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ネタがない [売文稼業]

昨日、FujiTV Art Netというウェブマガジンに不定期連載しているMusic in Museumというシリーズの最新原稿がアップされました。ウェブだけど超大企業がやってる広報媒体ですから、ちゃんと担当編集者さんがいて、デザイナーさんがいてゲラが出て赤入れなどして、って調子。あとで書き換えたくても、あたしにゃ直せません。書き手側からすれば、雑誌とまるで同じ。双方向性は敢えて持たせず、パソコン画面上に貼り付けてあるプリーペーパーみたいなものです。
行き方は面倒で、フジテレビアートネットとググって、ホームページが出てきたら…ってか、ここまでは以下で大丈夫なのかな、ほれ。
http://www.fujitv.co.jp/event/art-net/index2.html
で、左端のコラムの下の方にある「Music in Museum」というところを押してください。今回の尾道市立美術館まで、全52回のバックナンバーも全て眺められます。なんか写真がおかしなことになってるのがあるけど。

さても、この連載、この地球上に存在するMuseumと名の付くところを会場に行われているクラシック音楽系のコンサートを紹介するレポート。前パブじゃあなくて、完全な後パブ。それどころか、もうやってないシリーズも平気で挙がってる、一種の「アートマネージメント系紀行文」ですわ。大きな声では言えませんが、いろんな事情で小生がたまたま出かけた先で出会った演奏会を行き当たりばったりで取り上げてるだけで、特に体系立ってやってる訳じゃありません。

ご覧になって判るように、超大物が欠けてる。そー、NYのメトロポリタン美術館の室内楽シリーズと、パリのルーブル美術館の室内楽シリーズです。なぜこのふたつを取り上げていないか、編集関係の方ならば、ちょっとお考えになれば直ぐに理由は分かるでしょう。敢えて理由は記しませんけど、このふたつの超大物ミュージック・イン・ミュージアム、取り上げるのがすごーく難しい。はっきり、理由はあります。

このシリーズ、半年ほど休載させていただきました。というのも、ネタが切れてしまったんです。

前述のように、小生がふらふら出歩いた先でたまたまやってたら拾う、という形でもうかれこれ連載も7年目になる。その間にあたくしめも年寄りになってきて、厄偏庵を留守にする時間が短くなってきた。
ちょっと前なら、例えばロンドンのコンクールを眺めに行くとなれば、その前にデジョンに東京Qがいるから寄って、ついでにバスチーユでやってる新作オペラでも見物して、帰りはアムステルダムで降りてコンセルトヘボウのお昼の小ホールの無料演奏会眺めて…なぁんて調子であれこれくっつけ、1週間のコンクール取材だったらなんのかんの前後会わせて20日くらいは出かけてたりした。4週間間隔くらいで用事があれば、そのまま帰国せずにどっかをウロウロしてたりもしたっけ。そんなことをしてるから、あちこちで細かいネタ拾いも出来たわけですわ。

ところが、このところ、ひとつの目的で行って帰って1週間、なんてのばかり。先月なんて、実質1週間でヴァチカン→ミラノ→マドリッド→上海、なんてパッツンパッツン、一切余裕なし。取材の出先での無駄な時間をどんどん作らなくなってる。昔と違って、無茶苦茶安いとこに泊まったり、車中若しくは機内泊続けたり、誰かんちに転がり込んだりなど、もうあまり出来る歳じゃない。それに、残念ながら、そういうことをしようという精神のパワーもなくなってるし。
例えば連休明けにボルドーのコンクールの見物にいくのだけど、最初は周囲の日程調べて、おおおチューリッヒで「遙かな響き」の新演出が出てるぞ、おおおおおドレスデンで「ノートル・ダム」なんぞやってるぞおおお!なんて思ったんだが、結局、バタバタ動きまわるのがかったるくなって、パリにも寄らないボルドー単純往復にしてしまった。

これは不味い傾向だなぁ、とは思うけど、こればっかりはしょーがない。もう若くないんだし。それに、ネットと通信が発達していろいろ情報が取れるようになった結果、無駄な時間を極力省いた日程が作れるようになっちゃったのもよろしくない。行って、向こうで交渉するしかない、なんて取材の仕方がなくなってきた。

そんな訳で、ミュージック・イン・ミュージアムみたいな「ついでが基本」の取材は、どんどんやれなくなってる。いやはや、であります。

それにもうひとつ、国内の美術館、ギャラリー、博物館、文学館なんぞで、佃厄偏庵から簡単に行けるところは、もう、殆どやり尽くしちゃったという現実がある。そこにもってきて、公立美術館などでは、こういう付帯事業みたいなものがどんどん減ってきている。これは案外、重大な問題。それに、この類の演奏会はやる日が週末であることが多いんだけど、この数年は週末の演奏会が猛烈に増加した。その結果、あちこちでバッティングすることも増えて、じゃあちょっと出かけるか、ってことが出来にくくなってる。

そんなこんなで、ネタ切れになりかけておるのですわ。

つきましては、皆々様の周囲の美術館、博物館、ギャラリーなどで、クラシック系の音楽会を開催しているところがありましたら、是非ともご教授ください。どんな小さな施設でも結構です。一応はプロの売文業で商売してるわけですから、どんなタイプの演奏会であれ、どんなタイプのミュージアムであれ、やってさえすれば原稿には出来ます。そこはご心配なく。

ホントにお願いします。ネタ、ください。どこでも行きます…ってわけにはいかぬので、なんとも申し訳ないのですけど。

おおお、なんてみっともないエントリーだ。

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Katchin

 先月、札幌にて、中島公園の道立文学館で、道文化財団主催のコンサートがありました。札響メンバーによる弦楽四重奏。ただ、道立文学館でこの手の企画があるのは珍しいですね。
 札幌で、この類の企画が多いのは(質はともかく)、奥井理ギャラリー、渡辺淳一文学館、道立三岸好太郎美術館。建物自体が名物という意味では、時計台コンサートシリーズもこのジャンル?
 PMFになると、道立近代美術館やモエレ沼公園のガラスのピラミッド(ここは公園そのものがイサム・ノグチの作品)でもコンサートがあります。
 札幌以外では、演奏の中味はどうかわかりませんが、熊本市現代美術館(CAMK)が積極的にこの手の企画をやっているようです。CAMKは美術館としての存在感が素晴らしいところですね。先月行って、感心しました。
 以上、厄偏庵から行きにくいところばかりで恐縮です。
 こう見てみると、札幌もそこそこの文化都市なのかも。

by Katchin (2010-04-24 15:57) 

Yakupen

Katchinさま、ご無沙汰です。札幌芸術の森美術館の取材の際には、いろいろとお世話になりました。

そー、実は、北海道はMIMがいっぱいあるんですよ。つまり、地域の小規模な美術館や博物館が、アーツセンターとして機能しようとする志向がある地域なんです。北米なんかに似ているのは、比較は出来ないだろうが、やっぱり広さなんでしょうかねぇ。

熊本もそうですし、高知もひところいっぱいやっていた。青森もやってた。でも、多くの公立館は、今年度になって壊滅状態です。実際にちゃんと活動すれば文句も出るけど褒める人もいるはずなのに、世間の予算の使い方の目が厳しくなったと思い込んで勝手にびびっちゃってる、って感じ。ホントのところ、どうなんでしょうか。

by Yakupen (2010-04-24 17:10) 

カラス

そろそろ著作をだしてほしいですが予定はありませんか?
by カラス (2010-04-24 23:16) 

Yakupen

カラス様

一番痛いところを…。今、やくぺん先生を轟沈させたかったら、「次の本はいつ出るんですか」と尋ねれば良い、というのは、小生の周辺にいる意地の悪い人はみんな知っている事実なのでありますよ!ううううう。

真面目にお返事しますと、勿論、企画はあります。ただ、小生がやる単行本は、所謂「ドキュメンタリー」です。周囲をご覧になればお判りだと思うのですが、業界内では既に死滅したジャンルと呼ばれています。売れないし、取材経費はかかるし、事実関係を巡って面倒な争いが起きる可能性がある。そんなジャンル、営利出版者の編集者は責任を取ろうとするわけがない。

で、可能性は2つ。ひとつは、フォーマットが定まっているところに流し込む。具体的には、新書、というフォーマットです。ただ、新書というのは、猛烈に売れないと商売になりません。1冊の商売になっている新書を出すために、まあ、100冊の商売にならない新書を流通させ、流通を維持せねばならない。その100冊はどうするのかというと、はっきりいえば、著者の持ち出しです。だから、学校の先生とか、別の定期的な収入のある方とか、そういう方に赤字覚悟で書いて貰うことになる。小生のような売文業者には、そういうことはできない。

もうひとつの可能性は、助成金やスポンサーを取ること。今のコンサートの作り方と同じです。正直、小生の過去のまともな著作のうち、2冊は実質的にスポンサーがあってできているものです。助成金につきましては、残念ながら日本には「ドキュメンタリーを出すための助成金」みたいな制度はありません。で、しょうがないから、広い意味での研究助成や音楽助成にアプリケーションを出すわけです。懲りずに出してますよ。でも、小生の商売のような部分に200万円助成してやろう、なんてところは残念ながらない。通ったことありません。これホント。

今、最も可能性のある著作は、たまに話し合いはしているのですが(立ち話ですけど)、いろいろと難しい問題がある。つまり、「特定の人の視点からの大本営発表」でいいならばOKなのだが、ある程度複数の視点を入れてこようとすると、どうしても生々しすぎる問題があったりする。つまり、「真実はひとつでない」ということを当人達がまだ認められない状況だったりする。

てなわけで、形になっていないわけです。

本、という形であれば、夏前には山田治生先生が監修する「ベートーヴェン・ガイドブック」みたいなものが出る予定で、そこで小生は宗教音楽と弦楽四重奏を担当してます。弦楽四重奏の部分は、絶版の拙著「クァルテットの名曲名演奏」のベートーヴェン記述の21世紀アップデート版になってます。あの頃はまだちゃんと判ってなかったヘンレ版やら、その後のいくつかの版などを踏まえての改訂ですので、実はベートーヴェンの弦楽四重奏通史的には、旧著とは違った捉え方になっています。ま、枚数はトータルで原稿用紙50枚程度の小さなものですけど。

なんであれ、叱咤激励と勝手に考えさせていただきます。有り難うございました。

by Yakupen (2010-04-25 11:27) 

hyamada

ベートーヴェンの本は、7月になるそうです。。。
by hyamada (2010-04-28 17:29) 

Yakupen

hyamada様

先程、校正が来ました。うわぁ、いっぱい入ってるなぁ、って感じ。えらくめんどうなものもいっぱいあるので、まるまる2日はかかりそうで、どこでやるかまた問題。こういう本って、パッケージが中身に優先されるという点では、編集の在り方はまるっきり雑誌と同じですね。その意味でこれは「本」じゃあないなぁ。いや、批判してるんじゃなくて、なるほどねぇ、ってこと。

原稿そのものが最も重要な価値となる類の出版物は、今や小生のようなヘッポコ三流売文業者にはやらせてもらえない、ってのが現実。あらためて思い知らされます。ふううう。

by Yakupen (2010-04-29 12:19) 

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