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遙か彼方から《カヴァティーナ》が流れる冬至の午後 [弦楽四重奏]

遙か南の島は温泉県標高500メートルの盆地はクリスマス大雪予想で緊張感が走る冬至の日、新帝都は西高東低のカラリの晴れならず、まるで欧州の冬のような半端な湿った空。

そんな中、大川端から汽笛一声新橋を通り、遙か横浜は新装なったみなとみらいホールに参上してまいりました。これを拝聴するため。
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隠居宣言をした爺とすれば、すっかり世代が変わったなぁ、と感じされるスターメンバーを揃えた「年数回集まって演奏する常設フェスティバル・クァルテット」みたいな皆さんですな。なんせ、「普通の弦楽四重奏団みたいにいつも一緒にやらないのが僕たちのウリ」みたいなことを仰ったインタビューを眺め、うううむそういう時代になったのかぁ、と腰を抜かしそうになったもんじゃ。

んで、そういう若き人気ソリストを集めた団体ですから、音楽はまあ率直に言って「今回はこれをテーマにしましょう」ということになるのは当然で、本日はどうやら《大フーガ》というのがテーマらしい。それが上手くいっていたかは…ここでは触れませぬ。ただ、拝聴しながら、「私たちは演奏会で作品130を《大フーガ》終楽章でやったことはありません。ベートーヴェンが最終的に納得して世に出した形がそうでないわけですし、なによりも…」というアマデウスQの故ニッセル先生の言葉が脳内をぐるんグルンしていたのは確かであります。今、わざと記していない「…」の部分が大いに納得出来た、ということなんですけど。

ま、それはそれ。話というのはそこではない。この演奏会が開かれたのが、ここだった、ということ。
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そー、なんとなんと、室内楽やらゲンダイオンガク系演奏会ではお馴染みの、上に乗っかる小ホールではなく、大ホールなんですわ。

うううむ、平日の昼過ぎ、お安い席3000円の若手奏者のコンサートとなれば、当然、小ホールだと思ってたぞ。いやぁ、つらつら思い返すに、コロナ前の10年代にこんな大ホールで弦楽四重奏団の演奏会を聴いたって…あああ、ヴィーンの団体をYS-11が置かれた駅前からダラダラ歩いて行く所沢のデカいホールで雪が酷い日に聴いた記憶がある…くらいかしら。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2014-11-24
溜池の大きなホールでも、最近は聴いたことないし、辛うじて初台はあるくらいか。そう、ミューザ川崎も小ホールがない構造で、確か東響の連中の団体なんぞを聴いた記憶があるけど、あれは何かのプレコンサートだったか。あとはこの規模のホールというと…そうそう、北京五輪直前の人民大会堂隣の巨大UFOドームの大コンサートホールで、アルバン・ベルクQの解散前最期の演奏を聴いたっけなぁ。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2008-07-17
その前の記憶を探れば、ウンジャン時代最後の頃の東京Qとラローチャおばあちゃんをカーネギーの大ホールで聴いたとか、上海Qだかをニュースクールのワシントン広場裏辺りの馬鹿でかい講堂でアホみたいに安い値段で聴いたとか…当然、まだマンハッタン南にツインタワーが聳え、JFKから離陸するコンコルドの爆音が微かに聞こえていた懐かしき20世紀のことですなぁ。

さても、主催者さんがどういうお考えか判らぬが、ともかく本日の演奏会、久しぶりの大ホールでの純粋に弦楽四重奏の演奏会だったわけです。で、もう結論を言えば…うううむ、やはりちょっとキツい、やっぱり席を選ぶなぁ。以上。

実は、遙か温泉県田舎の駅前コンビニで座席指定出来ずに買ったチケットが指定してきた席は、所謂Pブロック。上の写真の席でした。で、前半のモーツァルトとヴェーベルン作品5は大人しくここで聴いた次第。だってね、物理的には音が出る場所から近いわけですから、ここの方が良く聞こえるだろうに、って猿だってアヒルだってそう考えるでしょ。

でもね、やっぱりヴェーベルンの最弱音だけやってるような2,4,5楽章は流石にキツい。後半の作品130は、恐らくはこのホールに対応したやり方で来るだろうから、フーガのバランスとか考えれば頭クラクラしないように、ちょっと別なところにいってみるべぇか、と移ったのがこちら。
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無論、距離は全然遠いし、周囲に人は誰も居ませんです。はい。

さてもさても、驚いたことに、物理的な音量測定とかしたらどうだかわからんけど、聞こえてくる音像のイメージとしては、こっちの席の方が大きいみたいに感じたんですよ。

それがどうしてか、全然判りません。ただ、やくぺん先生のへっぽこ耳にはそう感じた、というだけのことです。

いやぁ、面白いなあ、こういうもんなんですかねぇ。この演奏会、日本野鳥の会的に勘定したわけではないものの、ぱっと見、聴衆は500人くらいは入っていたみたい。つまり、小ホールでは満杯、今時この類いの音楽が盛んにやられるハクジュとか王子とかブルーローズの規模だったら、完全に満杯どころか溢れる状況だった。若い世代の弦楽四重奏演奏会でこれだけの絶対数の客が入るって、とてつもなく凄いことです。その意味では、この会場を使うという主催者の判断は、間違っては居なかった。

とはいえねぇ…今の小さく響きの良いホールでの演奏を前提に勉強してきている団体とはちょっとキャラが違うとはいえ、やはりもう少し良い条件で聴きたいと思ってしまうのは仕方ない。冬至の午後に遙か彼方から響いてくる《カヴァティーナ》なんて、それはそれで渋く枯れた味わいであることよ、と思おうとはするんだけどさぁ…。あ、この若い皆さん、ベートーヴェンじゃないけど、年明けにはこういう演奏会がありますので、もっと聴きたかった方はそちらへどうぞ。
https://twitter.com/mozartsocietyjp/status/1552555203089424384

以上、大いに奥歯に物の挟まった作文でありましたとさ。んで、今年は大晦日には誰が弾くんだっけ。

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