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サントリーサマーフェス2023はホントに祭りだった [現代音楽]

毎年夏の終わりに開催され、新学期前の音大作曲科学生さん達やら若い「ゲンダイオンガク」系奏者が結集する夏の祭り、サントリーホール・サマーフェス2023が今年も恙なく開催されたでありまする。

…っても、今年はいつもの「欧州のメイジャー系現代音楽のプチショーケース」だけでは済まなそうだったのは、プログラム全体像から明らかでありました。

コロナ騒動勃発直前のヴィーン国立歌劇場で「劇場初の女性作曲家新作上演」と盛り上がって上演され、衣装がコムデギャルソンの日本の人だったりしたことでも話題になった(のか、ならなかったのか…)、今がインの作曲家オルガ・ノイヴェルトをメイン作曲家にフィーチャーした毎年恒例王道の正統派欧州メイジャー系現代音楽潮流紹介と、毎度ながらの音大生夏祭り「芥川也寸志作曲賞」、それに加えて、どういうわけか同時期に行われているのに神社の向かいで勝手にやってるみたいな不思議な扱いになっていた湯浅穣二作曲家の個展
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20230825_M_3.html
更には溜池離れた内藤新宿でも、日本フィルさんがモサドやKGBよりもつおいパパを持つカリスマ落合陽一プロジェクトをやってたり
https://japanphil.or.jp/concert/20230823
なんだかトーキョーはスゴいことになってるなぁ、と遙か温泉県盆地からボーッと眺めていたわけでありまする。

んで、話を溜池に戻せば、今年の溜池ゲンダイオンガク夏祭りのもうひとつの柱が、こんなトンデモなものだったわけでありますな。
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/summer2023/producer.html
どういうものかは、上の公式URLをご覧になって下さいませ。やくぺん先生ったら、夏の終わりの関東甲信越音楽祭巡り新帝都編ということで、溜池のこの「ガムランもどき祭り」だけは拝見させていただいたわけでありまする。ま、どうしようか迷っていたノイヴェルト様紹介も、結局、室内楽だけ先程拝聴させていただきました。感想は…オリベッティのホントの音を知らん奴はダメじゃな、でんがな。

さても、その「ガムランもどき祭り」でありますが、どんなものだったか、後の自分の為のメモとして記しておきましょうぞ。先週の金曜日からの3日間、ブルーローズの真ん中にインドネシア風東屋を仮設し、ステージ側ではない2面には屋台が出て、ガムラン楽器にインスパイアされた創作を次々と繰り広げ、客はその辺に勝手に座ったり寝転がったり、はたまた並べられた椅子に腰掛けたりして見物する、という出し物。正に「神社の境内に舞台が仮設され、なんかいろいろやってるわい」ってものであります。これが話題になった、入場者数確認を兼ね入口で渡されるうちわ。くれませんじゃだっく!
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東京音大の助教くんが頑張るガムラン・アサンブルのワークショップなんてまともなものから、一昔前の前衛舞踏風のアヤシげなオジサンが妙な人達にあれこれ指示しながら踊る出し物やら、なんとも騒々しい創作インドネシア影絵やら、それこそ深川八幡さんの夏祭りで何故か毎年披露されるガムラン・アンサンブルなんかと似たようなテイストのものが、ニッポン国クラシックの聖地たる溜池で繰り広げたわけであります。

んで、その集大成となったのが、昨日日曜日夕方からの「ガムランを脱構造化した作品群」としか言いようのない大ホールでの演奏会。個々の作品については…まあいいや。大真面目なガムラン再構成、かなりあざとい今風のいかにもガムランっぽさ狙いの新作、たった20年前の作品というのにすっかり古典的な佇まいのホセ・マサダ作品、と紹介され、最後にステージに上がったのは、野村誠の新作であります。

そもそも「作品」といっていいのか良く判らない野村氏の仕事、それこそハシモト文化切り旋風吹き荒れる大阪でセンチュリーが生き残りを賭けたワークショップ型創作くらいから、北千住近辺で盛り上がってるだじゃれ音楽祭、そして野村氏が京からキューシュー島は熊本に居を移してから日田やら不知火やらで展開されている様々な活動を遠くからぼーっと眺めている身とすれば、あれこれ納得の「集大成」。ヒジャブのお姉さんがこともあろうにウィスキーの瓶叩いたり、相撲取りが出てきたり、最後はみんなが舞台上で綱引きしたり、ってのも、「あああ、野村誠ワールド、とうとう溜池はサントリーの舞台にまで上り詰めたかぁ」って感慨ひとしおでありましたです。野村さんとすれば、いやいやこんなもんに感慨されても困る、と仰るでしょうけど、天下のサントリーがとうとうこういう「コミュニティ巻き込み型創作」をひとつの立派な「2023年の最先端現代音楽のあり方」として認めざるを得なくなったんだなぁ、と感無量でありましたです。はい。

とはいえ、これまでの野村氏の地域プロデュース型創作活動に触れる必要などなかった王道の評論家さんやら、諸井誠・柴田南雄的な正当派「西洋音楽史」を常識と信じる真っ当な教養人知識人の皆さんは、これをどういう風に受け取るのであろうなぁ、とお節介なことを思わずにもいられないのでもありまする。所謂「ゲンダイオンガク」に無茶苦茶詳しい人であればあるほど、この野村作品の相撲やら綱引きは
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元祖さぶいダジャレの帝王シュトックハウゼンの《光の火曜日》第一部のパクリと思うかも知れないし、インタビュータイムやら聴衆に向けてのインスタ撮影の煽りなどは、同じく《水曜日》のディスカッションタイムと同じと言われそうだし。「自分の知っているものの文脈で目の前に起きていることを理解する」という人間の習性からすれば、この舞台にどんな議論がされるのだろーなぁ。いやぁ、楽しみだこと。ま、少なくとも野村氏ご本人は、そんなことは一切考えてないでしょうけど。

サントリーホール・サマーフェスティバル、今年はホントに「夏祭り」でした。こういう「例大祭」(裏祭りかな?)が3年に一度くらいあると、それはそれで面白いんだろうけどねぇ。ちなみに来年は、アーヴィン・アルディッティ御大半世紀祭りだそーな。王道なりっ!

[追記]

その後、昨晩の大ホールでの演奏会を巡ってはSNS上でいろいろと興味深い議論が展開されているようですがぁ、残念ながらというべきか、あの作品をシュトックハウゼン作品と関連付ける議論は全く出てきてませんね。うううむ、《光》チクルス、まだまだニッポンのゲンダイオンガク界隈ではマイナーなのかぁ…

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