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ノーヴスQの故郷凱旋 [弦楽四重奏]

てなわけで、昨晩、ソウル・アーツセンターの昨年に出来た新しい方の室内楽ホールで、ノーヴスQがミュンヘン第2位から初の祖国凱旋公演を行いました。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2012-09-10
手打ちでは第5回の演奏会とのことなんだけど、実質的にはクリスマス休暇でみんな郷里に戻ってきているときにやる年に1度の主催自主公演(地元のマネージャーさんはしっかり付いてます)、ってことなんでしょう。
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本来ならばちゃんとした媒体に記さねばならぬことだし、たぶん、時間はずいぶん先になるだろうが大阪国際室内楽コンクールの広報誌にきちんと書くことになると思うので、某S誌がなくなっちゃったから電子壁新聞に書いちゃうぞ、ってわけにもいくまい。ですので、サラッと、です。

さても、結論から言っちゃえば、まあこれは本人たちにも終演後の大混乱の中の立ち話で言ったけど、"well trained, very finely prepared performance"でありました。一歩間違うともの凄い皮肉になりかねない物言いだし、発表会で「よくお勉強してきましたね」と言われて嬉しいアーティストがいるのか、なんとも判らないけどさ。

シベリウスの「アンダンテ・フェスティヴォ」を頭にやって(なんかこの曲、韓流ドラマを盛り上げる類いの感動的なメロディにえらく似てねーか、って感じたぞ)、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレが入ってる弦楽四重奏曲。で、最後はショスタコの3番。おいおいおい、なんかお手軽な演目だなぁ、モーツァルトもなければラズモもないじゃないの、って思うでしょ。小生もそう思ったですよ。この演目でわざわざソウルまで出かけるのはどーしよーかなぁ、クリスマスお楽しみお気楽演奏会になっちゃうんだったらイヤだなぁ、ってね。

そしたらどっこい、最後のショスタコがとっても立派でした。

考えてみたらこの曲、演奏会で取り上げられる場合は、全曲演奏会で頭から、って特殊な場合を除けば、ベートーヴェンなら作品18みたいな扱いを受けるわけですね。後半に11番以降の深刻な奴をやるんで、前半は客さんもお気楽に、やる方もお気楽に、って感じ。交響曲なら9番みたいな扱い。

そんな曲を、大まじめに真っ正面からきっちり個人練習し、アンサンブルとしてもしっかり練習し、あちこち議論して音程やらルバートやらアクセントやらを細かく作り込み、ピチカートも音量も表現もきっちり揃うまで訓練し…って演奏。ミュンヘンで4人がいつも顔を合わせながら、ポッペン先生なんかにも頻繁にチェックしてもらいながら、しっかり作った音楽。きけば、バイエルン放送でスタジオ録音もしたそうです。なーるほどね、そりゃ完成度高くなるわ。

いやぁ、ホントに文字通りの「異国での勉強の成果を故郷の皆さんに発表する」という演奏会でありました。アンコールにショスタコの「ポルカ」でお客さんを大いに沸かせ、これで終わりかな、と思ったらもうひとつ、K.428のフィナーレを弾きます。おおお、これまたどこで勉強してるかがよーくわかる、とても真面目できちんとした、爽やかな音楽でありましたとさ。

こういう演奏会、一頃までは屡々東京でも聴いたなぁ、と懐かしい気持ちがしなくもなかった。なるほど、今、半島の若者たちは80年代くらいに盛んに上野やら仙川で起きていたようなことをやってるのかな。

会場はビックリするほど若い。演奏者の同世代や、もっと若い楽器抱えた連中、それにご家族お友達、かな。メディアなどがどれくらい来ていて、どれくらい注目されていたか、判らぬ。小生の数少ないソウルの顔見知り記者などは見つからなかったです。隣の大ホールがクレディア(ソウルのKajimotoみたいな大手事務所)主催の地元人気スターだったからかしら。大統領選挙投票前日で、文化部記者まで別の所にかり出されていた、なんてことはなかろーが。
そもそもソウルの演奏会というのは、それが室内楽であっても、東京なんかの感覚からすれば猛烈にストレートに盛り上がるのだけど、それにしても終演後は盛り上がってました。会場前ロビーで、延々と皆さんに囲まれてサインをし、記念写真撮影に付き合う。ああいうものなのかしら。
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てなわけで、なかなか好感を持って聴きながらも、彼らとすれば来年まではこのレベルを維持できる状況が整っているが、それから先はどーするんだろーなぁ、と感じざるを得なかったのもまた事実であります。今回はソウルの聴衆が好きそうな作品ばかりを並べ、それをきっちり作り込んで来たけど、それを越えたレパートリーを展開していくだけの聴衆をどう発見していくか、若しくは育成していくか、そりゃ大変だわさ。先週のKCO弦楽四重奏団も、聴衆は関係者お友達で、基本は「自分がやりたいレパートリーを年に数回やる」というスタンスの演奏会。室内楽聴衆があって、って感じじゃなかったもんね。

ま、これって、そういう聴衆が120人いるのか、30人いるのか、はたまた5人いるのか、ってだけの違いで、要は東京でも名古屋でも、同じことなんだけど。

さて、我らがノーヴスQ、次の大きな演奏会は、来月下旬のカーネギーホールのワイルのようです。例年ならいかにもNYにいそうな時期なんだが、この冬はちょっと無理そう。残念。

ただ、このノーヴスって名前なんですけどねぇ…ジョヴァンニ、とかと同じで、ずっと使うにはちょっと抵抗あるわなぁ。

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