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ミカエルといっしょに世界をまわろ [たびの空]

パリからシュトゥットガルトに向かう列車の中です。パリの東に広がるダラダラした平野がやっと尽き、右手に丘のような山の姿が見えてきました。DBやスイス国鉄が入り乱れるこの辺り、それこそ大昔から国境紛争が絶えなかった地域。アジアのオケに関する原稿を弄りながら、後ろ向きに引っ張られてます。
ICEじゃなくてTGV車輌の二等車なんで、電源はないは、狭いは。隣にはICEがいたんだけど、どこに向かうのかしら。白と赤ばかりのシュトゥットガルト中央駅に銀色に輝くTGVが滑り込んでくる姿は想像すると感動するんだけど、実際に乗ると、やっぱりTGVは新幹線の2等車並の居住性、ヨーロッパの優等列車の中では明らかに見劣りする。パソコン乗せるデスクが広いのだけが取り柄だなぁ。

カールスルーエ駅に到着。ここの音楽院にもいろんな奴らが来てるなぁ。知り合いがウロウロしてる辺りになってきた、妙なことは出気ぬ。ま、パリも同じだけどね。

昨日はちゃんと昼過ぎまで某音楽雑誌のためのまるでパリにもペンデレツキにも関係ない記事のアウトライン稿を作り、東京に送って、日が暮れないうちにミュージック・イン・ミュージアム原稿用の写真撮影をせねばと地下鉄乗り継いでアンヴァリッドまで行き、おお昼間だとエッフェル塔があんなに見えるのか、なんか大砲ばっかり並んでるなぁ、と寂しく暗いお化け屋敷みたいな夜の印象との違いにビックリ。ナポレオンの墓はフランスのお上りさんで溢れかえるけど、あああそうですか、としか言いようがない。武器博物館は人と馬の缶詰が無数に並んでいて、もう壮観とかよりも、滑稽としか言いようがない。

で、地下鉄でモンマルトルの方まで行き、えっちらおっちらと地下からの長い階段を上り、地上に出ても坂をよっとこしょと昇り、パリで唯一の葡萄畑から石畳の街に来て始めて臭った土の香りに驚き、ベルリオーズが「イタリアのハロルド」なんかを書いたときに住んでたという家の前に到着。だーれもいない夕方に、ただのプレートの前で感慨深げにしている謎のオッサンを訝しげに眺めつつ通り過ぎるオバチャンにご挨拶なんてしちゃってさ。
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で、ぐるりとまわれば、なんとそこは天下の観光地、モンマルトル教会ではないかっ。観光客が溢れかえってるなかを抜けて、サティの家のプレートの前で記念撮影をしようとしたら、急に電気がついて中からおにーちゃんが出て来てビックリさせてくれた。いかにもサティさんであります。なんだ、ベルリオーズさんちから坂上がって、最初の道を右に入った直ぐじゃないの…なんて思ったけど、2人が同じ時代にこの場所にいた訳じゃあない。旧跡佃厄編庵を訪ねた23世紀の若者が、なるほどやくぺん先生は坪内逍遙が小説を綴った場所から直ぐにいたのか、なあんて素っ頓狂なことを考えるよーなものであるわい。わーっはっはっは!

せっかくだから、ベルリオーズの墓がある墓地を橋で越えた向こうのベルリオーズ最期の家も見物しておこうと、バス通りをダラダラと坂を下るのだけど、もうすっかり暗くなったパリの下町の喧噪に、それらしき場所を発見できず。かわりに「ゾラが住んでました」ってプレートを撮影してまいりましたとさ。

慌てて地下鉄を乗り継いで戻ってきて、ガルニエの「フィデリオ」にも、バスチーユの「魔笛」(広すぎないかぁ)にも行かず、我が旅籠巴里から道渡ったシテ・ド・ラ・ムジーク行って、ケルンのムジーク・ファブリックなる若い現代アンサンブル(この団体、12月半ばには「第37回パリの秋芸術祭」の一部として「光からの木曜日」から第2幕ミカエルの世界旅行の抜粋なんぞやるようです、関心のある方はwww.festival-automne.comをご覧あれ)のトランペット君が、腰にパパゲーノみたいにミュートまいて、グルグル回ったり、"ごっと!"やら”ざい!”やら叫んだりする心温まるシュトックハウゼン道化を見物(シュトックハウゼン最晩年の弦楽三重奏は、普通の弦楽四重奏団でも演奏可能ななかなかの名娯楽作品でした)。「パリの秋芸術祭」参加公演、客はこれらの音楽と同時代を過ごした筋金入り前衛空きと、汚い格好の若者ばかり。隣の席のねーちゃんらと――週末はワルシャワでペンデレツキでさ、今日はこれでしょ、もー頭クルクル、「光」って日本の伝統楽器のアンサンブルがあるんだよねぇ、え、TOKIOだって全部はやってないよ、うちの街は市長が三流小説家でこんなの関心ないからヘリコプター飛ばせないもん、なぁんてバカ話してケラケラ笑って…
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そう、ゲンダイオンガクの空気は、やっぱりこーじゃなくちゃね。きっと、ベルリオーズはワルシャワのペンデレツキ祭にいらしたようなちゃんとした聴衆を怒りまくらせ、サティはあの時代なりのここにいるよな連中とつるんで暮らしてたんだろうなぁ。

今、シュトゥットガルト、到着です。冬のはしりの冷たい空気。

ミカエルの ラッパとふける 冬の旅

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