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ユニヴァーサルとハリソンパロット破談 [音楽業界]

このネタは数週間前なんだけど、そろそろニュースがウェブ上で消え始めているので、慌てて記しておきます。

ええ、昨年来(だと思うが)、世界の音楽業界で非常に大きな話題、というか、みんなが「おいおいおい」と頭を抱えていた事態があります。恐らく、日本語の表のメディアで議論されたことはないだろうし(編集者さんと話をしたのでレコ芸などが触れたかもしれないけど、大きく記事として扱ってはいないでしょう)、演奏家の個人動向などを追いかけているファンによる日本語ブログなどでもまず取り上げられていないことでしょう。だって、ファンにいろいろ情報を気楽に漏らす音楽家にしてみれば、最もファンには語らない類の内容ですので。

めんどーなので事実関係のみを記しますと、昨年来、メイジャー・レーベルが若手アーティストに対して、「専属レコーディング契約の条件として全ての演奏会から広報マネージメントフィーを徴収する」という、トンでもないことを始めていたのです。

業界内では知られたこととはいえ、殆どの音楽ファンの皆様には、なんなんじゃそりゃって事態でしょうねぇ。昨年にあった一部若手大物アーティストのレーベル移動の理由は、無論、これです。♪らんらららんららららんらん、ゆんでぃゆんでぃ…

具体的に何パーセントくらいを収めろと言っているのかは流石にこんなあやしー電子壁新聞に書くわけにいきませんけど、ともかく、大手はみな始めてしまった。禁断のパンドラの箱を開いてしまった、って感じですね。
結果として、机を叩いてメイジャー・レーベルとの契約を止め、友人のプロデューサーがやってるインディーズというか、マイナー・レーベルに移った、なんて連中もいます。ぶっちゃけた話、弦楽四重奏業界はほぼ全滅です。メイジャー・レーベルと若手弦楽四重奏が専属契約を結ぶのは、この先は極めて難しくなるでしょう。

これ以上記すといろいろと語弊がありそーなんで、ここまで。幸か不幸は、小生は日本のメイジャーレコード屋さんとの商売は皆無なんで、喋ったところでなんの実害もないんだけどさ。

以上が本日のネタの前振り。で、ニュースはこれ。もうあちこちの経済記事は消えたり有料アルヒーフになってるみたいなので、英語圏音楽ジャーナリストのブログ記事をどうぞ。
http://www.artsjournal.com/slippeddisc/2010/10/breaking_news_deal_of_the_cent.html
お判りでしょうか。上半分に記してある内容を前提にしないと、何を言ってるのかちんぷんかんぷんだと思いますけど、よーするに、「ドイツ・グラモフォンやらデッカやらフィリップスを抱えるユニヴァーサル・ミュージックが、イギリスの大手マネージメント会社ハリソン・パロットと経営統合交渉を行っていたのだが、破談になった」という事実を受けての感想を記したものです。

なお、この記事を書くことにしたもうひとつの理由は、HMVジャパンのクラシックニュースサイトに、この内容がベタ記事として上がっていたからです。かなり下の方。
http://www.hmv.co.jp/news/article/1010120001/
この記事をいきなり読んでも、背景を理解していないと意味はなーんにも判らぬだろーに、でも出ちゃったんだからしょうがないか、ってわけ。HMVジャパンでこのニュース原稿を書いた方も、流石にこれじゃあ意味が判らんじゃろってか、事の重大さに気づかれないよう(レコード屋さんが自ら「レコードはアーティストの広報ツールに過ぎない」と宣言したようなもんですから)、敢えてさり気なく背景説明を加えて下さってますけど。

もうちょっと客観的な内容は、来月号の英国業界紙が届けば判ると思うので、そこでまたお伝えするかも。ともかく、今の世界はこんなことになっとるんだ、というお話でした。

こういう生臭い業界生き残り話と、「芸術を税金で支援するのしないの」なんて話とを、脳内でどう繋げたら良いんじゃろね。いやはや。クラシック音楽は絶滅危惧種、という一般論を傍証する話なのかな。

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北

スミマセン、ご想像のとおり酔っぱらっております。
繊細なレイアウトと美しい印刷で世界に名のとどろくニッポンの出版業界が「雑誌の広告獲得額、前年比(たしか)20%減 電通調べ」などという状況下で選択したビジネスモデルを欧州人が劣化コピーした、ちゅーことでしょうか。違いますねスミマセン。

「なんで録音会社の人間をワシが養ったらならんのや」
「なんで客を呼べない演奏家の宣伝を俺達がしなきゃいけないんだ?」
という争いが聞こえてきそうな。

流通は流通、演奏家が居つくor呼ばれて訪れる状況を構築しつづける手段とはとりあえず分けといたほうが…とシロートは思いますです。



音楽を聴くのと探鳥は同じで、検分しようと思ったら相手の居るところに行かなきゃいけないし、行ったからと行って相手がこちらのご期待に沿ってくれるわけでもない。不自由なものです。
それが面倒ならネット上のコンテンツ=流通物、で我慢するしかないし、もしかしたらそれで満足してしまうかもしれない。
鳥を見るというのは実は見ているのは分単位、運が悪ければ出会いがしらの数秒、その前後の何時間かはプロミナを担いで吹きさらしの田んぼや干潟の堤防をとぼとぼ歩いているだけです。実はその「とぼとぼ中」の五感の記憶がかなり大事なものだったと後でわかったりする。

「とぼとぼ」を省略させてくれるのが「流通」のありがたさですが、これだけネットで便利になったならもういいんじゃないの?とも思います。とはいえ、なくなったら困りますけど。とはいえいえFMがあれば十分なんですけど。




演劇は流通とは相容れません。生で見た舞台がBSで放送されたことが何度かありますが、カメラを通した=カメラの意図が入ったものは、自分の印象と全く関連づけることができません。
そこらへんを肌で分かっているから、演劇関係者は音楽分野とは全く違ったものの考え方をするのだと思います。

失礼しました。
by 北 (2010-10-20 23:38) 

Yakupen

北様

酔っ払い発言とのこと、削除をお求めならば、その旨お伝えくださいませ。

とはいえ、ご発言にある演劇関係者と音楽関係者のライブに対する感覚の違いは、確かに仰る通りだと思います。演劇の連中がこんなに劇場法の動きや各市町村の市民会館レベルでの拠点作りに必死なのは、所詮はどんなに頑張っても演劇はライブ以外では伝えられないからなんでしょうねぇ。音楽だって、どんなに立派な再現でも、小生はモニター画面でのオペラは参考資料にしか思えませんもの。

by Yakupen (2010-10-21 15:37) 

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