SSブログ

アウトリーチ報道でのタブー:実践編 [音楽業界]

昨日の当電子壁新聞記事に対し、個人メールへの反応がいくつかありました。で、どうも案外と世の中には報道関係というか、ものを伝えるという商売に従事なさっている方でも基本的原則をご存じない方もいるようで、非常にビックリしてます。

晴海を拠点に中央区や湾岸地区のアウトリーチを定款のひとつに活動するNPOトリトン・アーツ・ネットワークが、先頃やっと出版した『アウトリーチ・ハンドブック』でも、この問題は取り上げる予定があったそうです。http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/archive/20070131なんのかんので触れられなかったのは、この冊子にとって残念なことでした。「アウトリーチの広報をどうするか」は、NPOなど「スポンサーからお金を貰ってこないとやれない団体」とすれば、非常に重要なことですからね。改訂版をつくることがあれば、この辺りはきっちり詰めて欲しいなぁ。

なお、このハンドブックでも、掲載写真を巡って、アウトリーチ先、特に学校の先生とは綿密なやり取りをしたそうです。編集側が使いたいような「良い写真」の殆どが、学校側からの要請でボツになったとのこと。だって、表紙だって、カッコ良さを第一とする昨今のデザイナーさんならば一発でボツにするようなダサさでしょ。でも、この写真でなければならない。

どうしてか、判りますかぁ。

さて、というわけで、結果的に素人ながらフォト・ジャーナリスト的な動きをせねばならぬことが多い小生の具体例をお見せして、ご理解いただきましょう。2月のパシフィカQによる中央区アウトリーチのときの写真。作文の問題ではなく、あくまでも写真の問題なので、「売文家業」カテゴリーではなく「音楽業界」にしておきます。

まずこの写真。ご覧あれ。

この写真はギリギリOKです。もうちょっと右に振ったら完全にアウト。まあ、このくらいなら、右側の被写体がもうちょっと入っても、横3センチくらいまでの小さな図像ならOKかもね。

この日、小生は50ショットくらいは撮ってます。で、実際にNPOが広報に使ってるのは、このショットだけです。他は参考用で、絶対に外には出しません。ほれ。

しろーとが撮ったものとすればなかなか使えるかな、というくらいのものですね。残念なのは、シッビの顔が入ってないこと。でも、シミンの表情が良いし、いかにもアウトリーチで弦楽器の弓の説明をしてます、ってのが判りますから、そこは諦めましょう。なんせプロがやってる仕事じゃないんだから、その瞬間にファインダーの中の全てに意識を巡らすなんて不可能だもん。

で、もうひとつ。別の学校の体育館。演奏家の背後から撮影し、それでもアウトリーチだと判る、ある意味でとっても珍しい1枚。問題の朝日新聞の写真と似た構造ですけど、このショットなら使えます。ちょっと趣味的なアングルになるので、アウトリーチの状況の説明というよりも、いくつも写真を散らばらせて紙面を作るときなどに用いるくらいでしょうけどねぇ。実際、これは使われなかったんじゃないかな。

いかがですか、以上の3例で、アウトリーチ報道写真のタブーがお判りいただけたと思います。全てのショットに共通なことはなにか、そして、昨日お伝えした朝日新聞の、プロカメラマンが撮影しているけど、まともな編集者ならば絶対に掲載しないはずのショットとの違いはなにか。

最後に、非常に珍しい例。

昨年暮れ、ハノイの盲学校にミドリさんチームがアウトリーチしたときのもの。このようなショットを撮って堂々と発表するのは、日本や北米では不可能でしょう。無論、南米なんぞはもっとダメでしょう(ヨーロッパはアウトリーチという概念が殆どないから、議論しても意味がない)。
ヴェトナムの場合、「ここはこのような子供らを預かっている場所です」と施設そのものが世間に広報する必要がある。だからこれでもOKなんですね。
この後に訪れたホーチミン市郊外のNGO施設など、施設で育っている子供達の写真を広報用として渡されたほどでした。残念ながら、この施設が下さった写真は、日本のメディアでは絶対に使えません。理由は、ここで議論していることと正反対。現在の日本の商業メディア(皆さん、「商業メディア」を「マスコミ」と呼称するのは、「売春」を「援助交際」と呼ぶのと同じですよ)は、読者や消費者に不快感や不安感を与えるようなショットは一切掲載しないからです。
戦争報道だって、自軍兵の死体や、自軍兵が殺した住民などは絶対に晒しませんからね。「嫌なモノは事実であれ隠し、見ないようにし、存在しないものとし、あると言い立てる者は黙殺若しくは排除攻撃する」--今の日本語文化圏はそういう社会なんです。貴方が商業メディアを経由して接している全ての情報は、きっちりコントロールされたものなんですよ。
良い悪いの問題じゃなく、事実としてそうなんだから、あたしに文句を言ってもダメ。

おっと、話が別の方向にぶっ飛びそうなんで、これでオシマイ。本日はかなり本気のレクチャーモードでした。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2