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首都圏クァルテット大盛況 [弦楽四重奏]

「霜月首都圏勝手に弦楽四重奏週間」、昨晩はその頂点とも言える「大曲でハーゲンQが作品130+《大フーガ》VS浜離宮でカザルスQが《フーガの技法》全曲」というとてつもない一夜でありました。

ニッポン音楽業界には、「弦楽四重奏の固定聴衆分母は首都圏500人、関西圏300人、名古屋圏150人」という基本認識があります。どんなに宣伝しても、頑張っても、質が良くても、上の数字が聴衆として見込めるMax。当電子壁新聞を立ち読みなさっているようなすれっからしの皆様には、なんとなくお判りの感覚でありましょうぞ。80年代終わりからのカザルスホールで始まった「室内楽ルネサンス」以降、あれやこれやありながら、結局、21世紀20年代は「弦楽四重奏はメイジャー団体でも紀尾井、適正規模はトッパンで、集客を考えたらハクジュが妥当なところ。普通は各地に次々オープンしている100席くらいのコンサートスペースで聴くもの」というのが常識となっている。

本来ならばソリストの4倍、独奏楽器とピアノのデュオの倍のギャラをいただかないとやってけない筈の弦楽四重奏、こんな数で経済的に成り立つわけがなく、なんとかコア聴衆数以上を確保したいとすると、室内楽や弦楽四重奏への関心とは違う部分を動かさねばならない。それがなんなのかは、主催者の努力次第なんだけどぉ…なにがあったのか、昨晩はトッパンはSold outで、些かの危惧は隠せなかった浜離宮も400人くらいの聴衆が詰めかけておりましたです。つまり、昨晩の東京首都圏、ヴィーンフィルとバイエルン放送響が同じ日の同じ時間に妥協ない演目で来日公演やって、前者は満席後者もこの演目なのに8割以上の入り、って感じだったわけですよ。首都圏で弦楽四重奏聴衆が800人って…これはスゴイ。秋のクァルテット・ウィーク、大盛り上がりでんな。

大曲はともかく、なんせ浜離宮はもの凄く攻めた演目。こちら。
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エマーソンもそうでしたが、一部の弦楽四重奏がある年を経ると挑戦したい気持ちに駆られるらしい、ある意味で弦楽四重奏業界の禁断の楽譜への挑戦であります。なんせ、通常の「常設弦楽四重奏団」のレパートリーとすれば、練習の仕方やプログラムの作り方、二声や三声の曲をどう処理するか、ヴィブラートはどうするか、そもそもチェロがバスとして動いていない曲なんでバランスをどうするのか、弦や弓など楽器をどうするか、あれやこれや…。なんにせよ、特別な演目とせざるを得ないトンデモな演目ですな。いちばん目立つ楽器に関しては、昨晩は《フーガの技法》はバロック弓で、アンコールの聴いたことない編曲の《鳥の歌》ではモダン弓に持ち替えている。ちなみにこのアンコール、どうしてもチェロばかりになっていまう曲だけど、最初はチェロメインでひとくさり、繰り返しでは各パートがみんなちょっとづつ歌える、って風にしてました。

終演後はサインを求めて多くの人が列を成したこの演奏会、コンサートホール雀の皆様に拠れば、「普段、弦楽四重奏の演奏会に来ているような人の顔はあまり見ない」とのこと。なるほど、やっぱりバッハと、それから演目、ということなのかしら。正直、《フーガの技法》という作品は実際に音にしてどうだ、というよりも、楽譜を眺めて楽しむみたいなとろがあるわけで、こういうのもありなんだろうなぁ、とは思ったです。

弦楽四重奏という形態を用いながら、「個々人の個性と団としてのバランス」をギリギリまで攻めたスター団体と、「楽器を想定していない四声までのポリフォニーなら弦楽四重奏でもOKだろ」って実験と、全く真逆の世界が広がる新帝都であったとさ。

それにしても、《フーガの技法》が最期のコラールに至る頃に、皇居挟んで7キロ向こうでは《大フーガ》やってるんだから、スゴイ街だなぁ、トーキョーは。

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