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セントラルパークに星も旅客機も光りぬ [マンハッタン無宿]

昼間に今回のツアーでいちばんお仕事っぽいお仕事を終えて、さあ、夜は娯楽だ。オペラだ。っても、ホントに自分の娯楽ならシンフォニースペースでマンハッタン室内管ちゅー団体が新作含めたアメリカ作品ばかりをやるのを聴きに行く方が娯楽に近いんだけどさ。

てなわけで、気を取り直して、ニューヨーカーがどんな風に気楽にオペラを楽しんでるかの見学です。この恒例のセントラルパークのシェドで毎年夏のシーズンに無料で名作オペラを街往く人たちに披露するイベント、38回目だかになるという。案外新しいんだなぁ、という気もするけど、ともかく続けられてるのがスゴイ。

会場は、NYPが毎年無料コンサートをやってる北の方の広場じゃなくて、66丁目と82丁目だかでバスがクロスタウンする道が横切るところの間、マンハッタン厄偏庵からだと72丁目の駅のところで公園の方に曲がり、いつも観光客で溢れるダコタハウスの前からストロベリーフィールドを抜けて公園の奥へと入っていきます。雪駄突っかけ歩いてくと、前に楽器背負ったオバチャンが歩いてるので、後を付けていく。
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夏は木立の緑が多くて発見しにくい栗鼠どもが走りまわってる開けた辺りで、池の南にシェドが見えてくる。思ったより全然小さいぞ。NYPの花火も上がる野外無料コンサートはでっかい仮設ステージにオーロラヴィジョンなんかがくっつき、万単位で人が動員できるようになってるけど、こっちはかなり慎ましい。ホントに公園の中にあるでっかいあずま屋を舞台にして、ともかくオペラやっちゃおうぜ、って感じ。流石にスピーカーは正面に配置されるものの、ハイテク感まるでない。イタリアの田舎っぽさすら漂うぞ。

ステージの真ん前は椅子があって囲われてる。どうやらこのオペラ団やイベントに資金提供をなさったドーネーターの席のようです。200席もあるかな。その後ろや周囲は特になんの設えもなく、早めに来た連中は勝手にビニールシートを敷いて座席を取ってら。
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ステージ下手に仮設トイレが3つほど。屋台はちょこちょこは出ているが、NYPみたいな派手な大イベントって感じではないのはちょっと意外。拍子抜け、ってのが本音。

小生は舞台よりも聴衆の動きや流れを眺めたいので、舞台を観ようとすると真ん中にでっかい木が入るリストリクティド・ビューのベンチに座り込み、ノンビリ、でもきょろきょろしてる。おっ、ここ空いてるじゃん、と隣に座る人が次々だけど、みんな「あれぇ、木で真ん中が全然観えないや」って、直ぐにどっかに行ってしまう。開演予定の7時半を15分も過ぎ、やっと団長さんが出てきて「世界にこんなイベントはない」なんて挨拶。続いてイタリア領事が誇らしげに演説します。故郷のオペラハウスが予算カットで大変なことになっていようが、やっぱりオペラはイタリアの誇りっ!

早く演説なんて終えて、オペラ始めてよぉ、って舞台そっちのけで弁当食ってるップルから漂うのは、お花見か花火見物でお馴染みの臭い。おお、きっちり酢飯の寿司弁当じゃーないの。わしは今、どこにおるんじゃ。
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そう、このイベント、限りなく花火見物なんかに近いです。

夏至を過ぎたばかりの北緯40度を超えるゴッサムシティは、まだまだ昼間。「トスカ」で最も音楽的に盛り上がる1幕最後のテ・デウムの頃になって、やっとセントラルパークに宵闇が迫る。
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音楽的には、良くも悪くもラテン系国の急行が止まるくらいの街のローカルオペラハウスの普通の上演、ってくらい。オケは50人いるかいないかだし、演出も猿でも判るまるで1960年代のNHKイタリアオペラみたいなもんだけど、歌手はそこそこちゃんとしてて、特に真っ黒いスカルピアなんかはまあローカル歌劇場とすれば立派。アフリカ系男性歌手さんって、テノールならオテロという究極の役があるけど、それ以外はシンドイもんなぁ。こういうところでしっかり頑張って欲しいものだ。
聴衆は全くオペラに縁のない、たまたま通りかかった人とか、イベントだから来た人とか。でも、後ろの方で腕組みしてスピーカーからの声にじっくり耳を傾けてるオッサンなど、態度が妙に慣れていて、ああこりゃシーズン中にはメトで10ドル切符に並んでる雀どもだな、って連中もおりました。オケはともかく、歌手は手が抜けないね、これじゃ。

上空にはヘリコプターやら(シュトックハウゼンの「光の水曜日」じゃないよっ!)、ラガーディア空港にアプローチする飛行機、はたまた公園内を走る清掃車やパトカーの音がひっきりなし。トスカが殺人を犯す前の泣かせどころアリアも、しっかりジェット機との二重唱。でも、ま、これでいいんねん。オペラって、ビックルするほど強いコンテンツなんだなぁ、と思わせてくれたのは収穫でした。いろいろ考えるところもありました。

では最後にオマケ。すっかり夜も更け、半月が光る中に謳い上げられた「星も光りぬ」をお聴きあれ。歌うは…あ、配ってたキャストとあらすじの紙、貰ってこなかったっけ。ゴメン、判りません。
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朝ならぬ夜の星が光り、ついでに旅客機の光も上空に輝く。かくて宵闇のセントラルパークは暮れゆく。2ドルちょっとでデカイ缶ビール買って、おうちに帰りましょ。

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