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オープンハウスに足りないもの [音楽業界]

昨日は溜池でサントリーホールのオープンハウスに付き合っておりました。ま、なんとか原稿に出来そうなんで、いちばんイベントとして意味のあった部分の話は、敢えていたしません。関係者の皆々様、お疲れ様でした。

さても、今や1万人を軽く突破する入場者を誇るまでに至ったこのイベント、始まった頃は5000人が来るか来ないかで、へたすりゃオープンハウスでは先輩の晴海第一生命ホールにも及ばない…なんてことは流石になかろーが、天下のサントリーホールがオープンハウスをやってこんなもんなのかなぁ、と思うような状況でないといえば嘘ではないと言えないこともないのではなかろーか…って感じではあった。

勿論、スポーツイベントとかポップス系のイベントに比べればまだまだ桁違いのちっちゃな動員数なんだろうけど、そもそもが大小ホール合わせて2千数百というキャパが決まってる場所であることを考えれば、午前11時から午後5時までの間にその数倍の人々が訪れているのは、やっぱり大層なことでありまする。ほれ、この有様。なんの特売だ、って感じ。
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このイベントを視察するためにわざわざシンガポールから訪れたエスプラネードだかシンガポール響だかの現場スタッフは、渋谷で地下鉄乗り間違えて11時の開場に向けて広場に長蛇の列を成す人々は眺められなかったそうですけど、ホールに押し寄せる老若男女の群れにビックリしていたとのこと。

ま、ぶっちゃけ、かつてのホールのスタッフのひとりが以前の職場にいた頃にボストンのシンフォニーホールのスタッフとボランティアが大いに盛り上げるオープンハウスを眺め、なんとかこれをやれないかと画策し、別のホールで試み、それを眺めたサントリーホールのスタッフが大いに刺激されて企画として実現し、今やアークヒルズ桜の頃のイベントとしてしっかり地元に根付いた。そんなイベントが更に常夏の島国のスタッフを刺激して…ということになれば、こんなに嬉しいことはないんだけどねぇ。

そんな大成功していると言うべきイベントに、敢えて文句を付けるわけではありませんけどぉ…ここまで来たのだからもうひとつ、と思わざるを得ないことがあるので、過労で死にそうな顔をしているスタッフに嫌われかねないことを百も承知で、記させていただきますです。

サントリーホールのオープンハウスに足りないものがひとつある。それすなわち、ドーネーション・ボックス、でありまする。
オープンハウスは、基本的に無料イベントです。だからこそ、これだけの人が集まるわけですな。なんせ、今の東京の庶民は、毎週末にどっかでやってるこの類いの大規模無料イベントをこまめに情報集めて追いかけてれば、一年365日、そこそこお安く楽しく過ごせる。年がら年中、家族でディズニーランド行ってるわけに行かないですからねぇ。

ですが、無料イベントだからといって無料で出来ているわけもなく、経費はかかっている。当然、誰かが持ち出しているから、無料でやれてるわけですね。昨日、舞台の上で弾いていた音楽家だって、スタッフジャンパー着て動いていた裏方さんや表方さんだって、今年は着ぐるみこそいなかったけどベートーヴェンやモーツァルトになってる方々だって、みんなボランティアでやってるわけではない。ヴィーンフィルやベルリンフィル公演に比べれば雀の涙程の額なんだろうが、それなりの規模の予算があって、はじめてやれる。

「サントリーは営利企業なんだから、ホールの広報宣伝費を使ってそれくらいの無料イベントをやっても不思議はなかろうに」とお考えの方も多くいらっしゃるでしょうねぇ。確かに、数年前まではそう言えたけど、今、サントリーホールは企業の広報部じゃなくて、私企業の関連とはいえ公益文化財団が運営しているのですね。
http://www.suntory.co.jp/sfnd/zaidan/
それに、サントリーホールのレベルになると、不特定多数の方々に営業して、もっとホールに来て下さい、なんて言う意味もそれほどないだろうし。

公益財団法人としてこういうイベントをやる意味が何なのか、内部にも外部にもいろいろと議論はあるでしょう。でも、せっかくこんな有り難いイベントをやるのだから、やってきた人々になにか訴えることがあってもよかんべぇ、ってか、あるべきでしょうに。

で、ドーネーション・ボックス、なわけですよ。

つまり、「このイベントは無料ですけど、皆さん、文化は勿論タダではなく、必要なお金がかかるのです。お金がないと、やっていけないのです。このイベントを素晴らしいと思ったら、うちの財団にお金を下さい、寄付して下さい!」とアピールする、それこそがこういう「文化」の無料イベントの最大の目的なんじゃあないかしら。

こういう話をかつてこのイベントと関わっていた方にしたら、「実は、プランの中にはあるんだけど…」とのことでした。ま、そりゃそーだろーねぇ。

サントリーホールのオープンハウスで正面に透明なドーネーション・ボックスが置かれ、100円玉から100ドル札、はたまた100元札や5万ウォン札なんぞも投げ込まれていく、という風景が普通になる日がやがて来るのかしら。

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