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弦楽四重奏曲ヘ長調《出会いと別れ》 [弦楽四重奏]

2022年現在、ニッポン列島を拠点に活動する若い世代のチェロ奏者でお忙し三羽烏といえば、「一体何人いるんだ笹沼?」、「もう新作は弾かなくていいから休んでくれ山澤!」、「古楽通奏低音は君しかいないのか懸田!?」であることを否定する人類はいないであろー。そんな若手スーパーチェリストのひとり懸田貴嗣氏が加わる「ガット弦で弾く」弦楽四重奏団、クァルテット・オチェーアノ(うううむ、どうしてもオケアノス、と呼んでしまうなぁ、若しくは「大洋四重奏団」)の演奏会が近付いて参りました。こちら。
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https://quartettooceano.wixsite.com/main/concerts

毎度毎度、この団体の演奏会は「へええええええ、こんなんあるんだぁ」と思わせてくれ、いかに自分が無知であるか、世の中にはどんだけ知らんことがあるかを教えてくれるのであります。ギロヴェッツ大会では「なるほどねぇ、だから《ラズモ》はあんなに偉いのね」と納得させられ、ドニゼッテイでは「シューベルトが若い頃のままで年を重ねたらこんな世界がいっぱい広がったんだろーなー」と膝を打つ。

さても、冬至も過ぎてどんどん日が長くなっていく最初の晩たる12月23日、すっかりお馴染みとなった日暮里のコンサートスペースで大洋四重奏団さんが披露してくださるのは、なあああんとなんと、ゲーゼでありまする。

え、だからなんなの、って言われちゃうと返す言葉がないんだけど、一緒に演奏されるのがメンデルスゾーンの作品44の3と知れば、なーるほどねぇ、と思うでしょ。なんせシューマンだかが「弦楽四重奏曲としての完成度は過去最高」みたいなことを言った(と思う、ちゃんと調べてない、ゴメン)割には、もちょっと人口に膾炙しても良いんじゃないかと思わざるを得ない立派な音楽。端正な古典性と内面に渦巻くロマン性が絶妙のバランスで一致し過ぎちゃって、逆に目立たなくなっちゃってるというちょっと可哀想な名曲ですな。

で、この演奏会の最大の聴きものたるゲーゼであります。音楽史趣味の方は、良ーくお判りでありましょう。そー、メンデルスゾーンが長くない生涯を終えた直後、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のトップシェフの役職を引き継いだ方でありまする。不幸にも、せっかく出世出来たと思ったら、未だに庶民レベルでは尾を引くデンマーク人のドイツ人嫌いの発端たる領土紛争が始まっちゃって、国に帰らねばならず…って経歴。ま、国に帰って偉くなったわけだし、デンマークでは交響曲やら弦楽四重奏やら、それなりにちゃんと演奏されているから、決して不遇な作曲家ではないですけど…

もとい。今回演奏されるのは、《出会いと別れ》なんて不思議な副題が付いた1840年の作品だそうな。当然ながら泥縄でIMSLPのGadeと調べ、へえホントに若書きなんだなぁ、ライプツィヒでメンデルスゾーンらとモロに繋がりがあった頃かぁ、あれ、楽譜は…ないっ。ありません。お手上げで、チェロさんに泣きつくと、「評論家のYさんから提供いただいた楽譜なんです」とのこと。

なるほど、これは大変だ。皆様、この演奏会を聴き逃すと、この先の貴方の人生でゲーゼの弦楽四重奏曲ヘ長調《出会いと別れ》とは、もう二度とコンサートホールで出会えぬ泣き別れになる可能性がありますぞぉおお!どんな曲なの、という身も蓋もない質問に、チェロ氏は敢えて口を濁す、という感じでありました。

さあ、聴きたいだろー、若い作曲家のヘ長調作品となれば、ベートーヴェンの作品18の1みたいなものなのか?そういえば、ゲーゼにはやっぱりヘ長調のそこそこ貴重なレパートリーとなってる弦楽八重奏がなかったっけか?いろいろ妄想が膨らみますねぇ。音を聴くだけなら、ダーニッシュQとかコントラQとか、いかにもな連中の録音があることはありますので、探して下さいな。

では皆々様、クリスマスイブイブの晩、日暮里でお遇いしましょうぞ。

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