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25万人都市のニューイヤーコンサート [音楽業界]

グチャグチャな作文日程を抜け出し、この数年、墨田区在住(?)の新日本フィルさんが力を入れている「金曜昼間の定期」を見物して参りました。

この団体、所謂「定期演奏会」と呼べるシリーズは3本というか、3本半あり、ひとつはレジデンシィをしているすみだトリフォニーでの月一度(弱)の金曜夜と土曜午後の本定期。もうひとつは日取りはそれほどきっちりしてないけど、溜池はサントリーホールで開催される月一度(弱)の本定期(こっちは1公演だけ)。それに、サントリー定期が監督の上岡氏のときはその演目をそのまま持って行って開催する年に4回くらいの横浜みなとみらい定期。そして、すみだトリフォニーでの月一度(弱)の金曜昼と土曜昼に開催される第2定期でありまする。それぞれに宝石の名前が付いてるんだが、よーしらんわい。

問題はこの第2定期でありまして、そもそもは所謂「クラシックに馴染みのない方もいらっしゃっていただける名曲シリーズ」みたいな位置付けで、演目もチャイコフスキーの交響曲やらモーツァルトのコンチェルトやら、ってもんだった。平日昼間の開演時間設定も多く、チケットの値段も墨田区民&在勤者割引とかあったり、いかにも「第2定期」って感じでした。この数シーズン、なにを考えたか、現監督就任後に大変貌を遂げた。土曜日にも設定されるようになり、金曜は昼間が定着。演目も出演者も第1定期よりも攻めてるんじゃないかい、この月はどっちは名曲定期でどっちが本定期か判らんぞ、ってことになってきた。なんせ来月なんて、本定期がブルックナーの5番で、こっちの旧名曲定期がハイドンの《四季》全曲ですからねぇ。

さても、本日の昼定期、無理をしても出かけた理由は言うまでもない、ベリオ管弦楽編曲のブラームスのクラリネット・ソナタのヴィオラ版でありました。演奏は行った甲斐があった、というか、これはやっぱりライブで聴かないと判らない部分があるなぁ、と思わされたです。友美さんの独奏は見事なものであったのは言うまでもないですが、やっぱり「クラリネット協奏曲」としてのオーケストレーションなんじゃないかなぁ、という印象は拭えなかったですね。ぶっちゃけ、独奏が音量と言うよりも音色的にオケに埋もれてしまう傾向があり、それも意図的にそうしているように感じられてしまう。それから、これはクラリネットでもヴィオラでも同じなんだろうけど、ピアノのアタックがオケになるとまるまった響きになってしまい、リズムのモチーフなんかが見え難くなるかなぁ、ってとこも。全体にまろっとしたなだらかな感じになる。これは好き嫌いかもしれないけどさ。なぜか第1楽章と第2楽章の頭にだけはベリオが補筆した導入みたいな部分がくっついていて、一瞬、「あれええええ、ブラームスのクラリネット・ソナタだったよねぇ」と思わされるのはご愛敬。

なんであれ、録音なり放送なりで聴くと、途中に入った方が音量バランスやらマイク位置やらで補正してしまいそうな微妙なところなので、ご興味のある方は是非とも明日の午後にすみだトリフォニーの客席まで出かけて損はないでありましょうぞ。

普通ならこれで終わりで、「現代音楽」カテゴリーにしておこうかなぁ、と思うような駄文なんだだけど、昨日の演奏会、殆どの聴衆の皆さんとすれば、ブラームス=ベリオ以外の部分がお目当てだったのかもしれませんねぇ。

正直それこそ、なんじゃこりゃ、って演目。ぶっちゃけ、「人口20万から30万人くらいの、膨大な予算ではないもののイースターには《パルシファル》くらいはやれる70人くらいのオケを抱えたきちんとした市立劇場が存在するドイツの街で、普段はピットに入ってる連中が年に何度か舞台の上に乗って素オケでの演奏を披露するニューイヤーコンサート」って感じのものでありました。舞台の空気も、聴衆の感じも。そしてなにより、指揮者さんの感じも、「いつもは真面目に難しいことを言ううちらのシェフが、なんか今日は面白いことやってやろうと頑張ってるぞ、やっぱり根は真面目っぽいけどさ」ってね。

それにしても、《シチリアの晩鐘》やら《オテロ》のバレエ音楽なんてよー知らんもんは「あーそーですかぁ、こういうもんなのかぁ」で良いけど、やっぱり《アイーダ》の凱旋の場面のバレエ音楽は、そこだけやられると「えええ、これでおしまいかぁ、凱旋ラッパは鳴らないのかぁ」と欲求不満になるなぁ。刷り込みというのはオソロシーものであります。

この「墨田の裏にして真のニューイヤー・コンサート」、もしかして最大の聞き物はアンコールかもしれません。別に妙てけれんな曲をやるんじゃないけど、恐らくはみんな知らない、でもとっても面白い作品で、出口で何の曲か書かれてるのを見ると、あああなるほどなぁ、あんなにへんちくりんな拍子があったりするのもさもありなん、と思いますよ。今年のザルツでは《オイディプス》やるしなぁ…今年は記念年というわけでもないみたいだけどさ。

この上岡監督の裏ニューイヤー・コンサート、来年も似たような嗜好で用意されているらしく、なんとなんと、メインは《ドン・カルロス》の夢のバレエシーンだそうな。監督、地味ぃいいにやってくれてるなぁ。

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