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ソウル市長が辞任すると… [音楽業界]

当電子壁新聞では意外にも頻繁に取り上げてるソウル市長のお話。

昨日、ソウルで住民投票が行われ、こういう結果になりました。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2011082502000038.html
この住民投票、小生らがソウルにいたときに盛んに街頭で賛成反対両陣営がアピールを繰り返しており、投票にあたっては与党側から軍隊に対して投票を強要するような動きがあったり(いずこも同じじゃのぉ)、かなりバタバタしたみたい。結果的に、多数派の市議会の主張を直接住民投票でひっくり返そうとした市長の思惑は投票率が低すぎて住民投票は成立せず(これ、日本でもあるといいシステムだなぁ)、思惑外れ。「住民投票で給食無制限無償化が通ったら辞任する」と大見得を切っていたもんだから、辞任せざるを得ない状況になってきたわけです。

日本では既に日本を越えた韓国経済のパワーとか、韓流ソフトの野放図な流入が右翼系の方々を刺激しているとか、景気の良い話ばかりが伝わるわけですけど、この学校給食無償化騒動というのは、学校給食の代金を払うのが苦しい人々がいっぱい出て来ているという現実を背景にしているわけで、つまり、「勝ち組」と「負け組」の経済格差がそこまで広がってきている、ってことでんがな。ましてや「勝ち組」に乗っかったハンナラ党の市長が「負け組」の住民投票ボイコットの訴えにあっさり負けちゃったんだから…

さても、この話と「音楽業界」がどう繋がるのか。

表のメディアではだーれも口に出来ないことなんでしょうけど、韓国や中国社会では、クラシック音楽とか西洋美術(現代美術を含む)などのエスタブリッシュメントな(ってか、エスタブリッシュメントの空気漂う)ファインアーツは典型的な「勝ち組」のアクセサリーなんですね。
韓国でなぜあんなに良い歌手が出てくるか、それも男声歌手が出てくるかといえば、富裕層の次男などがイタリアに留学して声楽をやる社会的な傾向にあるからだという。統計的に正しいかは知らぬが、まあ業界関係者なんぞがそう感じているというのだから、きっとそうなんでしょう。
ともかく、楽器をやったり美術をやったりするのが、良いとこのお嬢ちゃん、お坊ちゃんの習い事として確立していて、その結果、膨大な演奏家・芸術家予備軍が生まれている。そこまでは日本だって同じかもしれないけど、そこからがちょっと違う。どうやら中国や韓国では、そんな方々が比較的真っ直ぐにアーツを消費する側にまわってくれるらしい(例えば、この秋のベルリンフィルの北京やソウルでのチケットの値段は、東京と良い勝負になってきてます、それで売れてるんだからね)。ぶっちゃけ、西洋ファインアーツは極めて足腰の弱いバブルっちー状況の上に乗っかってるわけで、今の欧米音楽業界のマーケットとして日本軽視、中国韓国重視という姿勢は、現場を眺めれば極めてアブナイやり方だと誰にでも感じられる。ま、それはそれ。

ソウル市長というポジションは、今の李大統領もそうですが、青瓦台に向けた有力なステップのひとつで、今のソウル市長も常に大統領職を視野にいろいろ動いてきたわけです。で、富裕層を背景に支持を伸ばしたいときに、ソウル市長(ばかりではなく、恐らく地方都市でもそうなんでしょうが)のやる手が、文化芸術施設の充実なんですわ。

ああ長かった。

我らが東京都知事イシハラ氏に匹敵する滅茶苦茶なキャラで売り出し、道を川に戻したり、ポンコツオケだったソウル市フィルにチョンさんを向かえて今やDGからCDを国際リリースする勢いのソウルフィルに育て上げちゃったりした現大統領の前李市長に対抗し、呉ソウル市長もブンカをやって勝ち組からの支持を得ようとしていました。漢江に浮かぶ島を市立オペラ劇場を中心とする市立アーツセンターにする、って李市長の構想を引き継ぎ
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2005-09-06
ここで紹介した
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2010-07-09
ハイドン音楽祭と提携してモーツァルト・テーマパークを作る、って話に組み込んでいたそうな。これ、先頃、ソウルの業界関係者とサムゲタン喰いながらした話でありますので、ま、「書いてあることはみんな嘘」がモットーの当電子壁新聞の本領発揮と思って下さいな。

てなわけで、昨日の住民投票で呉ソウル市長側が負けた御陰で、この漢江モーツァルト・パーク構想がおじゃんになる可能性が高くなってきた、ということ。

以上、政治と文化が密着した社会のお話でありました。幸か不幸か、日本国では御上主導ブンカが選挙の結果でドラスチックに変わるのはなかなかお目にかからないかもね。それが良いことかどうかは…

追記
どうやら、予想通りのことになってきてますね。
http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1531285.html
引用しちゃうと
「漢江芸術島造成、ソウル港造成など、他の漢江ルネサンス事業の将来も暗い。敷地買い入れと設計が終わった状態で、市議会の反対により進展が見られずにいる漢江芸術島造成事業は推進が難しい展望だ。2014年までに6735億ウォンをかけてノドゥル島にオペラ劇場と美術館などを作ろうとしていたこの事業は、昨年末に市議会が予算を全額削減し民間投資側に方向を定めたが、オ市長の辞退で投資家を探すことは容易ではないと予想されるためだ。」
ってところが、上の話のことです。

ちなみに、これが絵に描いた餅になりかけてる施設の案内。なんともバブルっちくて景気良いもんですねぇ。
http://japanese.seoul.go.kr/gtk/news/news_view.php?idx=10390
だけど、こういう「モニュメンタルなアーツセンター」って、それこそ中国にはいっぱい出来てるし、ドバイのオペラハウスとか、高雄の地下アーツセンターとか、21世紀に入ってからは経済新興国の象徴みたいになってきてて、いささか飽きが来てるのも事実だけどさ。

それにしても、この「ソウルのアカハタ新聞」、なんとも面白い。朝鮮日報や中央日報では伝えない視点からいろいろ書いている。公共事業「ばらまき」に市民からストップがかかり、個人への「ばらまき」が勝った、ということ。さて、反子ども手当の「ばらまき」批判一本槍だった日本の大手メディアがどう報道するかしら。

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yutakarlson

ソウル市長辞任へ 学校給食無料化、住民投票で不成立に―【私の論評】韓国ですら、通用しなくなったばら撒き戦術!!日本は、どう?

ブログ名:「Funny Restaurant 犬とレストランとイタリア料理」

こんにちは。韓国では、先日自民党の議員3名がウルルン島を視察しようとしましたが、拒否されたばかりでなく、反対運動が盛り上がりました。三人の議員の写真を焼くなどの蛮行が行われました。これは、イ・ミョンバク政権が、次の選挙を有利にするための扇動に国民がやすやすとのってしまったということです。ところが、この扇動にのりやすい、韓国でもソウル市内の小中学校の給食費無料化というバラマキ戦術には、さすがに扇動されることはありませんでした。翻って、日本では、2年前の政権交代の選挙では多くの有権者が、子供手当てなどのバラマキ戦術に幻惑されてしまいました。日本の有権者もこと、バラマキに関しては韓国民と同レベルだったのだと思います。次の選挙では、こうしたバラマキ戦術をする政党や、候補者には投票しないようにするべきと思います。詳細は是非私のブログを御覧になってください。
by yutakarlson (2011-08-26 09:40) 

Yakupen

yutakarison様

コメント、有り難うございます。ただ、小生は貴殿とは相当に違う考えです。

子ども手当は「ばらまき戦術」だとは全く思っていませんし、ソウル市で起きているこことも、そうは思っていません。いずれにせよ、結果的にはソウルでは非富裕層の反乱という形で、呉市長の「ばらまき」アピールが負け、無料化支持派が勝利したわけですしね。
ここで行われていることは、社会の基本的なお金の流れを、企業から個人に換えていく構造改革なわけです。当然、これまでお金が流れていたところにいる人や企業、団体、自治体とすれば、そんなの困りますから、金が個人単位に動いていくと「ばらまき」という批判をして、なんとか阻止しようとする。

そこで行われているのは「税金の奪い合い」という正真正銘の権力闘争です。あらゆる方法を使って相手を攻撃して当然です。既得権のある側とすれば、広告でコントロール出来るメディアを利用して様々なアピールをするでしょうし、そういうことが出来ない側は人を動員したりするわけでしょう。

この話をし出すとキリが無いし、どっちかというと家で酒飲みながらするような話なので、これまで。ただ、「ばらまき」と批判する方には、「これまでは土建屋さんや農協、自治体にばらまいてきたんじゃないんですか」と反論させていただきます。そういうのは「ばらまき」とは言わないのだ、と仰られるでしょうけど、小生にはとてもそうは思えません。

ばらまき戦術をやったところに投票するなというならば、半世紀に亘ってやってきた自民党や、与党時代に様々なテクニックでばらまきをやったばらまきの達人たる公明党には入れられなくなる。やっぱり共産党以外にない、ってことになっちゃいますねぇ。

この話、もう繰り返しません。正直、「ばらまき」議論は無意味だと思ってます。ただ、小生は軍隊に20億円の戦闘機を買うなら、その分をばらまいた方が余程良いと思ってます。失礼ですが議論をふっかけられても応えません。スイマセン。忙しいんで。失礼いたします。

by Yakupen (2011-08-26 11:08) 

Yakupen

一番上のコメントを下さった方が、なにやらちょっと事実誤認をなさっているような気がしますので、凄く明快な表現の記事を引用しておきます。中央日報の記事です。
http://japanese.joins.com/article/123/143123.html?servcode=200&sectcode=200

by Yakupen (2011-08-26 12:06) 

Yakupen

ソウル市側、824投票結果に対する実質的なサボタージュ行為ですな。
http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1531135.html#more
政権交代直後の日本国官僚団の動きを見るようだ。いずこも同じ。いやはや。


by Yakupen (2011-08-26 12:20) 

Yakupen

自分の記事にコメントし続けるのは滑稽だけど、こういう記事が続いて出ているので、ご紹介。「ばらまき」とはどういうことを言うのか、こういう意見もある、ということ。江南のオバチャンの声。
http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1531545.html#more
日本の新聞記事って、一般市民の声を拾うとかいうとき、ここまで大きく普通の人の意見を出しますかね。自分の書いている記事の趣旨に沿って便利な言葉の断片を引用し、コラージュしていく、ってのが新聞記事の基本ですから。
by Yakupen (2011-08-27 14:11) 

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