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弾かれないにはわけがある [弦楽四重奏]

さても、初日が終わった、とはいえ、たった2団体ではどうにも戦いが始まった感じがしないぞ。その割には妙な収穫の多い日だったなぁ、と感じる理由は、本日耳にした作品たちに拠るところが多いでありましょう。
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なんせ、ヴィンカQとソリスティックQ、それにボルドー名物の赤くて重いワイン、じゃなくて、審査員の先生のご紹介兼お手本コンサートがあって、プラジャークQがフルコンサートをひとつやってくれたんで、もう海胆前頭葉には充分すぎます。

本日耳を通り過ぎた作品を列挙しますと、若者組がハイドンの作品50の4と5、ツェムリンスキーの3番と4番。先生チームがスメタナの2番と、マルティヌーの7番。それに最後はやっとブラームスの長調のやつ。以上のメニューで御座いました。

日本語文化圏に総数数ダース程度の弦楽四重奏マニアの皆様、いかがで御座いましょうか。皆様の大好きそうな、一度は生で聴いてみたい、ってなもんが蔵出し状態であります。

当大会審査員が課した1次予選の御題、「アリアーガ3番、ケルビーニ5番、ハイドン作品50」という古典のチョイスのうち、結果として参加9団体でケルビーニを選んだ連中は皆無。アリアーガは、来なかったアリアーガQは当然としても他には元ペンギンがやるぞと手を上げただけ。他はみんな作品50からでありました。
とはいえ、作品50を東京圏の演奏会でちゃんとした団体がちゃんと演奏した例って、この数年ではないんじゃないかい。長い間楽譜の問題があったとはいえ、ドブリンガーがクリティカル版を出してもう10年以上になるんだけど、さっぱりやられませんねぇ。どーしてかなぁ。

ツェムリンスキーも、なぜかエクが昨シーズン1番を盛んにやってたものの、2番以外が弾かれるのはまずない。かくいうやくぺん先生も、第4番なんて、本日の海胆頭で接する前に耳にしたのは、なんとなんともういつのことかも定かではないラサールQの最後の来日演奏会で東京文化会館。終楽章のドッペルフーガは今でも覚えている、ラサール最後の輝きでありました。あれ以来だもんなぁ。恥ずかしながら、3番に至っては今回が初めてかも。アルティスQがカザルスホール主催公演時代の最後の頃にオッテンザンマーのブラームスの伴奏みたいに弾いたときにやったかなぁ、違ったかなぁ。

んでもって、マルティヌーはともかく(これも前に聴いたのはボストン郊外の教会でボロメオがやったのくらい)スメタナの2番ですわ。この曲には妙な思い出がある。
今を去ること15年くらい昔かな、アマデウス・コースの最後の回だかで、すばるQがこの曲を持って来て、ロヴェット御大の前で弾きました。あたくしめが通訳に入っていて、まず御大が「スコアよこせ」という。で、すばるQが弾いてる最中、御大はずっとスコアを眺めている。終わって、いかなコメントがいただけるかと丸山氏やらが待ち受けると、ひとこと曰く、「極めて興味深い作品ですね」。んで、それ以降、君たちはこれからこの曲でコンクールを受けるそうだが…って、延々と試合に付いての心がけなどを喋っている。
クラスを出るや、アマデウスQの鬼っ子にして世界で1番イヤぁなイギリス人のひとりのチェリスト、ニヤリとして小生に漏らすに、「私はあの曲は見たのも聞いたのも今日が始めてだったよ」ってさ。

ま、そんな曲ですわ。スメタナQが日本に頻繁に来ていた頃、そこそこの数はやってる筈。でも、その他にまずやられん。休憩時間に劇場前に出ていた元ペンギンに「これ、やったことある」と尋ねたら、「そりゃ、俺たちはやるさ」とのこと。セカンド君に拠れば、「ある医者の話では、この曲は分裂症の典型症状がそのまま写されていて、その人は大好きなんだって」とのことであります。なーるほどねぇ。
とはいえ、演奏者の精神の病気を反映させたパーフォーマンスは天下の名演と持て囃されることは珍しくないものの(←今話題の特定の演奏を射しているわけではありませんっ!)、作品として楽譜に固定されたものからそんな異常な中身を健常者が引っ張り出すなんて極めて難しい。弾かれないのはしょうがないだろうなぁ、と思わせていただきました。

異常な作品といえば、その横綱格たるシューマンの2番。今回のボルドー、2次予選でジルベール・アミの新作と共に弾かねばならぬのが、シューマンの3曲のうちどれか1曲です。流石に参加予定11団体の中で2番を選んだ猛者はおりませんでした。敢えてあの曲に万全の準備を重ね、審査員及び聴衆の防御最弱の箇所への一点集中砲火でコンクールを制覇する、なんて作戦は、ベネヴィッツQが行い見事成功させた前前回の大阪夏の陣しか歴史書には記されていないのであった(作戦参謀はビュコック提督、じゃなくて、ワルター・レヴィン大将軍だったそうです)。ベネヴィッツQ自身も大阪の勝利以降のボルチアーニでは王道勝負で、そんな奇策は採ってません。

さて、明日は1次予選の続き3団体。知らない若手ばかりだし、地元団体があるので、劇場の席取り合戦も大変かも。気が抜けないぞ、がんばろー。

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Minochan

すでに梅雨のような雨の有楽町から、ウラヤマシイぞ!
元ペンギンとガラテアの諸君によろしく。
by Minochan (2010-05-11 18:48) 

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