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秘曲その後 [弦楽四重奏]

新メインパソコンの設定も終わり、当無責任私設電子壁新聞、なんとか生き返りました。もう爺でパワーもないので、のんびりとアップしたりしなかったり。お暇ならまたどうぞ。

さてさて、昨日になりますが、数日前にご紹介した「秘曲」の演奏会、出かけて参りましたです。
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2019-09-17
そのご報告、というと失礼だけど、実際に接してどんなもんだったか、という無責任なお気楽感想であります。

企画構成司会という何でも屋的なタイトルで舞台に登場していらした西耕一氏がプロデュースなさってたこの短い休憩3度含め4時間を超える長大な演奏会、構成はそれぞれ30分強の「ピアノ独奏」、「歌とピアノ」、「電子音楽ライブ」が前半に置かれ、後半はオーケストラ・トリプティークの首席クラスから成る弦楽四重奏の演奏会、というものであります。聴衆は…正直、よく判りません。ってか、全然、判りませんでした。歌曲のところで伊福部昭作曲の幻の釧路女子高等学校校歌、などというものもあったので(今時の常識ではありえへん、ものすごぉくくらああく重おおおおい歌でありました)1940年代終わりの女子高生とおぼしき方々の姿があったり、プロデューサーさんが「ウルトラセブン」音楽リバイバルで力を入れている冬木透作品があったのでそのファンやら関係者の方。それから、新作映画のサントラ音楽のライブ演奏があったのでその関係の方、などなど、200ほどの聴衆は世代も顔ぶれも猛烈に多彩。無論、オーケストラ・トリプティークの団員やら関係者、それに日本の秘曲レーベルとして知る人ぞ知るMittenwaldの社長やら関係者の皆さんやら。
http://www.wakuwakudo.net/catalog_list/mittenwald.html
あ、今回も録音なさってたとのことです。

前半のピアノ、歌、電子音などは、「へえ、こういうのもあるんだなぁ」とボーッと座ってた糠味噌頭。それ以上は言えません。後半のクァルテット作品、ま、ほとんどの作品は「ああ、そーですかぁ」としか言い様がない。簡単に楽譜が手に入るならともかく、これが秘曲であるのは仕方ないと言えば仕方ないだろうな、ってもんでした。繰り返しになるけど、山田耕筰の弦楽四重奏曲やらマーラーのピアノ四重奏曲クラスの「あちゃああああ…」はありませんでした、というのが正直な感想でんな。

そんな中で、これはやっぱり秘曲にするのは不味いんじゃないか、楽譜がちゃんとあれば弾かれても良いだろうに、という音楽はありました。なんといっても、筆頭は深井史郎が20代に書いた《3つの特徴ある楽章のうちの一つ》という、これがホントに作品の題名なのか、って題名の小品。アカデミズムに喧嘩売るつもりで書いたそうで、よく言えば才気煥発、悪く言えばやり放題。でも、これが30分かかる大曲ならともかく、数分で終わるミニチュアとすれば、作曲された1934年という時代の中での存在価値は十分にあると思える音楽でありました。なんせバルトークの5番と同じ年。無論、深井が遙かシベリアを隔てた彼方はブダペストでバルトークがやってたことを知る筈もないし、ああいう構成的なもんではないといえ、例えば数年後のブリテンの弦楽四重奏なんかにも通じる弦楽器使った無茶苦茶さ、ダダイズムというか、モダニズムというか、そういうもんをストレートに音にしてみっちゃった、というもの。絵画の世界での先達古賀春江的な完成度はないものの、へええこういのもあったんだなぁ、と感銘深かったです。これ、楽譜があれば、アンコールでやってもいいんじゃないかしらね。

最大の収穫は、最後に披露された芥川也寸志が1947年に書いた弦楽四重奏曲でありました。桑沢雪子やら吉田貴寿という蒼々たる、ある意味、この時期ならいかにもという連中がラジオで初演し、その後は楽譜が表に出ることなく、90年代に新交響楽団のメンバーがステージ初演しただけ、という代物だそうな。ぶっちゃけ、大傑作《弦楽のためのトリプティーク》の元ネタとなった作品ということで、4楽章ある中の2楽章と3楽章なんぞ、まるまる同じです。冒頭楽章は、最初に演奏された《NHKラジオ「日曜随想」のテーマ》と同じテイストだったり。

正直、「これは弦楽四重奏編成じゃないと駄目」って曲ではなく、対位法が綿密に4つのに声部に張り巡らされ室内楽じゃないとやっぱり…ってもんでもない。弦楽書法の練習といえばそれまでなんだけど、ともかくオリジナルは弦楽四重奏であり、しっかりとした力がある音楽であることは確か。《トリプティーク》でお馴染みのアンダンテの歌の第3楽章なぞ、楽譜がちゃんとあれば明日にでも日本のクァルテットが海外公演するときのアンコールに使いたいんじゃないかしらね。

どうやらまだきちんとした楽譜として世に出せる状況でもないようですが、これは西さんやらにリクエストすれば、近い将来に形になりそうな勢いではありました。

なお、演奏された全作品の中でいちばん有名で、普通の意味での秘曲の黛敏郎《弦楽四重奏のためのプレリュード》は、「可能な限り離れた場所に奏者を配置して」という楽譜の指定通りに演奏されました。この写真で判るかなぁ。真っ暗い舞台の上に譜面台のみ、あしからず。
IMG_1137.jpg
エリオット・カーターの第2番の同様な指示とは随分と意味が違うのは、ライブで聴くとよく判る、ってか、ライブで聴かないと判らんわな、これは。

それにしても、昨日は黛の《プレリュード》がこういうちゃんとした形で演奏され、一週間後の次の土曜日にはルトスワフスキの弦楽四重奏曲がライヴで聴けるのだから、TOKYOはなかなか凄い街ではないかいっ!

トリプティークQの皆様、関係者の皆様、貴重な機会、ありがとうございましたです。

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