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ミュンヘンARD本日からピアノ三重奏が始まりますがぁ… [音楽業界]

音楽業界に秋の到来を感じさせる風物詩といえば、8月末から9月2週くらいのミュンヘンでバイエルン放送が実質上の運営中心となって開催されているミュンヘンARD国際音楽コンクール、日本語文化圏では所謂「ミュンヘン・コンクール」でありましょうぞ。ほれ。
https://www.br.de/ard-music-competition/index.html
「コンクールのデパート」と呼ばれ、今年は上記サイトをご覧になればお判りのように、ハープ、コントラバス、ピアノ三重奏、それにヴィオラが課目とされます。ちなみにコントラバスの審査員には文屋充徳さん、ヴィオラには清水直子さんがいらっしゃいますな。←やくぺん先生のような隠居爺になってくると、そっちが中心の視点になってしまうのじゃわい、いやはや。

中央駅ホーム西の隅っこからトラム一駅くらい歩いたバイエルン放送スタジオ、ミュンヘン音楽演劇大学2階ホール、アルテミスQが奇跡の優勝のときには一次予選から本選までずっと会場になったけど最近は使ってないみたいなそこから一ブロック東のアメリカ・ハウス、ガスタイク小ホール、川向こうのプリンツレゲンテン劇場、そして独奏系の本選は言わずと知れたヘラクレスザールと、この街の主要会場を使って複数科目が一斉に開催され、一次及び二次予選は無料で開放されるので朝から御隠居が詰めかける大都市型イベント。この若者の音楽祭りが終わればいよいよ秋本番、ミュンヘン中がオクトーバーフェスト一色になり、ただでさえ高い宿代が気の触れた値段にまで高騰するのでありまする。ARDコンクールの最中にも市内あちこちでは祭りの準備が進み、いつでも観光客溢れる旧市街のショウウィンドウには民族衣装が展示される、秋だ秋だぁ!

そんなミュンヘン秋祭り第一段でありまするが、先週の記者会見で衝撃的な事実が発表されました。こちら、お嫁ちゃまからまわってきたニュース記事なんですが、なぜか英語になってるぞ。ま、オリジナルは適当に探して下さい。書いてるのはミュンヘンの夕刊紙の文化担当ライターさん。世代的にはやくぺん先生と同じくらい、恐らく、あいつだろうとは思うが、直接の面識はありません。
After BR culture clear-cutting_ ARD cuts back at the music competition _ Abendzeitung München.pdf

ポイントははっきりしていて、このコンクール運営の中心となっているバイエルン放送が2026年から予算を現状の半分にカットする、とのこと。放送収入の先行き不透明さからのカットだそうな。ライターさんは「他にもっといっぱい使ってる部分があるのに、なんでいつも切られるのはそれほどの額でもない文化ばかりなんだ」と怒ってますねぇ。

ま、今のミュンヘンのやり方だと、「予算が半分になったんで、課目を半減して2科目にします」とすればそれまでなんですが、問題はそうなるとどの課目を残すかでコンクールのキャラクターが全く変わってしまう。確実にカットされそうな課目があるし、この記事でも、木管五重奏やらなにやらなくなるだろう、って。そもそも参加団体が今時の大会としては異常な程に多いこの大会、20世紀の「ポッペンの改革」以前、全素点積み上げ法で、優勝は何点以上で第2位は何点以上、という風に結果が単純極まりなく素点によって決まるやり方だった「優勝が出ないミュンヘン」の頃から比べれば、もう課目は圧倒的に減ってるんですよねぇ(そもそもこういう審査のやり方だったから、ソロ課目では参加者50人近いなんて膨大な数の審査が可能だったわけで…)。やくぺん先生が眺めるようになった90年代からだって随分減っていて、澤先生夫妻が3位になってる「ヴァイオリンとピアノの二重奏」なんて興味深い課目はもうなくなっていたし。
https://www.br.de/ard-music-competition/history/laureates/preistraeger-pdf106~attachment_node-cde208ad-d894-429b-a4a2-91459a72f5ce_-14411d6f89fb304703d6152ec071f5f59dc5893a.pdf?

そもそもが、「いろんな理由で演奏家が払底した戦後ドイツの放送局連合が、自分らのオーケストラやクラシック音楽放送を維持するために世界中から人材を集める」という目的で始まったこの大会、そんな使命はとっくに終えているわけでして(オペラ業界だけは別かな)、改革があるのは仕方ない。コロナ後のいろんな状況で、例えばグラーツのシューベルト&現代音楽コンクールはリート、ピアノ三重奏、弦楽四重奏という3科目での開催が、昨年から弦楽四重奏が落とされました。また、ミュンヘンと並ぶデパート型コンクールの代表たるジュネーヴも今年はフルートと弦楽四重奏だけで、なんと14団体が参加する一次審査は公開のウェブ上で行われ、その結果を受けてセミファイナルでやっと6団体がジュネーヴにやってくる、というビックリなやり方になった。ともかく人の数が増えてコストがかかるアンサンブルのコンクールとすれば、もう予算削減にはこれしかない、ってか。
https://www.concoursgeneve.ch/

コンクールは生もの。常に変わっていく。ミュンヘンも変わろうとしているのだろうし、上の記事を眺める限り、その変化の仕方も「あああああ、また今の欧州風じゃなぁ…」と呆れるようなことを言ってるわけだし。

とにもかくにも、今晩からミュンヘンのピアノ三重奏。ストリーミングはセミファイナルからかな。

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