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優勝団体に遭いにいく・その8:第6回大阪国国際室内楽コンクール第1部門第1位ドーリックQ [弦楽四重奏]

アムステルダムの弦楽四重奏ビエンナーレ、もう何日目になったのかも判らない木曜日の夕方、ムジークヘボウの3階ロビーに座ってます。今、ロイスデールQがアンドリーセン、ベリオ、ケージ、それにバッハを挟む、という絵に描いたような「20世紀後半の著名作曲家の弦楽四重奏選」をやり、連日会場にいらしているご当地在住のアンドリーセン御大がクァルテット前に延々と15分くらい、オランダ語で独演会をやらかしてくれました。やたらお元気でありました。

さても、「優勝団体に遭いに行く」シリーズもすっかり回を重ね、番外編抜きでも8回目となったわけですが、いよいよ大物の登場でありまする。10年前の大阪で優勝し(第3位にガラテアとノブスが入ったのも印象に残る大会でありました)、その直後にレッジョ・エミリアに乗り込んでなんと第5回大阪大会優勝のベネヴィッツQと「大阪夏の陣・イタリア編」ともいうべき歴代優勝団体対決という事態になり、惜しくも優勝は先輩に譲って2位となったあと、今やイギリス若手ではトップのキャリアを積んでいるイングランドにーさんたち、ドーリックQであります。

とはいうものの、5年前からヴィオラはオランダ人のレディにかわっていて、今日も久しぶりに眺めたら「あれぇ、セカンドもかわったのかい」と思ったんだけど、童顔だったにーちゃんが髭はやしてオッサンぽさを醸し出してただけでありましたとさ。ちなみに、ヴィオラ君については、こちら参照。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27

レッジョでは審査員の内部で大いに割れたらしく、若くして初の審査員仕事をしていたオリーくんなんぞが困った顔をしていたっけ。要は、ドーリックQのアプローチは、10年前にはまだまだ野心的、ってか、ぶっちゃけ、「ピリオド奏法を意識した再現」に一部の長老先生たちから相当に拒否反応もあって、大阪ではあっさりと「だって、いちばんよかったでしょ、彼らが」って感じで問題なく優勝を飾ったわけですが、レッジョではそういうわけにもいかなかった。なんか、いかにも大阪らしい話でありまする。これ、皮肉ってるんじゃなくて、褒めてるんですからね!

そんなドーリックQ、今や長老となりつつあるベルチャQと並び、英国若手のホープになっている。大阪優勝団体では、文句なしの二枚看板、って感じですね、音楽メディア的には。ここアムステルダムでも、ダネル、カザルスと共に金曜日の夜のガラコンサートを担当する3つの看板団体のひとつになってます。いやぁ、偉くなったもんだなぁ。

ビエンナーレには本日から登場するドーリックの面々、まずは午前11時半から「最初のリハーサル」という公開リハーサルに登場しました。
IMG_0696.jpg
今晩、深夜の演奏会で弾く《大フーガ》を120人くらいの聴衆の前で頭っから練習する、というイベント。なんせ、やり合ってる真っ最中に聴衆が手が上げて平気で質問する、なんて世界。彼らがこの些か特殊な楽譜にどう対するかを見せながら、クァルテットというものはどういうものなのか説明する、というイベントでありますな。

興味部会のは、弓を2本持ってきたこと。現代曲でもやるのかと思ったら、そうじゃない。ひとつはモダン弓で、もうひとつは最近急に耳にするようになった「移行期時代の弓」だそうな。つまり、バロック弓とモダン弓の間くらい、正にハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン頃の時代の弓でんな。どうやらオランダに作ってる職人さんがいるそうで(南米の人らしい)、このフェスティバルは今回は意識的に古楽系は避けているのだけど、やっぱり場所柄聴衆にも関心があるようで、《大フーガ》の繋ぎの弱音で推移する部分をモダン弓と「移行期時代弓」とで弾き分け、ほらね、なーんて。

いやぁ、やっぱり、しっかりドーリックしてるじゃんかぁ。

てなわけで、あと20分くらいでドーリックQの最初の本番が始まります。風雲児はやっぱり風雲児なのか、じっくり聴かせていただきましょか。まずはハイドンと、アデスの《4つの四重奏》。アデスのこの曲って、まさか、T.S.エリオットの韻文がネタなのね、知らなかった…畏れ多いことするなぁ、アデス様ぁ。

[追記]

その後、ビエンナーレではハイドン1曲、ベートーヴェンの作品130&《大フーガ》、それにブリテン全曲を聴きました。結論から敢えて暴言すれば、今、欧州30代ではいちばん面白い団体だと断言しますっ!ないよりも驚いたのは、作品130の第4楽章でした。リズム面を余り強調されることがないこのを、しっかり「ドイツ舞曲として捉え、移行期時代の弓のフレージングのキャラを万全に利用した、これまで全く聴いたことがない音楽を作ってました。いやぁ、こういうことが出来るんだなぁ、と感心すること仕切り。この団体、特にハイドンで顕著なんだけど、「弦楽器を弾く楽しさ」が素直に出て来るのがなにより嬉しいです。

ちなみにハイドンはウィグモアホール・レーベルで全曲録音中だそうな。それも当然でしょう。来年の10年ぶりの来日を大いに期待せよっ!

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