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どーしてこんなに楽なんじゃろ [音楽業界]

ヨーロッパの空は5月と思えぬ涼しさ、宿のロビーで世間話をするワールド・トラベラー達に拠れば、空路も未だ大混乱。ロンドンから来たという若夫婦、空港でチェックインに3時間待ったそうです。いやはや。

とはいえ、ここボルドーは妙にノンビリした空気が流れているぞ。

世界中の国際やらローカルやらコンクールと名前が付くイベントに関わっていらっしゃる方は、当電子壁新聞ボルドー臨時支局からのやくたいない作文を眺めるに、「なんだかノンビリやっとるなぁ」とお思いのことでありましょうぞ。今日なんてセッションは3団体、演奏時間総計3時間でオシマイだもん。普通ならその倍はやるでしょに。

そのとーり、正直、今回の大会、ものすごぉく楽です。いい加減、寄る年波には勝てずお先短いやくぺん先生とすれば、シティでやってた頃のロンドン大会みたいに2ダース以上の団体が馳せ参じ、1次予選は朝の9時から下手すりゃ深夜過ぎまで、セント・ポールの鐘が鳴ろうがお構いなし、なんてオソロシーことになったら、もうとてもじゃないが付いてけない。
聴いてるだけじゃないか、とお思いでしょうけどね、先週のオペラシティでのショパン116曲一気弾き(&聴き)にご参加なさった方はお判りのよーに、もうあるところからは聴く方も完全に体力勝負になってくる。あんなもんが最初の3日ずっと続く、なんてことが起きる。ヴァイオリンやピアノみたいな参加者分母の大きい大会の場合、さほど珍しいことではない。

さても、なんで今回はこんなに楽なのか。そんな身体が発する素朴な疑問に対する解答は、どうやら、ある。だけど、この瞬間、猛烈に忙しそうにしてる上に金曜日にはどっか郊外で本日到着する新ちぢりんクァルテットに混じりシューベルトのクィンテット弾くムニエ御大に、そんな面倒なことを尋ねている暇はないぞ(日曜午後にインタビューが取れるかなぁ)。かくて以下は不確かな伝聞と状況証拠で書くことです。毎度毎度、「書いてあることはみんな嘘」の当電子壁新聞ですから、そこはちゃんと心得て立ち読みするよーに。こんなところに書いてあることを眺めて、妙に事情通の顔などしてはいけんですよ。

ひとつは、ジュネーブの国際コンクール連盟が審査時間の枠を設定したこと。文書がどっかにあるだろうから確認すれば良いんだけど、今、普段よりもノンビリしているとはいえそんなことをしてる暇はない。よーするに、審査員が1日に審査して良い時間に制限が出来たそうなんですわ。
まあ、80歳に迫ろうという老人に1日12時間に近い労働をさせてたりしたわけですから、これまで許されていたこと自体が妙である。無論、いろんな抜け道はあるのだろうけど、まさかかつてのエヴィアン・コンクール、ジュネーブ湖を挟んで国際コンクール連盟本拠地の対岸で始まった当ボルドー・コンクールでありますから、知らんぷりをするわけにもいかんのでしょう。

で、もうひとつは、会場の問題。なんせこのコンクール、ボルドー市のど真ん中、路面電車のジャンクションがあって、iがあって、ワイン・センターなんぞみたいなところがあて、なんて場所に堂々と鎮座するボルドー大劇場のピットに蓋してやってる。弦楽四重奏団が弾くところで本日のご案内をする我らがムニエ御大。
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ちなみにこのコンクール、ボルドー市が重要なイベントとして全面協力しているわけで、全部無料です!当然、毎日、子供達の団体がセッションを眺めに来てます。

とはいえ、今はオペラシーズンの真っ最中。かつては9月にやってて、911にモロにぶつかった年など、バンフで終わって、数団体がカナディアン・ロッキーの奥深くから大西洋越えて直接ジロンド川の河口まで乗り込んだことがあった。その後、時期を転々とし、いろんな状況で今年は5月になったようであります。だから、今晩もオペラ、やってます。「イエヌーファ」やってます。黄色い砂漠みたいなセットがクァルテットが弾いてる後ろの幕の更に後ろに広がってます。ほれ(どーしてこんな天井桟敷からの喝采シーンの写真があるか、深く考えないよーに)。
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そんなこともあって、ある程度早い時間に撤収せねばならない。で、かなり余裕を持った日程になってるみたい。

ちなみに、クァルテットのコンクールというのは最終的にコンクール会場まで招聘される団体が1ダースくらいというのは標準的です。今や、ロンドン、ミュンヘン、ボルドー、レッジョ・エミリア、バンフ、大阪、メルボルンら世界の弦楽四重奏メイジャー大会(国際グランプリクラスですな)は、どれも招聘団体を絞り込み、出来るだけ沢山弾いて貰う、という方向に向かっています。 理由ははっきりしてるけど、それはまた別の話。でもね、動いている人数から言えば、×4ですから、1次予選で世界中から50人くらい来ている大会のわけで、規模は標準的なメイジャー国際コンクールと同じ。←いかに弦楽四重奏が手間と経費がかかるかが良く分かるでしょ。
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以上、コンクール運営をしてみたいという方以外にはなーんにも関心のないお話でした。

さて、明日水曜日は1次突破がほぼ確実な4団体。こんな風に結果がリストを見たときから殆ど予想できてしまうのもアンサンブル・コンクールの大きな特徴なんだけど、ま、それはまたそのうち。だってね、そもそも国際コンクールに招聘される可能性があるレベルの10代終わりから30代始めまでの本気で商売をやりたい若手クァルテットで、いつの時代でも、世界に多く見積もっても30団体くらいしか存在していないんです。これ、ホント。で、そんな中で、所謂「世界を旅するスター」になる団体は、甘く見て10年に1団体あるかないか。そんなもんですわ。

だって、弦楽四重奏団って、コストを考えれば、ある特定の団体が世界を飛行機で飛んでまわるよりも、地元にきちんとした団体がいてくれた方が余程良いんだもん。「メイジャーレーベルからCDがいっぱい出て、国際的に活躍する弦楽四重奏団」なんてのは、極めて異常な存在なんですから。そんな妙な仕事をやりたいなんて本気で思ってる酔狂な連中は、00年代では、そーねぇ、エベネQくらいかな。アルテミスQやベルチャQは、その前の90年代のコンクール世代ですから(アルテミスもルンゲ君など、そろそろ大きなツアーは減らしたい、なんて喋ってるしね)。
 
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