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当日プログラムはありません [音楽業界]

先程、みぞれ混じりの大雨のワルシャワ・フレデリック・ショパン空港(!)に無事到着。まだチェックイン出来ない宿のロビーで記してます。昨晩のハーレムのお話。

11月19日、ハーレム・フィルハーモニーで行われたベネヴィッツQの演奏会に、当日配布のプログラムはありませんでした。だから、共演したクラリネットさんの名前は、未だに判らないままです。

このフィルハーモニー、古い建物3つ分くらいの外壁を維持し、それらをガラス空間で繋いだ、とっても今時の造りになってます。前日に訪れたアイントホーフェンのフィルハーモニーもそうだけど、なんだかロビーが猛烈に広くて、まるでちょっとしたシティホテルのロビーみたいにくつろげるようになってる。基本的に巨人族の国なんで、みんなギリギリまでオーディトリアムの席に着かず、外にいたがる。だから、日本のホールに比べると、ロビーは大事です(日本のホールって、演奏の間にも座っている人がすごくいっぱいいるでしょ。あれはかなり特殊な風景なのだよ、世界標準で考えると)。演奏が終わるとみんなスタンティング・オーヴェーションになるのは、なんのことはない、一刻も早く立ちたいからなんだろーなー。
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もとい。そんなモダン素敵な、インテリア好きのお嬢さんなんかが「ああ、オランダデザインって良いわねぇ」なんて憧れそうな空間なんだけど、劇場機能としてはなんともノンビリしてます。セキュリティはいい加減だし(渋滞に巻き込まれ大遅刻したベネヴィッツを延々と待つのに、勝手に小ホール前ロビーに入り込んでも何のおとがめもなし!)、ベネヴィッツが練習を始め、音の確認なんかをした後で、後ろがガラガラと閉まってピットの上だけを使うみたいになって、おかげで音響がまるっきり変わっちゃうし。西欧派チェコの若いお父さんたちも、流石に呆れてました。いやはや。
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てなわけで、ハーレムの街のじーちゃんばーちゃんばかりが集まった演奏会が始まるや、クラリネット氏が曲の解説をオランダ語で(当たり前だ)始めます。周囲を見渡すと、誰も当日配布の刷り物を持っていません。結局、最後までクラリネット氏のステージからの解説だけで演奏会は終わりました。なぜか知らぬが、周囲のおばちゃんたち、やくぺん先生に「そこのお人、今の曲はなんという作曲家なんじゃろかね」とえーごで尋ねてくる。「ハウエルズの幻想五重奏曲、というけったいな曲でありまする」とお教えするやくぺん先生、ハウエルズという作曲家は20世紀前半にイギリスで「ファンタジー」という御題で次々に書かれた室内楽曲をいくつも手がけていて、幻想四重奏という曲なんて第2ヴァイオリンが活躍するんですよぉ、なんていつのまにか説明させられてさ……って、わしゃ、ハーレムのホールの当日プログラム書きなのかぁ!

終演後、じゃあ初夏に東京で会いましょう、とベネヴィッツQに楽屋で挨拶ついでに、クラリネット氏に「今日の曲目解説がないのは、ここではいつものことなの?オランダではコストカットのため当日配布物を廃止したの?」と尋ねたら、最後まで名前の判らなかったクラリネット氏、寂しそうに虚空を見据えつつ、応えて言うよう、「なくされた」。

へ????

いや、金曜日に出来てたんだけど、ないんだ。どうやら、ホールの奴らがどっかにやっちゃったらしい。周囲でベネヴィッツの連中、(苦笑)としか言いようのない顔してます。日本じゃあありえないだろー、ってね、そりゃ、日本とかの問題じゃないわ。主催者が準備して送りつけてきた当配布物を、会場の側が紛失しちゃうなんて事態、きいたことないわい!

かくて、ベネヴィッツQの2008-9世界ツアーは、恙なく(ううううん…)続いております。年が明けると過酷な北米ツアーが待っている。初夏に晴海に至る頃には、彼らはもっともっと打たれ強くなっているでありましょーぞ。

それにしても、「どうして?」と尋ねていなかったら、「オランダでは当日プログラムを廃止する傾向にあるようだ、ヨーロッパのコンサート業界不況はそこまで深刻なのだ」なーんて素っ頓狂なこと、えらそーにとくとくと説いていたやもしれん。いやぁ、なんでも判らぬことは尋ねてみるものだわい。うん。

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