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シュトックハウゼン追っかけは溜池にいなかった… [音楽業界]

敢えて「現代音楽」ではなく、「音楽業界」カテゴリーにします。

先程、溜池での37年ぶりのカール・ハインツ祭りが恙なく終了しました。本日も、今日ここにいないと業界人としてモグリ、と言われそうなほどいろんな人がおりましたです。
ぶっちゃけ、このイベントで最も意味があったのは、これほどいろんな人がともかくシュトックハウゼンの《光》の一部たりともを真っ正面から見物した、という点に尽きるでしょうね。それらの人々がこの舞台(というか、ステージ上)で展開されたことをどうお思いになろうが、ともかくこれで「シュトックハウゼンの《光》」という世にもケッタイな創作物について、それらの人を前にして語れるようになった。それだけでも人類にとって大きな進歩と言えよーぞ。うん。

個人的には、《暦年》と《光の火曜日》第1幕との違いが凄く面白かったです。なーるほど、こうやって最初の構想がルシファーとミカエル、それに本日はそれほどよく判らなかったがエヴァも絡めた世界へと変容されていくのね、ってこと。
考えてみたら、《光》全体の中でも、ミカエルとルシファーが真っ正面から「歌」という形で対峙し合う箇所って、もしかしたらここだけじゃないかしら。無論、第2幕の宇宙大戦争シーンはあるわけだが、面と向かって歌い合う場面はないし。《水曜日》ではルシファーじゃなくてルシキャメルになってるし、ミカエルがトランペットになってて歌わない。そう考えると、本日上演された場面は、《光》という作品がどんなになってるのか説明するという意味では、もの凄く便利な箇所だったのかもしれないなぁ。

恐らく、サントリーホールに坐っていた殆どの聴衆にとって、目の前で行われていることは「オペラ」の枠内に入るパーフォーマンスだったでしょう。でも、こんなに生オケがガンガン鳴るシーンなんて、この作品全体の中でもほんのちょっとしかない。ここ以外には、《土曜日》の「ルシファーのダンス」でのブラスバンドとか、《金曜日》の子供オケのシーンだっけ(どうにも金曜日というのはよー判らぬのです)、それから《日曜日》の同じシークエンスを合唱版とオケ版で一緒に演奏するというトンデモな場面くらいかしら。

さてもさても、この瞬間に言いたいことはそんなどーでも良い感想ではない。本日の聴衆について。

一昨日、本日と、やくぺん先生は溜池の巨大なホールの中をキョロキョロしてました。というのも、もしかしたらあの連中が居るのではなかろーか、と思いつつ、ある人達の姿を探していたのであります。

今を去ること2年前の今頃、バーミンガムで《光の水曜日》の世界初演がありました。やくぺん先生もアホなことに、ノコノコと出かけたわけであります。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2012-08-26
あの作品の余りにも有名な間奏曲、ってか、実質的な間奏部分、《ヘリコプター弦楽四重奏曲》として知られる音楽というかイベント、そのシークエンスのオシマイに質疑応答が含まれている。そこで司会者さんが、「この舞台のために遙々世界各地から聴衆が来ております」みたいなことを言った。で、ドイツから来て全公演眺めるという猛者、よーするに、カール・ハインツおたくというか、シュトックハウゼン追っかけマンを紹介したわけです。

で、その方が仰るに、俺は世界中のシュトックハウゼンの主要な舞台は眺めて歩いてる、当然、スカラやライプツィヒ歌劇場での各曜日の初演も、前年にケルンで行われた《日曜日》の初演も…わぁお、なかなかごーかい極まりない話じゃあないですかぁ。

へええ、シュトックハウゼン追っかけっているんだなぁ、って感心しましたね。敢えて「呆れた」とは言いません。ま、ある意味、他人様のことは言えませんから。いやはや…

そんなわけで、今回、東京で《暦年》と《光の火曜日》第1幕の連続上演があると知ったときに、まずなによりも、「あのドイツのシュトックハウゼン追っかけマンたちは、勿論、来るのだろーなー」と思ったわけですよ。

だから、あのでっかいドイツ人のオッサンがいるのではないかと、キョロキョロしてたわけです。バーミンガムの会場で売ってた真っ黄色にヘリコプターが書いてある《水曜日》Tシャツなんぞ来て、溜池に登場するのではないか、ってね。

結論から言えば、それらしき方は発見出来ませんでした。

これってね、正直、かなり、ショックでしたね。

だって、この世界に1ダースくらいは存在するらしい腹の据わったシュトックハウゼン追っかけ生命体ならば、TOKIOまでの往復1500ユーロくらいなら、借金しても、手持ちの楽譜やレコード売っ払っても、絶対に工面してやってくるでしょーに。それが追っかけってもんでしょ。そういう人達がいなかった。

となると、これは東京の側の情報発信に致命的な問題があったのではなかろーか、って思わざるを得ない。

普通に考えれば、シュトックハウゼン財団がその公式ホームページで大いに宣伝してくれて、世界中のマニア共が狂ったように東京を目指すという状況が生まれて良かった筈。だけど、勿論、公式ホームページの世界中での上演リストに掲載されてはいますが、そこから日本語対応が出来ない人が最後に辿り着けるページは、ここなんですわ。
http://www.tokyo-concerts.co.jp/index.cfm?lang=eg&menu=concertsdetail&id=264
ここから先は、このページに来てしまう。
http://www.suntory.co.jp/sfa/music/summer/2014/

さあて、貴方が「絶対にトーキョーまで行って《光》の火曜日を邦楽版で聴くぞ!」と燃え上がってるドイツ人だとします。英語はまあ、普通に対応出来る。で、このページまで来たら、どーします?もう、ぜつぼーてきな気持ちになるでしょ。夢がガラガラと轟音をたてて崩れ落ちていくと思いませんかねっ!おおい、誰でも良い、誰かその辺に日本語が読める奴いないかぁ、スシバーのにーちゃん、これ読んでくれー!…ってね。

かくて、本日の溜池にシュトックハウゼン追っかけはいなかった。我が愛する日本国は、真の国際親善、文化による友好の格好の機会を、みすみす失ったのでありました。

さても、この事態、どこからどう悩んで良いものやら…ふうううううう…

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