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開館15年・十三回忌・結成10年そして… [音楽業界]

久しぶりに東北の入口、人類史上類例のない災禍312原子炉融解現場至近の大都市、そしてコバケンの故郷、福島県いわきに来ております。街でいちばん高級で演奏家さんも泊める宿ながら、直前割引きで4270円也という激安だった宿の10階(最上階マイナス1階!)から駅方向を眺めれば、駅前市街地にも民家が転転と立ち並ぶ典型的なニッポン特急が停まる地方都市、この前訪れたときには屋根にかかるビニールシートがまだいくつかは残っていたような気がするが、さすがにコロナ禍を経てそれはなくなり
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高速インター下りてから市内に至る沿道の民家ったら、どれも屋根瓦がピカピカ。我が温泉県盆地オフィス周辺も、311の後の大きな震災ながら「アベ伊勢志摩サミット」決行のために情報統制が成されて巨大地震とは世間から思われていない熊本大分震災超巨大余震震源地となった辺りだけに、どの民家も新築っぽかったり新築そっくりさんだったりするのと同じじゃわい。

当電子壁新聞を立ち読みなさっているような酔狂な方にはとっくにお察しでしょうけど、いわきといえば「いわきアリオス」。バブル期から90年代末、日本各地で盛り上がった公共民間ホール建設ラッシュが一息吐いた0年代、トッパン、ハクジュ、ミューザ川崎とバブル期以降の反省といいとこ取りで創られたヴェニュがいくつかあり、創設20年に届くかどうかくらいのそれらの会場なり組織なりは、結果的に20年代で最も成功したヴェニュとなっている。

そんなひとつが、日本各地のホールから人材を集めていわき市がつくった21世型「巨大でハイパーなコミセン」、今も各地で盛んに建設改築されている21世紀型公共ホールの雛形となっている「いわきアリオス」でありまする。このホールのオープンからその後の劇的としか言いようがない15年の動きは、当無責任電子壁新聞にも記録が山のようにあって、「いわきアリオス」ってカテゴリー立てても良いんじゃないかというくらいであります。当ページ左下の検索欄に「いわき」と入れればじゃああああああっと出てきますです。お暇ならどうぞ。震災関係は、これらなんぞかな。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2011-04-23
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2012-03-11

日本中から(世界中から、とならないのが日本の公共文化施設なんだけど)経験ある人材や可能性のある若手をごっそり引き抜いて、「地域文化拠点」としてホールを越えた活動を最初から視野に15年前に立ちあがったいわきアリオス、オープン直後の市民との緊張感や手探り状態のアウトリーチなどもある程度方向性が見えてきた3年目の3月11日に東日本大震災、翌日には福島第2原発メルトダウン事故が起き、ホールは人類史上経験のない大惨事現場から非難してくる人々を収容する施設になった。今年は、御上がどんなに無い振りしても隠せない出来事で没した方々の十三回忌。

その後のあれやこれやもなんとか落ち着いた10年前、当初はホールの主催事業として行っていた「レジデント・クァルテット」のヴィルタスQ公演が、ホール直接の主催から切り離され、市民が設立した「楽友協会」運営となりホールがそれを協賛する、という形で再出発。文芸書やら詩集なののように全く売れる可能性がないけれど、ないと困るジャンルをこのようなサステイナブル(10年前はこんな言葉なかったけど、いまなら正にそうですな)な形で維持するニッポンでは初の試みで、やくぺん先生も大いに注目し、平井先生との共著でも重要な試みとして取り上げておりまする。その後も、ここでフォローはしてきましたです。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-10-08

さても、久しぶりに訪れるアリオス、今日は公演はひとつしかないようで
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夕方6時をまわってすっかり夜の帳が下りた東北、本館にいるスタッフは本日の公演聴衆がついでに我が町の英雄コバケンのチケットを購入する対応をする数人のみ。「最新鋭巨大コミセン」だけあって、妙に充実している中高生自習者が溜まるお勉強スポットも、今日は席が空いているぞ。おおお、我らが英雄を祀る祭壇もあるではないかぁ。
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コロナ後初ということは、まるまる4年は来ていないということで、その間にいろいろな変化があり、なにより大きいのは各ホールの名称。本日の会場も、なにやら見知らぬところになっていて、「あれぇ、とうとういわき楽友協会はアリオスを追い出されたのかぁ」などとビックリしていたら、なんのことはない、こういうことでありましたとさ。
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名称がどうなろうが、日本の公共文化施設として設置された「音楽専用小ホール」としては、今や首都圏のクァルテットの聖地となっている鶴見サルビアホールと双璧のこのいわきアリオスの音楽小ホール、200席のパーフェクトな響きを埋める半分にも満たない聴衆を少ないとみるか、それとも東京首都圏でも500人から700人、関西圏300人、名古屋圏100人、と想定されるコアな室内楽聴衆の絶対分母数から考えれば、この規模の文化圏でこれだけ集まっているのは驚異と思うべきか。

ヴィルタスQ、やくぺん先生とすれば、本人達がどんなにそう言われるのはイヤだと仰ったところで、「創設30年に迫る丸山夫妻クァルテット」であります。創設メンバーの2人がコアとして上声を交代しつつ30年に迫る時間を続いているのだから、ぶっちゃけ、これはもう名前が変わっているといえ、実質、エクやらと同世代の常設クァルテットでありますわ。

洗練とかセンスの良さとかとはちょっと違う、無骨でべらんめぇとは言わぬが豪快な丸山のチェロ、しっかり支える内助の功とも敢えて言わぬがこの団体の20数年をがっちり裏で支える馬淵の熟練の中声、それに様々なキャラの上2人が乗っかるこの団体、本日の最大の聞き物は、バーバーの弦楽四重奏曲、それも十三回忌に捧げたといわれそうな第2楽章ではなく、次の楽章へのプレリュードというには余りにも多彩な第1楽章、それも第2主題が展開される最後辺りのヴィオラとチェロのやりとりから、チェロのピチカートにかけてでありました。うううむ、これを聴くために、遙々温泉県から出てきて、新帝都中央駅から3時間バスに揺られる価値はあった。

15年、12年、10年…この旧すばるQ現ヴィルタスQは、まだ続いていくだろう。そして、敬友たる学芸員氏が吐露してしまっているこんな心情を、大いに共有するものでありまする。敢えてベッタリ引用。
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この会場に集まった60余名のいわき市民に、善き音楽と幸あらんことを。

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