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メルボルン・リング行きます [音楽業界]

昨晩、賑々しくも目出度くも、日本フィルの新首席指揮者にインキネン氏が就任し、その記念の演奏会で《リング》の抜粋が演奏されましたです。

あたくしめも、2週間くらい前にすったもんだの挙げ句プラハでインタビューをさせていただき、すったもんだの挙げ句そのテープ起こし原本を無事に昨日に向けた資料として事務局に放り込み
http://web.japanphil.or.jp/sites/default/files/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%8D%E3%83%B3%E7%9B%B4%E5%89%8D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC2%20%281%29.pdf
一応、お仕事終わった終わった状態だった。小生のような商売は、もうひとえに人との繋がりとタイミングだけでやってるようなもんで、若きマエストロとのお付き合いとも言えぬお付き合いもこれでオシマイでもいっこーにかまわなかったわけだが、なんとまあ、昨日の《リング》抜粋の仕方といい、やった音楽といい、「ああ、もしかして、俺は21世紀に《リング》演奏の流れが変わる瞬間に居合わせてるのかもしれんぞ」と妄想を書き立てられるものだった。こうなったらもう、毒皿です。終演後に大混乱の楽屋に突っ込み、新任フィンランド大使なんぞに取り囲まれかけていたマエストロに手を振り、「メルボルン、行きます!」と勢い任せの宣言をしてしまったのであった。

アホじゃ、わしゃ。

メルボルン、ってのは、これです。
https://www.artscentremelbourne.com.au/whats-on/opera/the-melbourne-ring-cycle-2016
オペラ・オーストラリアのプロダクション、指揮は我らがマエストロ・インキネンで、この11月から12月、メルボルンのヤラ河畔のアーツセンター大劇場で3サイクル(非公開がもう1回あるとマエストロは仰ってたけど)の《ニーベルングの指輪》がある。これ、上手い具合に、というか、不幸にもというか、第2サイクルは日程とすれば無茶をすれば眺められないことはない。でもなぁ、「バイロイトのリング全曲」とか「ミュンヘンの話題の指揮者ペトレンコでのサイクル」とか「今をときめくティーレマンのドレスデンでのチクルス」、百歩譲って「メトのルパージュのすげえ装置での通し上演」とかならまあ、自腹切って無茶をするのも世間は納得してくれるだろうが、遙か世界の田舎メルボルンで、指揮者はヴァーグナー伝統なんてなんにもない北欧の若造、演出はいまどきアッと驚く肥った歌手がいっぱいの一昔前の藤原みたいなやつ、なんてのに出かけるのは、もうアホとしか言いようが無い。なんの妙な趣味してるの、って言われてオシマイでしょ。

でもねぇ、昨日の徹頭徹尾弦中心のあの音楽を聴き、やくぺん先生とすれば世界でいちばんイヤで大嫌いで可能な限り敬遠したい楽譜の筆頭たる《神々の黄昏》(上海万博のケルン歌劇場引っ越し公演サイクル以来、一度も眺めてないぞ)を、抜粋とはいえあれだけツルツル聴かせてくれちゃったんだから、これはもうなんか端折ってるか、妙なことをしてるか、さもなければマエストロ・インキネンはとんでもない才能なのか、なんだかわからないけど、こりゃあ「なんだかわからない」をきっちり確認せにゃならんべー。こんな、どう考えても好きじゃないヴァーグナーなんか、それなりに一生懸命聴いてきたのは、もしかして人生の最後にこういう演奏の在り方の転換点に立ち合って、それと気付くためだったのかもしれない、なんて妄想すら抱き…

この前戻って来たツアーの原稿、明日締め切りのあとひとつで全部入稿という切羽詰まった中、ともかく、思い立った瞬間にやってしまおうと、チケット購入、航空券購入、宿手配まで、全部バタバタとやってしまいましたです。かくて、11月29日朝にジュネーヴ・コンクールから深夜便で羽田に戻り、いちど佃の縦長屋に戻って洗濯&仮眠し、その晩の午後10時過ぎの深夜便でシドニー経由メルボルンに向かい、その足で天井桟敷の《ラインの黄金》に飛び込む、という無茶苦茶な日程をすることになった次第。

馬鹿だ、こいつ、ぜったいに馬鹿だ!だって、マエストロがどんなに頑張ってもプレスチケットは出ないという高額なオペラを天井桟敷一番安い席とはいえ自腹(初台のチケット価格が普通に見えてくる程のお高いチケットであります、なんせ天井桟敷の最低価格でA$220!)、あんたは「水曜どーでしょー」のサイコロやってるのかと笑われそうな深夜バスならぬ深夜エコノミークラス連泊からヴァーグナー直行、世間の関心などほぼ皆無なイベントなので原稿が売れる見通し皆無!これだけ悪条件が揃ってることやるなんて、どーかんがえても、大間抜けです!

てなわけで、まだジュネーヴ関係の連絡事項などなにもしていないのに、その先を決めてしまった。これじゃあ、ソウルのロッテホール・オープニングシリーズ見物などは、もう経費捻出出来ぬなぁ。いやはや。

ま、どうせあと10数年の命、やれるだけのことはしましょ。ふううう…

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