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ミュンヘンARD断念 [弦楽四重奏]

数日前から、目の前の細かい締め切り原稿を全部やっつけ、単行本原稿の最後の数十枚のためのお籠もりに入ってます。とはいえ、数週間離れていたのですっかり調子を忘れてしまい、全然頭が動いてこない。で、決めてしまわねばならないのに放ってあった2016年度前半のツアーの日程作りなどをしながら、ちょっとづつ頭を動かし始めているのが現状。明日くらいからきっちり頭が動くといいなぁ、ふううう。

お陰で、4月から5月の「知らないとこ巡りツアー」とその直後のシンガポール数日、そして問題の6月終わりから7月のエクのヨーロッパ公演&シュトックハウゼン《光の木曜日》ツアーの細かい日程作り(後者は連絡事項も多いし)を、まあなんとかほぼ終えて、あとは細かい連絡と相手の反応待ち、というところまで準備した。

さて、その先に、今年度最大の問題なツアーが待っている。8月末から9月にかけて、バンフ&ミュンヘンという聞くだに無茶苦茶感漂うツアーでありまする。

世界にメイジャー級弦楽四重奏の国際コンクールは片手とちょっとほどあります。で、真の「メイジャー」とは、敢えて暴言に近い言い方をすれば、中身の問題ではない。予算規模と主催者の差配してくれ加減であります。

室内楽の「国際コンクール」の最大の問題は、参加者に来て貰うことにあります。ピアニストはまさか俺のピアノ背負っていきますと言う奴はいないし、ヴァイオリニストは飛行機に乗せるのにもの凄く慎重にならねばならないような楽器を抱えた奴はコンクールになんてもう来ない。だけど、室内楽のコンクールの場合、数人がデカイ楽器を抱えて集まってこなければならない。弦楽四重奏の場合は、ヴィオラ及びチェロが問題になる。どんなに頑張っても、航空運賃は5席分必要になるわけですね。

だから、「コンクールやりますから来て下さい」と言ったところで、おいそれと世界中から若い団体が集まってくるなどあり得ない。飛行機代だけでひとりあたま数千ドル、全員だと1万ドルまではしないにしても、若くて貧乏でまだ営業を始めたばかりの新興弦楽四重奏会社としてみれば、コンクールに参加するだけでもの凄く大きな投資になるわけですね。見返りは、優勝すればまあなんとかギャラ込みで回収できるだろうけど、予選落ちとかディプロマ賞とかだったら、もう営業的には目も当てられない。

参加する側の視点からすれば、ホントにメイジャーなコンクールとは、この部分を補ってくれる大会のことを言います。つまり、参加者の渡航費をちゃんと払ってくれる。それが「メイジャー」の証し。そうすることで、ホントに世界から「おおおおし、いってやろーじゃないか」という連中が集まって来るわけですわ。

そういうことをしてくれているコンクールって、ぶっちゃけ、バンフ、大阪、それにメルボルンしかない。ヨーロッパの大会は、どこも基本は殿様商売で、「みんないらっしゃい」でしかない。だから、ホントはミュンヘンARDも、ボルドーも、ロンドンウィグモアも、はたまたボルチアーニも、みんなローカル・コンクールなんですわ。無論、それでもやってくる連中の水準が高く、ヨーロッパの室内楽に強いマネージャーが注目し運営にも関与しているお陰で出せる実績があるから、メイジャー級と呼ばれるに過ぎない。

そんなこんな、文句言う人がいっぱいいそうなことをサラッと書いちゃって、さて本論。

本年は、メイジャー級大会が3つありますです。ひとつは、来月初めのボルドー。あとふたつは、8月末からのバンフと、9月頭からのミュンヘンARDです。そー、バンフとミュンヘンがくっついてるんですわ。

これがバンフの公式サイトで
https://www.banffcentre.ca/bisqc
うううん、不必要に重いなぁ。で、こっちがミュンヘンの日程サイト
http://www.br.de/ard-musikwettbewerb/zeitplan/index.html
ご覧になってお判りのように、バンフは8月29日から9月4日で、ミュンヘンの弦楽四重奏部門は9月2日から10日なのであります。つまり、完全に重なってるんですわ。

これ、困るよなぁ。1年くらい前に日程が発表されたときから、世界中の若手弦楽四重奏団の間でなんとかしてくれという声が挙がっていた。当然、調整したそうなんですが、ミュンヘン側が譲らなかったという噂が流れてます。それにしても、なんのための世界コンクール連盟なんだか、と思っちゃうぞ。こういうときにはちゃんと介入しろよぉ、総裁は元メルボルン・コンクールのディレクターなんだから、室内楽コンクールの貴重さは判ってるだろーに…あ、彼は今年からの就任で、騒動の時はまだ総裁じゃなかったんだっけ。

さてもさても、困ってるのが無責任極まりないやくぺん先生だけならともかく、これはそーじゃない。世界に50団体いるかいないかくらいのメイジャー級コンクールに応募する力がある団体は、悩んじゃうわけですよね。

いろんな考え方があるだろうが、まあ、最終的にはやっぱり「タダで行ける」という方に有力団体が来るであろう、なんせ今世紀に入ってからのミュンヘンは、エベーヌQという逸材は出したけど、どうも結果の出し方がよく判らぬ、なんだかドイツの放送局と音楽学校がやってるでっかい国内大会みたいな雰囲気になってきてる(…と思うのはやくぺん先生だけなら良いんだけどさ)。

というわけで、やくぺん先生としましては、最初は世界一周切符でなんとか、なんて考えもしたけど、バンフだけ見物してカルガリから成田に戻ってきてしまう飛行機の切符を押さえてしまいました。つまり、ミュンヘン断念、ってこと。

決断の理由ははっきりしている。だって、今年のミュンヘンの演目で面白いのは1次と2次なんだもん。それ以降は、まあ、「ああそうですか」というレベルの闘いになっちゃうのはミエミエ。慌ててカルガリから駆けつけても、「え、どうしてこんなことになってるの」という風に思っちゃうだろうなぁ、って。1次から全部眺めないと、今年のミュンヘンは判らない。

ま、審査員にいろいろあとで話を聞けそうな方がいるので、そっちに本音話を期待して、今年は遙か極東の島国でライブストリーミング放送に齧り付くことにいたしましょう。

誰か、ミュンヘン、行ってくれんかね。日本の団体が出るかもしれんのよね。

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