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ユーゲントシュティルの通城にて [たびの空]

ローザンヌに向かうスイス国鉄車内です。スイスの鉄道は別料金の特急というシステムがないので、土曜日午前中にでっかい荷物を抱えた観光客と、近所にお出かけの地元民が同じ車輌に混在しており、なにやら壮絶なことになってます。そこにもってきて駅での進行方向入れ替えが頻繁にあるので、寝不足の頭はクラクラです。
午後にはジュネーブ湖畔での音楽祭にいるファビアン・ミューラーという気鋭作曲家のインタビュー&演奏会お付き合いなので、しゃんとしてなければいけないんだけど、流石にこの歳になるとこんな移動移動の連続はそろそろ限界であーる。明日明後日はチューリッヒのカルミナ邸に転がり込むので、洗濯も出来るぞっ!

さても、ヴィーンからエッセン、ケルン、ストラスブールと転々とした4日間、結果的には存外と筋の通った夜になりました。昨晩のバリトンで歌う「大地の歌」の最後、チェレスタやらマンダリンやらのチャラリンチャラリンって響きが、ストラスブールの街の19世紀末から湿地帯を開拓した新市街に溢れかえるユーゲントシュティル(ラインの支流に挟まれた旧市街ばかりが観光地の街だけど、それだけじゃあない)になんともマッチして、あああこの音楽ってこういう趣味の中にあるんだよねぇ、と納得。だって、こんなアパートが溢れる街だもん。
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バリトンで歌われると、「告別」の最後の部分って、ヴォータンの告別だけじゃなくて「ラインの黄金」のエルダのイメージがバッチリ被ってるだなぁ、って今更ながらに思わされる。カンブルラン御大がきっちりキューを出しながら「エーヴィヒ…」と繰り返すバリトン氏を彩る光の粒子が飛び散っていくような響きは、そのままベルクが「ヴォツェック」の死をみとる蛙たちの声や、さらにはルルが唯一愛した人を殺してしまった瞬間にオケ全体に広がるピストルの発射音に繋がってくこともよーく判ったし。

ヴァーグナー、マーラー、ベルク、そしてヴァレーズと、まるで蕩々たるラインの流れのようにしっかり繋げられた響きたちは、いよいよこのツアーの頂点、来週の「アッシジの聖フランチェスコ」二連発へと流れ込んでいく。さても、本日のミューラー君、そんな大きな流れに、なにか棹さしてくれるような音を聴かせてくれるのかしら。それとも、風光明媚なスイスのチョロチョロした滝の流れに終わるのかしら。ご関心の向きは、11月にカルミナQが晴海でご披露下さいますので、乞うご期待。

もうすぐローザンヌ。ラインの乙女たちとしばしのお別れ。

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