフブロードウェイ、晴海第一生命ホールで始まった「SQフェスタ」、ひとつの団体が10日ほどの間に6公演全て違うプログラムを弾くという、空前のイベントです。
「一晩で××全曲」ってのは大流行の昨今ですが、異なる演奏会を連日違う演目で並べてある程度以上の水準を維持し続けるのが、室内楽、それも練習が猛烈に大変で年間レパートリーが2ダースあれば良い方の弦楽四重奏という文献ではいかに過酷なことか、お判りの方はお判りでありましょうぞ。ボロメーオQも、最初は「フェスティバルというのは、自分らがプログラミングはするけど弾くのは半分くらいで、あとはゲストが来るんだろう」と思ったそうな。ま、そう考えるのがふつー。大家の引退ツアーでも、若手のパワーでも不可能な、ホントの現役バリバリじゃないと出来ない無茶な企画でんがな。

弦楽四重奏のトライアスロン、昨日は古典派で、まずは陸上競技、というところかな。来週金曜日に控えた「アメリカ国会図書館所蔵のバルトーク第5番オリジナル自筆楽譜を後ろに投影しながらの同時演奏」というこれまた前代未聞のハイライト(ニックの最新兵器はこのために投入されましたhttp://yakupen.blog.so-net.ne.jp/archive/20080524)に向け、山あり渓谷ありの持久走はまだ始まったばかり。本日土曜日は午後6時から、去る月曜日に若者達で4回聴き、日曜日の大阪での不安定さから周囲が抱いた不安を一掃する充実の力演をピヒラー御大が木曜日に繰り広げてくれた、ベートーヴェン作品132が披露されます(それにしても8日間の間にこの曲をプロで8回聴くなんて、シューパンツィック氏が知ったら腰を抜かすでしょうねぇ)。

ところで昨日の演奏会にいらっしゃった数少ない皆様は、下のような簡易チラシが挟まれていたのをご覧になったことでありましょう。
ちらし小.jpg
読みにくい方は、文字をでっかくすれば少しは鮮明になる筈。

なんと、その日に演奏したステージのライヴを、演奏者が自分で録音し、自分でCDやDVD、果てはブルーレイに焼いて、いらっしゃった皆様に配布しましょう、というんですわ!

リビング・アルヒーフと題したボロメーオQのこんな活動、もう数年間も続いており、彼らのホームページにいくと、マニアさんなら腰を抜かすような突拍子もないモノもゾロゾロならんでました。http://www.borromeoquartet.org/

正直、商売になる規模のメディア産業とはほど遠い、文字通りの家内制手工業インディーズでありますけど、「グラモフォンがIMGからスタッフや演奏家をゴッソリ引き抜いて、メディア産業とマネージメント業界の融合統一を企てる」なんて最新の業界ニュースとは宇宙の対極にありながら、これもまた最先端の業界のあり方ではあります。

ちなみに日曜日にエクが弾くハウエルズの「ファンタジー」は、商業録音では現役盤は見あたりません。さて、どーするね、イギリス音楽ファンの音盤マニアの皆様!

《追記》
今、2日目のバルトーク6番と作品132という内容的にとてもへビーな演奏会を終えたヴィオラの元淵さんと、瞳ちゃんのおうちの裏あたりの焼鳥屋で飯喰って戻ってきました。そこで、このリビング・アルヒーフについて、ボロメーオQの社内の意見を聞いてみました。
まずなによりも、「ああ、出来が悪かったなぁ、という日の演奏はやっぱり後に残すのはイヤでしょ」とぶしつけな質問をしましたら、元淵さん曰く、「勿論そうだけど、そういう日の演奏はオーダーが入らないのよ」とのこと。なーるほど、聴衆は判っておりますなぁ。そういう聴衆への信頼がないと出来ないやり方なんだなぁ。
ちなみに、ベストセラーはゴリホフの「ユダヤの日記」を納めた演奏で、これはなんとゴリホフがご本人のホームページで推薦盤になさっているそうな。
いやぁ、やっぱり、時代は確実に変わってるぞ。「レコ芸」編集部、コマーシャル録音以外は取り上げない現在の基本方針で大丈夫なんだろーか。

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大阪の田中ちゃん

やくぺん先生お元気でお過ごしでしょうか?6月末にやっととれた5日間の休日を東京で友人たちと過ごすことにしました!さて、やくぺん先生のことですからもちろんご存知でしょうが、7月の頭にクスSQが東京でコンサートを行います。6月にチェロ奏者の変更があり(まだオフィシャルじゃないかも...)、でもこの日本ツアーは旧チェリストが行うというどういうことやねん!のコンサートですが、実は新チェリストが全く同じ時期にルツエルン交響楽団の招待副ソロとして日本ツアーをしているんです。まあ、クス入団が決まる前にもうこのオケのお仕事にサインいてしまっていたようなので、どうにもならなかったみたいです。この新チェリストは最高ですよ!今回はクスカルテットの中では聴けませんが、いつか機会があれば、コンサートにぜひ行ってくださいね!クスも彼の入団でかなり面白いカルテットになると思います!という訳でこの次はどこでやくぺん先生に会えるのかしら???

by 大阪の田中ちゃん (2008-06-01 06:58) 

Yakupen

おはようございます。今日は町会の「町内清掃デー」でこんなに早く起きてます。
クスQの来日は、セカンド君の結婚式のためです!…ってのは冗談ですけど。あたしもなんか結婚式で演説せにゃならんようで、今年は結婚式貧乏です。

まあ、メンバー交代はどこの弦楽四重奏会社でも仕方のないことですけど、今年のクスはなかなか大変ですね。結婚、出産、メンバー交代、って。そういう中でどういう風に自分らをマネージメントしていくか、というのが会社としての自力になるわけですから。なんとか乗り切って欲しい、ってか、乗り切ってくれないと困る。うん。

小生、今月24日にボローニャを出てから、27日にキールでアルバン・ベルクQの最終公演を見物に行くまで、実はどこにいるかまだはっきり決まってません。なんなんだ。パリ方面までは行きそうもないんですが、どっかでお会いできれば。EURO2008騒動に巻き込まれそうなんですけど。

by Yakupen (2008-06-01 07:39) 

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