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耳を澄ます音楽は何度でも聞くべきなのじゃ [現代音楽]

新国立劇場、国立劇場、国立能楽堂、国立文楽劇場、国立劇場おきなわ、等々、日本各地の国立芸術ヴェニュで「第78回文化庁芸術祭」が賑々しく開催され始めた神無月、コロナ混乱下に消滅してしまった「フェスティバル/トーキョー」の流れを汲む我が新帝都が主催する「東京芸術祭2023」も先月から始まっておりまする。
https://tokyo-festival.jp/2023/
ちなみに両者、全く関係はありませんっ!いやはや…

正直、今やすっかり気分は温泉県盆地の田舎者のやくぺん先生ったら、当初この都フェスティバルの枠組みで予定されていた某企画が「オリンピック予算拡大のためにお金がありません」って理由でやれなくなってからは関心はなく、「へえ、太陽劇団ってまだやってるなぁ」なんて叱られそうなことをボーッと思ってたくらい。とはいえ、初台で「芸術祭」参加の千葉やイスタンブールのオーケストラやソウルの弦楽合奏団なんぞを拝聴すべく新帝都に戻って来ている連休初日、ちょっくら池袋に足を伸ばせば眺められるこんなイベントがあるいというので、覗いて参ったのであったぞよ。
https://tokyo-festival.jp/2023/program/the-far-from-ensemble/
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なんと、Yahoo!ニュースさんが取り上げて下さっているようなので、もう説明はしませんです。ほれ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5ced333d0cfd5a5f9e98a5ee7483d02d20daaf4e

この類いの「環境音楽」に親しみのある方には説明は不要でしょう。要は、「池袋の東武改札下の有楽町線改札から芸劇やメトロポリタンホテルの方へと地上に出る狭くていつも混雑している吹き抜けのエスカレーターを上がったところ、JR線路側の東武デパートと芸劇側Lumineの間の細長いガレリア部分2階に、四群に分けたトロンボーン・アンサンブルを配置し、遠距離からの響きに挟まれるような音響空間を創る」というもんですな。
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下は、本番開始前、メトロポリタンホテル側の階段から2階に向かう演奏者の皆様の姿じゃわい。
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作曲者さんが語る趣旨などはYahoo!ニュースの記事にもガッツリ出てますので、なるほどねぇ、と思っていただけばよろし。

んで、それらを踏まえた上で、本日午後1時の最初の本番と、初台でイサン・ユンなんぞ聴いて戻って来た午後8時の3回目の本番とを聴いたところでの率直な感想を記せばぁ…

うううむ、やはりこういう「聴衆に耳を澄まさせ、自分でいろんな響きを発見してもらう」タイプの創作って――今回は作曲家さんがいて、譜面もあり、モチーフがあってリズムがあって和声が決められいていて、10分弱くらいの時間の区切りの最後に向け即興的に盛り上がるみたいだったりするわけだから(譜面拝見してないんで、単に聞こえた印象だけで記してます、ゴメン)、ひとつの「音楽作品」と考えますけど――やっぱりどうしても、「特殊な空間で演奏される作品」になっちゃうんですよねぇ。

池袋の街に響いている様々な音響の中に人為的な創作物(正に文字通りの「アート」ですな)を放り込み、それがその場所にたまたま居合わせた人の耳に入り、何かを感じさせたり、させなかったりする、という「イベント」としては、ぶっちゃけ、昼の部を体験すべし。芸劇前の豊島区イベント広場ではよさこい大会をやっていて、メトロポリタン側の通りにはサイレン鳴らした救急車が駆け抜け、東武の改札口の向こうからは始発終点列車が出入りしている。そんな沢山の「音楽」ではない、とはいえ「自然」でもない音響世界。様々なノイズのと混じったり混じらなかったりしながら「とおくのアンサンブル」が聞こえてくる、という状況が現出する。そして、恐らく作曲者さんは、「それ全体が作品なんです」と仰るでしょう。

それに対し、連休初日の午後8時ともなると、流石に外で騒いでる奴はもうおらず、人の流れは減ったとはいえ天下の池袋ウエストゲートパーク前、ガレリアに響く足音やらドトール前をホテルの方に行く車の音、まだまだやっとこれから2次会と盛り上がるできはじめの酔っ払いの声、くらい。そこに響き渡るトロンボーン・アンサンブルは、デカすぎるカザルスホールかはたまた水戸芸術館エンタランスのオルガンロビーにでも響くステレオ音響を聴くような、案外と純粋なコンサート空間になってしまう。それこそ秋吉台の専用ホールでノーノの《プロメテオ》やるぞぉ、ってのと、そう違わない状況ですわ。

昼と夜、このふたつのステージで聞こえるもの(聴こえるもの)の違いこそが、もしかしたらこのイベントの最大のポイントかもしれません。

勿論、こういう環境音楽作品の場合、「可能な限り聴衆が立ち止まって音楽の意味や作りを探ろうとしないように(はたまた、そんなこと出来ないように)作曲するべきなのか、それともしっかり聴かせるように創るべきなのか」という大きな選択肢はあるんでしょう。やくぺん先生の個人的な趣味からすれば、前者の努力を評価したいところですが、この作品はどうだったか、来週末土曜日にも3回公演がありますから、それは皆様のご判断にお任せしますですぅ。

ともかく、暇なら来週の週末、池袋ウェストゲートパーク前にボーッと立っててご覧なさいな。なんせ、タダですから。

あ、椅子はありません、悪しからず。

[追記]

今、このプロジェクトのアドヴァイザー様から連絡があり、来週末14日の3公演は東武ガレリア部分ではなく、芸劇アトリウムが会場だそうな。つまり、芸劇入った壁面にエスカレーターがある巨大空間です。うううむ、異音騒音はシャットアウトな空間ですな。ま、これはこれでまるで違うものになるでしょう。請うご期待。

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