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ウェールズQ帰国 [弦楽四重奏]

大阪はフェニックスホールで、ウェールズQの実質上の帰国報告演奏会(?)が行われました。今、関空のラウンジ。ここ、どこでも無線LANが繋がるのは有り難い。
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ウェールズQと言えば、結成から4年前のミュンヘン・コンクール第3位、その直後のICUの裏の某美術館での演奏会までの第1期は、水谷君という四半世紀にひとりのセカンドの逸材がいて、とても結成数年とは思えぬ目配りで気持ち悪いくらいバランスの良い音楽をやっていて、こんな団体が日本から出たのかぁ、とビックリしたものでした。
ミュンヘン優勝から数ヶ月後に水谷君が抜けておやおやと思ったら、案の定というか、直ぐに水谷君は群響のコンマスに抜擢され、今や知る人ぞ知る若手のキーマンになりつつある。弦楽四重奏としてもいわきアリオスのヴィルタスQのセカンドに起用され、流石に丸山御大、人を見る目がある、と感心したものでした。

で、真ん中の二人を新たに、第2期ウェールズQはバーゼルでライナー・シュミットに学ぶことになる。この間、足かけ3年になるのかな、小生が聴いたのは年末に日本に里帰りしたときと、大阪国際コンクールに参加し、これまた3位になったときだけで、残念ながらヨーロッパでは聴く機会がなかった。

「シュミット先生以外に学ぶつもりはありません」とメンバーが盛んに言うのに、せっかくヨーロッパにいるんだから、もったいないなぁ、君たちの経歴ならプロカルテットでもヴィーンのアカデミーでも門戸は簡単に開くでしょ、なんてお節介を言ってたんだけど、頑固一徹というか、信念を貫くというか、ずっとシュミット氏に習っていた。

シュミット氏のレッスンって、小生は今世紀の初め頃にフォンテヌブローでプロカルテットでのレッスンを一度眺めたことがあるだけなんだけど、端で眺める限りそれほどカリスマティックな感じではなく、ピヒラー御大みたいに良くも悪くもひとつの形に入れるというのでもなく、生徒の良いところを引っ張り出すタイプなのかなぁ、なんて思った。いろいろな人にきくに、和声面では非常に得るところがあるレッスンをなさるということで、なーるほどねぇ、などと勝手に納得していたものでした。

というのも、第2期ウェールズQって、お聴きになった方は皆さんご存じでしょうが、相当に独特な音楽をやろうとしてました。もの凄く乱暴に言うと、「絶対に縦の響きで汚い音を出さない」ってのが目的みたいな音楽。和声フェチと言われても反論できまい、って感じです。昨年かな、田村響君とシューマンのピアノ五重奏やって、どうやっても汚い音が出まくるこの楽曲ジャンルで、こんなに綺麗な音ばかりを響かせようとしている演奏は聴いたことなかった。冗談じゃなく、おまえらピアノ四重奏団かピアノ五重奏団の常設を目指したらどうじゃ、なんて無責任なことを思っちゃったくらい。口に出して言ったかもしれんなぁ。

無論、そのために犠牲にしている、というか、関心の外になってることもいっぱいあって、トータルで論じればこれでええんかいな、ということになるのははっきりしてるのだけど、これはこれでひとつの突き詰め方ではあるなぁ、と興味深く眺めていたですよ。

本日の演奏は、そんな第2期ウェールズQの集大成というべきものであったことは確か。ラズモ第2番の第2楽章をあんなに綺麗に響かせる若い団体は、ちょっといないかもしれない。文句言い出せばキリないけどさ、あれだけひとつの指向をはっきり出せるなら、それはそれでいーじゃないか、と思わせるだけのものはあった。

白眉はアンコール。あれ、パート譜じゃなくてスコアで弾くんだ、なんだろう、と思ったら、マタイ受難曲のコラール「血潮したたーるぅ」が流れ始めます。純正律とは言わないけど、とても美しく響くコラールが、フェニックスホールの高い天井に渡っていく。第2期ウェールズQの卒業演奏に相応しい音楽でありました。

さて、日本に戻ったウェールズQ、メンバーの話に拠れば、この先暫くは各メンバーの活動拠点(生活拠点、というべきかな)探しで、正式な日本での活動開始は10月の紀尾井ホールだそうです(この話はもうオープンにして良いとのこと)。日本をベースに弦楽四重奏を続けることの難しさをどれくらい認識しているか、なんとも判らないし、どのようなやり方をするのかもまだ判らない。まあ、しっかりマネージャーさんが付いている団体だから、端からいろいろ言う必要もないし、それは関係者の皆様にも迷惑でしょう。ともかく、秋以降、研修期を終え本格的なプロの弦楽四重奏団として日本で活動する第3期ウェールズQ、期待して待とうではありませんか。

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