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ランゴーの時代は来るや? [音楽業界]

「20世紀傑作オペラ観倒し超強行軍ツアー」が始まりました。数時間前にシベリアを越えフランクフルト空港に到着。そのまま地下近郊鉄道駅からSバーンで30分ほど、マイン沿いのフランクフルト市内とは反対に向かい、マイン河がライン河に合流する交通の要地、音楽ファンの皆さんにはあのショット出版社の本拠地として知られ、最近では「ブルグミューラーの街」としても知名度うなぎ登り(なのか?)の、マインツに来ております。

なんでこんなところに来ているかというと、今晩、この劇場でランゴーのオペラ《アンチキリスト》の今シーズン最後の上演があるから。明日、ボンで《アクナトン》があり、最初はデュッセルドフルに到着してノンビリして時差調整をするつもりだったんだけど、こんな妙てけれんな作品を見物する機会はそうそうないですから、飛行機が遅れるとか、半分寝ちゃうとかいうリスク込みで、天井桟敷のいちばん安い券を購入、とにもかくにもあのゴージャスなマーラーちっくな音楽にライブで浸れればもーけもの、って演奏者の皆さんには失礼な客だったわけでありまする。

ともかく、フランクフルト到着が定刻で4時半、開演が7時半ですから、ホント、ダメモトとしか言いようが無い。はい。

幸いにも空港にタッチダウンしたのが4時で、荷物を引っ張ってS8のウィズバーデン行きに乗ったのが5時5分過ぎくらい。ま、あのアホみたいにデカい空港としては良くやってくれた。結果、マインツ中央駅に到着したのが5時半過ぎで、駅前の「ショット通り」先にある宿に荷物を突っ込み、シャワーを浴び、W杯見物屋台村みたいになってる旧市街の真ん中を抜けて、巨人に進撃されちゃったような劇場に到着したのが7時過ぎ。夏至も近い空は、まだまだ夕方とも言えない明るさ。
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さあ、なにやらアヤシげな舞台が始まるぞぉ。
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とにもかくにも席に着こうと階段を上がり、指定の入口に行くと、おねーさんが立ってて、「今日はこっちは開けません。そこの階段を上がって正面の席に行き、適当な空いてる席に座ってね」とのこと。なんなんねん。言われるがままに3階正面に向かうと、なーるほど、W杯の裏番組には地味過ぎる作品、今日はこのくらいの入りなのかぁ。20数万人の都市としては立派すぎる劇場は客席は900だそうだけど、天井桟敷はかなり見下ろす感があり、おそるおそる平土間を覗き込むと…まあ、こんなもんかなぁ、というお客様。こういうもんなのかしらねぇ…

ま、それはそれ、とにもかくにも定時に開演し、睡魔と闘いながら糠味噌状態の脳みそをなんとか機能停止にしないのがやっと。もう起きてることを目で追うのが精一杯なもんで、どんな舞台だったか説明する自身がないんだけど…一応、珍しい体験だけに記録しておきましょうぞ。この作品、音楽は録音で聴く限りマーラーか《グレの歌》か、って感じなんだけど、実際にライブで聴くと、うんとめんどくさくなくしたシュレーカーというか、エルガーのオラトリオの不信心者版というか…ま、だいたい、どんなもんかお判りでしょ。

そもそも、オペラではなくオラトリオみたいなもののようで、つまり、ヘンデルの《イエフタ》とか《メサイア》とか、はたまたバッハの受難曲とか、それこそ《グレの歌》とかを舞台上演することがあるわけですが、そういうもんです。ぶっちゃけ、ストーリーは(本来)ありません。アンチクリストが登場し、いろんな不信心の極みなことをソリストが歌う6つの場面から成っていて、最後はどうやら不信心なことはダメよ、みたいな盛り上がりで終わる(この説明、酷すぎるので、真に受けないように)。

この舞台では、最初にキリスト(の味方の天使?)とアンチクリストが絡み合ってるところから始まり、アンチクリストが「大口叩き」とか「悲観主義」とか「万人の万人に対する闘争」とかを仕掛けてる狂言回しみたいになる。《7つの大罪》みたいなもんですが、あれほどの筋もありません。90分程の2幕というか2部構成で、前半3曲の後に台詞が加えられて、話の枠組を作ってます。あ、ドイツ語版でやってました。

もう、ねむくてしょーがないので、もうこれくらい。結論から言えば、このマーラリアンでゴージャスで、何カ所か圧倒的にキャッチーな部分があり(ちゃんと冒頭と最後が盛り上がる)、それぞれの場面はダンスと役者をあれこれ動かした総合的な舞台で…そうそう、《カルミナ・ブラーナ》の舞台上演みたいなもんですわ。ともかく、アイデアがある演出家ならもういろいろやれるし、なんせ人間のネガティヴな部分を思いっきり出せば良いわけだから、才気煥発を炸裂させ続ければOK、という台本。そして、正にそういう舞台でありました。

昨今、バロックオペラが大流行なのは、演出家にとって緩すぎるストーリーやリアリティ皆無な展開がどうにでも弄れるし、弄らないと格好が付かないから、というところがあるのは否めない。それにもちょっと似た、あんでもありの舞台が可能なテキストで、でも音楽は気楽なバロックじゃなくてみんなが大好きなスーパーゴーーージャスな後期ロマン派のドロドロですから、あなた、これ、流行する可能性、大いにあるわいな。

問題があるとすればデンマーク語の壁なんでしょうが、どうやらドイツ語のテキストがちゃんとあるようなので、なら実質、壁なんて無いに等しい。最初の曲で《大地の歌》みたいに歌手が聞こえない、なんてのも後期ロマン派なら演奏者も客も慣れたもんですし。そうねぇ、昔なら日本初演は若杉弘、って感じだが、今若杉の大野氏よりも、それこそ若様インキネンなんかにうってつけじゃないかしらね。

海胆頭やくぺん先生の周囲はどうやら出演者のお友達ばかりみたいで、今日が楽日だから終わったら打ち上げに繰り出そうぜぃ、って空気が蔓延してて、終演後はやんやの大拍手。
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這いずるように劇場を出れば、夏至も近いラインの畔は、まだまだやっと夕方が始まったばかり。

眠い…もうオシマイ。

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