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弦楽八重奏は商売になるか? [音楽業界]

昨晩、上野の文化小ホールにほぼ満員のお客さんを集め、ラ・ルーチェ弦楽八重奏団の演奏会が開催されました。やくぺん先生とすれば新年初聴きで、ま、いろんなことを考えさせてもらいましたです。こちら…って、オフィシャルサイト、全然更新してないんじゃないか、こいつら。
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http://laluceoctet.wixsite.com/laluce-official-web
なんせ、2018年最大の話題だった葵トリオと、今や若手の売れっ子アマービレQのチェロが並んでるわけですからねぇ。

中身に関しては、周囲の口さがない業界関係の方々、特に主催者系の方々が、意外にも、っていうと失礼だけど、素直に喜んでいて評価も高かったようで、web上にあれこれ賛辞の言葉が飛び交ってるでしょうからそっちをご覧あれ。初心者隠居のやくぺん爺の素直な感想は、「へええええ、固定メンバーが集まって年に1回+メイジャー音楽祭くらいのツアーをする、というやりかたなら、弦楽八重奏団って商売になるジャンルなんじゃあーりませんかぁ」ってお下劣なもの。若者が真面目に喜びに満ちた音楽をやってるのになんたる不届き千万な暴言、と怒る方もいっぱいいるでしょうけど、ま、実際、そう思ったんだからしかたない。書いてあることは嘘ばかり、信じるなぁ、をモットーとする当電子壁新聞も、流石に松の内は嘘など吐かんわいっ!←どーゆー理屈じゃ?

昨晩はまずヴァイオリンをふたりお休みにしてブラームスのト長調六重奏をやり、後半は全員参加でブルッフとグリエールのオクテット。両曲で配置を換えてました。アンコールは正月らしいシュトラウス編曲集と、メンデルスゾーンの終楽章。後半に向けて客席も大盛り上がりでありましたです。

考えて見れば、弦楽八重奏という音楽そのものは、「独奏若しくは独奏群+バックバンド」という古典派的なやり方から、バッハ的なガチガチのポリフォニック、はたまたヴィヴァルティ風なコンチェルト・グロッソに至るまで、いろんな書法が可能なミニオーケストラ的な性格がある。それを一曲で極めちゃったみたいなメンデルスゾーン少年の天才としか言いようがない極めつけの大傑作があるわけだが、書法にはそれなりにまだ展開の要素はあるわけで、その後もショスタコのふたつの小品を頂点に、エネスコやら、昨晩弾かれたグリエールやら、それなりに効果的な楽譜が片手とちょっとくらいはある。このラ・ルーチェという団体、2013年に若い弾ける連中が集まって始めた団体なわけですが、過去のレパートリーを眺めるに、メインにオクテットの名曲を据えて、それに遙かに数が多い弦楽五重奏や六重奏の傑作名作をくっつけるというやり方。これならば、合奏団としてのレパートリーはそれなりにあるではないかい。

無論、これだけのメンツを集めて年がら年中演奏会がなくても練習している、という常設弦楽四重奏団みたいなやり方は無理に決まってますが、年に1度宴会みたいに集まって曲を決め、それぞれの仕事のバランスでパートを配置し、マネージメントは8人もいるのだから誰かが所属している大手の音楽事務所にお手伝いを頼めばいい。

何よりも有り難いのは、メンバーが8人いるということ。今の東京ベースで活動している20代後半から30代前半の、所謂「若手新進演奏家」として地方や民間ホールがお安くて話題になる演奏家、はたまた「若手育成」という美しいお題目も付けられるくらいの連中の動員力は、ぶっちゃけ、今や大流行の100席くらいのサロンをいっぱいにするくらいが限界でしょう。でも、それが8人の束になってるんだから、関心がある聴衆がガッツリ重なっているであろうことを考慮しても、まあ、500人くらいの動員はなんとかなりそう。となると、もうハクジュやJTでは無理で、トッパンやら、ことによれば紀尾井、晴海も夢物語ではない。実際、昨晩も文化小ホールが見た目いっぱいになってたわけですし。

それだけ入るなら、切符は3000円くらいにしてもまあ150万円くらいの現金は入ってくる(かなぁ?)だろー。そこからホール使用料、マネージャーさんや広報などの諸経費なんぞを弾いても、ま、ひとり10万は入ってくる。若者の自主公演として、これならまあギリギリやれる、という感じかしら。

なーんて、「どうしてブルッフのこの曲はどの楽章も終わりがこんなにダサいんだ」とか、「グリエール以降は音合わせを殆どしてないみたいでドンドン高くなってないかぁ」とか、誠に不真面目なことを思いつつ、捕らぬ狸の皮算用、ってか、獲ってしまった狸をどうするべーか、って算盤をはじいていた不届き者でありましたとさ。

弦楽八重奏団、商売になるんではないかい。じゃ、どーして今まで誰も本気でこういう形態をやろうとしなかったのか?「誰もやらないことにはわけがある」という永遠の真理を反芻しつつ、まだ新年気分たっぷりの上野の山を降りたのであった。

ちょっとだけ真面目な感想を言えば、まだにーちゃんの矢部やら双紙やら松野やらがカザルスホールの楽屋を散らかして、まだ業界に入ったばかりのうちのお嫁ちゃんに叱られてた頃を思い出し、婆さんやわしらの時代もしっかり終わったのぉ、と呟くばかりの爺でありましたとさ。ちゃんちゃん。

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