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特別対談:ターサ=キンスキー大いに語る(前) [弦楽四重奏]

来る11月12日、東京湾岸晴海に移転再オープン成って10年、東京の弦楽四重奏の聖地たる第一生命ホールで「SQWガラ」なる空前の演奏会が開催されます。
http://www.triton-arts.net/ja/concert/2011/11/12/172/
今を去ること半世紀ほどの昔、やっと占領軍支配から独立し(そこの君、まだしてないじゃないか、なんて突っ込まないよーに!)、GHQヘッドクオーターのオーディトリアムが「第一生命ホール」として開放されるや、まだメセナなんて言葉がなかった頃に社長の趣味でメセナやってた矢野一郎第一生命社長のプッシュで近衛秀麿の一党が演奏会を開始、近衛に引っ張られてはるばるドイツからやってきたコンマスのシュタフォンハーゲンが率いるシュタフォンハーゲン弦楽四重奏団が日本で初めての月1回の弦楽四重奏定期公演を始めたのが第一生命ホール。ちなみに、この弦楽四重奏のチェロは、未だに現役で一部からカリスマ的な人気を誇る青木十郎氏でありました。

その後も、岩淵龍太郎率いるプロムジカQが日本人団体として本邦初のベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会を行った記念すべき場所となったり、巌本真理Qを結成前の黒沼俊夫がシベリアから帰国直後に加わったカペーQのメンバーとして盛んに弦楽四重奏を弾いたのも、やはりこの場所でした。なにしろ日比谷公会堂には小ホールはなく、上野の東京文化会館が落成するのは1961年。1950年代から60年代にかけて、日本の室内楽の中心は日比谷第一生命ホールと銀座の山葉ホールだったわけです。

そんなわけで、「弦楽四重奏を聴きたくて仕方ない」というホールの遺伝子を受け継いだ二代目第一生命ホールが、自主企画の中心にまるで稼げないし集客も見込めない弦楽四重奏のシリーズを置いたのは、必然でありました。二代目にしたところで、常にNPO出資者やボードメンバーから「集客が少ない」と批判され続け、来年は続けられるかどうか判らないと言いながらもなんとか10年もやってきたのですから、これはもうお祝いをせねばなりません。ボーッと続けてるうちに10年が経ちました、ってのとは大違いなんですから。

かくて、ターサ=キンスキーなる謎の作曲家がこのNPOの10年の無茶な活動に大いに感銘し、祝典のガラにお祝いの曲を捧げてくれることになったわけです。

ターサ=キンスキー氏が事務所に姿を見せるとのTANスタッフからの連絡を受け、地域住民代表たるあたくしめ、押っ取り刀で晴海まで駆けつけたわけでありまする。極秘に、謎の作曲家の後ろ姿だけご覧いただきましょう。おお、こんな方なんだぁ。口ぶりよりもお若く見えるなぁ。
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以下、どっかでみたことあるよーな風貌のターサ=キンスキー氏が新作の秘密の一端を披露してくれた対談の抜粋。「ストリング」誌編集部様、TANスタッフの皆様のご協力で、この電子壁新聞への掲載が特別に許されました。じっくりとお読み下さいませ。

※※※※

――失礼ながらこのインタビューの前に調べてみたんですが、ターサ=キンスキーさんの経歴が、どうにも判らない。お教えいただければ幸いなのですが。

ターサ=キンスキー:わしのことを知っておるのは、古典四重奏団の田崎君くらいしかおらんじゃろうなぁ。わしも世に出とうないのでのぉ。田崎君から今回の企画を話をきき、これはもう是非とも曲を書いてさしあげにゃならぬと感じ入った次第じゃ。んで、「ラズモズクスキー弦楽四重奏曲第1番~第3番」を一気に書かせていただいたわけじゃ。

――そんな大きなお仕事に、トリトンさんはいかほどご用意だてしたんでしょうか。

ターサ=キンスキー:なにをいっちょるか、この無礼者めが!無償じゃ、ボランティアじゃ、ドーネーションじゃ!!

――ああ、怒らない下さい、大変失礼しました。ところで、演奏するのは、3団体×4人-ひとり(注:古典QとエルデーディQのセカンドは同一人物!)、ということではなくて、3つのクァルテットのための作品なんですか。

ターサ=キンスキー:当日は第一生命ホールの舞台上に3つの弦楽四重奏団が並んじょるわい。弦楽四重奏の形態のまま、3つの場所におる。

――ひとり足りない人がいる団体もありますよねぇ。

ターサ=キンスキー:足りない人は、日頃からそうであるように、2つの弦楽四重奏団をいったりきたりするんじゃ。なんせお祭りじゃからのぉ、この作品でやっとるのは、今時でいうところの「ハイブリッド」、「ミキシング」じゃ。わしの敬愛する偉い諸先輩のいろんな曲が、どんどん放り込まれてくる。敢えて「冗談音楽」と言ってもかまわぬぞ。大真面目でやっとる冗談じゃ。

――へえ、それで、何をやってるかは判るんですか。

ターサ=キンスキー:舞台を見ていて判るんじゃ。なぜかというに、曲が変わると、違うクァルテットが演奏するんじゃ。

――え、そんなこと、指揮者無しで大丈夫なのかしら。

ターサ=キンスキー:大丈夫なようにわしが作っておるわい。

――それはやっぱり、常設の弦楽四重奏団が3つ並んでいるから出来ることでしょうねぇ。

ターサ=キンスキー:その通りじゃの。わしは実はこのSQWというシリーズにはこっそり通っておってのぉ、各団体の実力はよーく心得ておる。これくらいのことは平気にやってのけるということを前提にしておるんじゃわい。

――じゃあ、この曲が出来るというのは、これだけの連中が来て、ちゃんと譜面を読んできて、ちゃんと練習して…

ターサ=キンスキー:そうじゃ。今日ここにやってきたのも、練習があるから来てくれと田崎君から頭を下げられたからじゃよ。

――これはもう、日本演奏史に残るイベントですねぇ。

ターサ=キンスキー:世界演奏史、と言って欲しいのぉ。セカンドのあつみ君の移動に何小節かかるかまで計算づくで書いておる。ここは7小節あるので帰ってこられるとか、みんな頑張っておったわい、わぁああっはっはっはぁ(笑)。

――あ、この人たちは第一生命ホールのステージの広さも知っているんだ。

ターサ=キンスキー:当然じゃわい、10年間、何度も弾いてるんじゃからのぉ。なんせわしのスコアも、終楽章になると8段もあるんじゃ。だがのぉ、なんとも不思議なことに、花崎夫妻を除けば、名字の頭文字が全員違っとる。だから、スコアには「第1ヴァイオリン」とかじゃなく、蒲とか、桐とか、山とか、大とか、漢字が振ってあるんじゃ。一目瞭然じゃろ(爆笑)。

――弾いている方は喜んでくれてるんですか。

ターサ=キンスキー:わしゃ、たまたま田崎君の気持ちだけは手に取るようにわかるんじゃが、彼はホントに楽しがってくれておる。他の参加したメンバーも、みな面白がっていたようじゃった。そもそも「冗談音楽」といわれる分類のものをやるのは、本物の音楽家にとって楽しみなんじゃよ。それをわざわざ、自分たちのための新作でやるんじゃから、そりゃ大真面目で面白いわい。楽屋落ちにもせんとじゃ。

――そろそろもったいぶらずに曲の中身について教えて下さいよ。

ターサ=キンスキー:よろしい。じゃあ、まず最初の曲じゃが…

(以下、後編に続く)

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