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多摩の丘陵にイムジン河が響く晩 [音楽業界]

午前1時過ぎに羽田に戻り、なんのかんので2時半過ぎくらいに湾岸縦長屋に帰着。数時間ひっくり返るように眠ったらブンチョウ君たちが朝だ朝だ起きろ起きろと騒いでくれて、ぼーっとした半分ゾンビ頭海胆脳味噌で午後にちょっと人に会い、その足で遙か東京都下、多摩の丘陵に行って参りました。今は湾岸に戻る京王線の車内。ガラガラです。我が青春を過ごしたNear Tokioは多摩県の東隅っこの秘境調布も、駅が地下化されて随分と立派になったものだ。初めて納税をしたのはこの駅前の税務署だったなぁ。まだ売れてないヨーヨー・マを初めて聴いたのもここのグリーンホールだったっけ。

なんで糠味噌頭引っ張ってそんなところまで行ったかといえば、こちら。
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当私設電子壁新聞でも皆様に情報提供を御願いしたこの話の結論を眺めに行った次第。
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2018-08-31
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2018-09-07
で、当稿は、情報をいただいた皆様への領収書みたいなもんです。はい。

秋の釣瓶落しの夕暮れもすっかり宵闇となる頃に到着した京王多摩センター駅は、多摩の過疎化という話ばかりを聞く今日この頃、どんなに淋しい場所になっているのかと思いきや、なんとまぁ、駅前は学生や若い人で溢れてるし、駅の蕎麦屋に入ったらお家に帰る前のオッサンらが一杯引っかけていく場所になってて一見さんなんて座りゃしない。いやぁ、多摩市、うちのお嫁ちゃんの研究室になんとかならないかなんて話を持ってくる必要もない盛況じゃないのぉ、なにを心配しているのよ、市役所の皆さんは…なーんて思いながらダラダラとパルテノンへの参道を昇っていく。と、今や多摩地区インバウンドの重要な拠点になってるらしいサンリオ・ピューロランドへと左に曲がる角の先に至るや、一転して人影も疎らになり、夜半の神社に向かうような空気になって来たぞ。肝試し的な寂しさ、とは言わないけどさ。

やうやう到着した多摩の芸術神殿、正面左側のコンサートホールの方から入ると、なにやら人は列を成している。並ぶのは熟年ばかりで
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うううううん、昨日の若い人だらけ、それも無骨極まりないヴァーグナーだろうが顔を輝かせてるお嬢さん達がいっぱいの台中の状況を思い浮かべるに…良し悪しの問題ではなく、いやぁホント、ニッポン社会、歳を重ねてござるわなぁ、と思わざるを得ないのであーる。ふうううう…

アーツセンターそのものは金曜の晩とあってかいろんなイベントをやっているようで、それなりの人の賑わいがあることは確かでありますが、サンリオ帝国までの道の華やかさとは比ぶるもなく、良く言えば質実剛健、地に足が付いたローカル・アーツセンターの週末でありますな。そうこうするうちに開場となり、その頃には意外や意外、別の場所に行くのかと思ってた若い学生さんやら子供やらも我らが光州響のチケットもぎり場にやって来るではないの。へええええ。

結果として、客席はまあ、7割弱の入りくらいかしら。主催は韓国光州広域市&光州文化財団とオケそのものなんで、日本側でお手伝いをなさってるマネージャーさんよく頑張ったなぁ、と立ち話をするに、やはりなかなか手強い公演で実売チケット数はちょっとここでは言えないくらいだそうな。指揮者の音楽監督金洪才さんがなんでもいいから沢山の人に聴いてもらうことが第一と仰り、地域のアマオケや大学などにも随分と働きかけをしたり、大手新聞の東京版に招待を出したりしたそうな。その結果が、いかにも大手新聞の招待欄で楽しみにドボはち聴きに来てくれそうな熟年層と、いかにも学生オケとかブラバンやってそうな若い人達、それに明らかに光州市がお招きした関係者、というお祭りっぽい空気になってる。腕に「報道」という黄色いでっかい腕章巻いた、これまたいかにもあたしゃカメラマンは本職じゃないけど重たい一眼レフ持たされちゃって、って感がありありの半島からの記者さんらしきお嬢さんも走りまわってる。

そう、この空気、まるで4月のソウル・アーツセンターで開催される「オーケストラ・フェスティバル」、所謂「韓国の地方都市オーケストラ・シリーズ」の会場に漂うもんじゃあーりませんかっ!ほんと、一瞬、ここはソウルかと思ったぞ。無論、日本の人気ピアニストをソリストに迎えたラフマニノフという切り札もあるし、それ目当てのお客さんもいらっしゃるみたいだけどさ。

かくて賑々しく始まった光州市交響楽団手打ちの東京公演、まずは問題の冒頭の序曲、ってか交響詩、曲目解説執筆時に殆ど情報がなく、手探りだった作品でありますが…ひとことでいえば、ええええ、なんというか、そう、ショスタコーヴィチの交響曲11番とか12番、もっとぶっちゃけ、交響詩《10月革命》みたいなもんです。なんせ例の民衆歌がフルオーケストラでガッツリ鳴っちゃうわけで、もうそれだけで盛り上がれる人はガンガンに盛り上がれる。ある意味、期待通り、予想通り、思ったまんまの曲でありました。作曲者さんは、ホントに真摯にこの歌をモダナイズした、というもの。

以降、ラフマニノフ、ドヴォルザークと続き、良くも悪くも一昔前の半島オケのロシア・ローカルオケみたいな強烈に叩きつけるフォルテで盛り上がり、指揮者さんの知的なコントロールでじっくり押さえる部分はそれがどんどん内に込められてひたすら炸裂を待つ、って芸風のオケ。所謂「爆演」ってのともちょっと違うんだわなぁ。

なーんて音楽で、寝ちゃおうとしても頭ぶん殴られて起こされるような音楽が続く。んで、アンコールはどうするのかと思ったら、なんとなんと、フルオーケストラが奏でるは、大河多摩川ならぬ《イムジン河》でありました。一切の説明はなし、終演後に表に曲目が貼られたりもしない。そんなん、みんな知ってるでしょ、ってことなのかしらね。

今や伝説の人物となっている老マネージャーさんと、今の日本の人はどれくらいわかるのかしら、と話したら、昔の韓国のオーケストラはね…という長い話になりそうになって…

かくて、パルテノンの参道の彼方、相模原を背に秋の夜に浮かぶ神殿を後に、「♪イムジン河みずきよくぅ~」と口ずさみながら谷間の駅へと下って行く週末の多摩の夜は更け行く。
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イムジン河を口ずさみながら鴨緑江まで列車で行ける日は、やくぺん先生が生きている間に来るのであろーか。

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